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【ニュースレター 2024年5月号コラム】 電気を無駄なく効率よく利用するために!~宅内DC化でロスを無くす~

2024.05.20

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高橋 慎吾

高橋建築株式会社 代表取締役
PHJ理事

電気を無駄なく効率よく利用するために!~宅内のDC化でロスを無くす

今回は、パッシブハウスジャパンのメンバーである木下建工の木下さんのご紹介で、DCハウスを視察する機会を得ましたので、そのご報告をいたします。

家庭内エネルギー使用の現状

家庭内で使用されるエネルギー量は増加する一方です。私たちが建てるパッシブハウスは冷暖房のエネルギー消費を大幅に削減していますが、それでも家庭でのエネルギー使用量をさらに削減する必要があります。

家庭で使われるエネルギーの種類

家庭で使用されるエネルギーには、電気、ガス、灯油があります。特に電気の使用量が増加しており、エアコンによる暖房、IHクッキングヒーター、エコキュートによる給湯など、オール電化住宅が一般的になりつつあります。さらに電気自動車などこの傾向は今後も強まると予想されます。そのため、電気を効率よく使う工夫が重要です。

ACとDCのメリット・デメリット

電気には交流(AC)直流(DC)があります。それぞれにメリットとデメリットがあり、ACは遠距離送電に適しており、安全対策がしやすいという特徴があります。一方、DCは電圧や電流が一定で安定して使用できる反面、安全対策が難しいとされています。これらの特性を理解し、適切に組み合わせて利用することが重要です。

家庭内での電気利用と変換ロス

家庭内では冷暖房、調理、給湯、照明、換気、通信機器、家電製品など、さまざまな用途で電気が使用されており、100Vまたは200VのACが用いられています。近年、太陽光発電や蓄電池、電気自動車といった新しい電気設備が増えていますが、これらはすべてDCで動作します。しかし、家庭内の電力網はACであるため、太陽光発電で生成されたDC電力を家庭内で利用するためには、DCをACに変換する必要があり、ここで変換ロスが生じます。同様に、蓄電池や電気自動車でも変換ロスが発生します。

V2Hシステムと変換ロス

V2H(Vehicle to Home)システムは、電気自動車を蓄電池として利用する仕組みですが、ここでも変換ロスが発生します。パッシブハウスジャパンのメンバーである新津さんの報告(ニチコンV2H&日産サクラでオフグリッドに挑戦し、挫折してみた|NIITSU 新津組)によれば、変換ロスは3割から4割にも達することが示されています。この技術はまだ発展途上であり、さらなる改善が必要です。

家電製品とDC利用の可能性

多くの家電製品は内部でDCを使用しています。例えば、パソコンやスマートフォン、テレビ、換気システム、LED照明などです。これらの製品も家庭内のACをDCに変換して使用しており、ここでも変換ロスが生じています。

DC化の可能性とその実証

今回 見学したのは、DC Power Vil.株式会の村文夫さんが構築した設備です。村さんは電力消費の多いデータセンターでDC設備を導入してきた実績があります。データセンターは大規模な電力消費が避けられないため、省エネのためにDC化が必須でした。しかし、これらの設備は非常に高価であり、住宅のようにコストをかけられない建物には導入が難しいという課題があります。

村さんは、住宅を含めた多くの設備がDC化することで、電力ロスを大幅に減らすことを目指しています。使用量を減らすことも重要ですが、変換ロスを減らすことも同様に重要です。これが実現すれば、電気が発明されて以来の大きな改革となるでしょう。

創エネ、蓄エネ、省エネの実現

電気は高いところから低いところへ単純に流れます。

再エネ優先 超効率化直流システム(無制御)
DC Power Vil 村さんの資料から転載 https://dcpowervil.co.jp/

太陽光パネルは30V程度ですが、10枚直列にすると300Vになり、DC→DC変換装置で380Vに安定させます。蓄電池は320Vから360V程度、東京電力からのACを変換したものは320Vです。太陽光の380Vが最も高い電圧のため、太陽光で発電された電気は蓄電池や家庭に流れます。次に高いのが蓄電池で、太陽光発電がないときは蓄電池から電気が流れ、最後に一番低い電圧の東京電力からの電気が流れるというシンプルな仕組みです。

太陽光380V→蓄電池360V→東京電力321Vになった様子

再生可能エネルギーを優先して利用できるため、非常にエコです。この単純な仕組みを実現することで、複雑なエネルギーマネジメントシステムを必要とせず、効率的なエネルギー利用が可能になります。

安全性の確保

高い電圧のDCを扱うことで、安全性に対する懸念もありますが、村さんの技術によってこれらの問題も解決されています。アーク、短絡、感電などのリスクが考慮されています。実際に見学会では、スパークの様子を見せていただき、その安全性を確認しました。専門知識を持たない人にとってはリスクがあるため、専門家による対策が重要です。

未来のまちづくり

福岡県糸島市での実証実験では、DC技術を活用した未来のまちづくりが進められています。

https://www.sciencevillage.jp/
(糸島サイエンス・ヴィレッジ 一般社団法人SVI推進協議会WEBサイトより)

このような取り組みが地域活性化や省エネに寄与することを期待しています。

福岡県と言えば、先日森代表が視察した株式会社YanekaraのV2Hの実証も福岡県八女市の住宅で行われていました。今後はDC→ACの変換ロスを減らすために、通常の住宅でも太陽光のパワコンとV2Hが一体化する動きが進みそうです。同社のYaneBoxは早ければ来年には製品化されるとの事で、こちらも楽しみですね。

https://yanekara.jp/yanebox
(株式会社Yanekara WEBサイトより)

私たちも、建物を通じてこのような未来のまちづくりに貢献できるよう技術を高めていきたいと思います。
今回の視察を通じて、最先端の技術に触れることができ、さらに頑張っていこうというモチベーションが高まりました。皆様もぜひ、DC化の可能性に注目し、エネルギー効率の向上に取り組んでみてください。