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竹内 昌義
パッシブハウス・ジャパン理事
デンマーク脱炭素のリアル
夏休みにデンマーク、コペンハーゲンに行ってきました。
デンマークは10年ほど前に学生と一緒に行ったことがあるのですが、あちらこちらで再生可能エネルギーの率が70%を超えていると聞き、また、コペンハーゲンに至っては2030年に脱炭素が実現できそうということで、10年前と何がどう変わっているのか興味深かったのです。
コペンヒルというゴミの処理場の上にスキー場を載せるという変な建物があると聞いてそれも見たかったのでした。
もう一つ、世界はだんだんとクルマに頼らないようになってきているわけですが、様々な都市の中で、自転車の活用が進んでいるのもおもしろそうだなと思っていました。
脱炭素は当たり前
現実問題としての社会問題の解決に建築が使われているように思いました。すでに脱炭素に向けて進んでいる社会、そしてなぜそれが可能なのか。IT、医療系、化学工業などが盛んであり、暮らしやすいので北欧やEUからの人口流入が起きている。特に風車を作っているBESTUSなどのグリーン産業に従事しているスタートアップが盛んだそうだ。
大きくコペンハーゲンが目指しているのは、次の4点。
- ゼロカーボン達成 2030年
- ソフトモビリティ 世界一
- 水と緑が豊かなまち
- 健康、清潔なまち
これらについて様々な建築のプロジェクトが推し進められている。
コペンヒルは高さ70mあるゴミ焼却場です。ここでゴミを燃やし、その熱を市内全域に供給します。ここでの熱をお湯で供給して、市内の95%の熱需要を賄っているそう。最近ではゴミの分別が進んでゴミが減り、時にはイギリスなどからゴミを輸入しなくてはならなくなることがあるほど。
2028年にコペンハーゲンは脱炭素を実現できそうであったが、ウクライナ戦争の影響もあり、2030年に延期されたそうだ。
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ここでどうやって、清掃工場の上にスキー場が作られるに至ったか。そこが気になる。なんと、この建物をシンボリックに、市民に開こうという意図でコンペを勝ち残ったそうだ。この様子もドキュメンタリーのフィルムなっている。
映画概要 – 映画『コペンハーゲンに山を』公式サイト (unitedpeople.jp)
現地の風景
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建築における脱炭素のフェーズがすでに違う
現在、日本では建築を使っている時のCO2の排出の量をどうするかが問われているが、デンマークはさらに2歩くらい先を行っている。作る材料から出るCO2、解体するときのCO2を全てシミュレーション、計算をして、脱炭素に寄与することが求められる。
事例としては、カールスバーグの工場の外壁を再利用している新築の住宅などがある。もちろん、リノベーションの物件も多くある。そういったことも含めて、日本での断熱強化の話など、30年ほどの隔たりを感じる。
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デンマークの断熱基準は1980年台の石油ショック以来、少しずつ進んできているようだ。決して止まらない。その義務化レベルはかなり高い。この集合住宅の2重窓の内側のサッシは再生木で作られている。
ソフトモビリティとしての自転車
ほとんどが平地のコペンハーゲンでは、自転車は有効なモビリティだ。交通量が多いので、厳格なルールが適応される。(これはどこの国、街も一緒で、ポートランドで、日本人的な感覚で運転していて、怒られたことがある。)
ルールを守らないと単純に危ない。おばちゃんの自転車の基礎スピードがとても速い。自動車の所有率が30%を切るこのまちのインフラとして機能している。そればかりか、スーパーハイウェイ構想なるものがあって、郊外の街からも通勤するらしい。
なぜ、デンマークは進んでこれたか
さて、なぜ、デンマークはここまでこれたか。デンマーク在住の北村朋子さんに聞いてみた。要約すると「合理的にロジカルにフラットに議論することが当たり前で、その当たり前を続けていった結果として、これがある。」と言われていた。確かに、大学でも教授もファーストネームで呼び、ああでもない、こうでもないと議論の中から生み出されたスタートアップが多くあるという。
大きな資源があるわけでもなく、どんどん人口が流出する都市だったコペンハーゲンは、人に対する投資をすることで、産業を作り、楽しく脱炭素に向かっているように見える。いまだに懐疑論に出くわす日本から見ると全てが羨ましいと思ってしまいます。
さて、振り返って日本
筆者は別に日本も全く同じになるとは思っていない。でも、ベースにある脱炭素のために、何ができるか。みんなで考えるスタンスのようなものは、この膠着した日本の状態に絶対に必要なものなのではないかと思った。いろんなやり方、いろんな手段をフラットに話せて、次に行くような状況を作り出す必要がある。建築のビルダーだけではなく、一人の市民として希望を語れる存在になるべきだと思う。