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ニュースレター 2024年4月号コラム ~ウッドファイバーブローイング自社施工 ~

2024.04.23

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高岡文紀

有限会社アーキテクト工房 Pure 代表取締役
PHJ理事
四国支部リーダー

ウッドファイバーブローイング自社施工

充填断熱材をウッドファーバーブローイング施工に

以前より注文していたブローイングマシンが入荷したことにより充填断熱材をウッドファイバーのブローイングへと切り替える事に致しました。
理由としては、現在使用している断熱材はロックウール密度60㎏のボード状の製品ですが、屋根下の充填断熱材の下地施工や断熱材の充填施工では火打ち梁の周りの施工に特に時間がかかっているのとドイツ・オーストリア・スイスの建物の影響が大きいのか室内の仕上げ材だけではなく 隠れてしまう断熱材にも環境にやさしい自然素材が使いたいと言う理由でしょうか。

ウッドファイバー断熱材とは

PHJ賛助会員の皆様はウッドファイバーの事は説明する必要はないかとは思いますが、ウッドファイバーとは木のチップを繊維化して圧縮した断熱材で特徴としては

・比熱容量が高い(温まりにくく冷めにくい)
・透湿性が高い(水蒸気を通す機能が高い)
・遮音・防音性が高い
・難燃性が高い(万が一の火災時に有毒ガスを発生しません)
・エコロジー(有害な化学物質を含まない)

上記の様な特徴を持っています。今までで何度か使っていたのは北海道で生産されたウッドファイバーでしたが、残念ですが現在は生産中止でヨーロッパからの輸入品しか現在はありません。ウッドファイバーはPHJ賛助会員でもあるイケダコーポレーションさんよりSTEICO zellを使う事としました。

ウッドファイバーブローイングに伴う仕様変更

ウッドファイバーのブローイングを自社施工とすることができるのかと言う不安もあり、施工を行ってもらう社員職人とブローイングマシンの販売店に出向き施工指導を受けてきました。
職人の意見としては
‟ロックウールは100㎜の厚みなので何層入れればいいかがすぐわかるけど
ブローイングの場合は何キロの密度で入っているかが慣れるまで分からないので
どうしても余分に吹き込んでしまうかな“

と言っており余分に吹き込むのは致し方ないとして他に問題になることはないのかと考えた時に
吹き込みすぎて屋根通気を潰してしまうのでは?

現在の標準仕様】
断熱材200㎜
⇒垂木(断熱材100㎜)
⇒透湿防水シート
⇒屋根通気胴縁30㎜
⇒野地合板
⇒ゴムアスルーフィング
⇒ガルバリューム鋼板

上記の仕様となっていますが、垂木上の透湿防水シートをブローイングした断熱材で 通気層を潰しては困るなと思い垂木上に通気を兼ねたアミパネルを検討。

アミパネルの場合9㎜の杉板が斜め格子状3層重なっており、
垂木(断熱材)⇒透湿防水シート⇒アミパネルの組み合わせにすれば断熱材をブローイングしても通気層を潰すリスクが減ることや、万が一潰れたところがあったとしても屋根通気が上下左右に自由に動く事が出来るメリットがある。

又、アミパネルの上に張るゴムアスルーフィングを透湿性のあるルーフィングに変えればルーフィングとガルバリューム鋼板と間の蒸れもアミパネルの方に透湿され解消できる事など特に夏対策には有効に働く事になる。
そして、アミパネルを垂木上に施工することで屋根倍率が1.6倍取れることもあり
・通気層の確保
・ルーフィングとガルバとの蒸れの解消
・屋根倍率の確保

まさに一石丁三丁となる為屋根仕様を
断熱材200㎜⇒垂木(断熱材100㎜)⇒透湿防水シート⇒アミパネル透湿性ルーフィング⇒ガルバリューム鋼板

上記に変更としました。

ウッドファイバーブローイング施工

初めてのウッドファイバーブローイング自社施工の日、
ブローイングマシンを購入した販売店の方が初日は座学や現場でのマシンの説明、施工技術指導で来て頂きました。

一通りのマシンの説明を聞き次は施工指導。
まずは不織布の張り方から。
標準仕様として外周部は気密シートを出来るだけ貫通させたくない為配線胴縁30㎜を使用しています。その為ブローイングで多少不織布が室内にはらんできても大丈夫なので不織布を柱の前面に仮止めし、柱角にタッカーで不織布を留めた方が良いのか、柱角より少し中に不織布を張り柱より出ないようにした方が良いのか、施工精度や施工スピードなど考えながら2種類の不織布を施工してもらいました。

ここで問題が発生。
不織布を留めるタッカーが高圧仕様だった為圧が強すぎて不織布を貫通してうまく張れない。常圧のタッカーと言われていたのに高圧を用意していた様です。壁・屋根下と試行錯誤しながら不織布の施工は完了。

いよいよブローイング開始。
柱、間柱間に対してどの位の量をグローイングしていくかを計算しブローイングしていきます。

ブローイングを行う中で土台上部の柱、間柱の両角に密度が少ない部分が有り施工後に手直しを行いました。
技術指導に来て頂いた時に、この現場だと慣れてくると何人工で施工終わりますか?と聞くと、
「2人で3日若しくは3.5日」と言われていましたが、
職人には人工はかかっても良いので隅々まで断熱材が入る様に言っていたので
初回と言うこともあり言われた工数の倍以上かかりました。

ブローイング密度確認。
全ての壁・屋根下にブローイングが終わり実際にどの位の密度で断熱材がブローイングされているのかの確認を行います。密度が少なそうな面と高密度に入っていそうな面を不織布をカットして中のウッドファイバーを取り出しの重さをはかり密度の確認。最低でも密度50㎏/㎥以上が条件です。

最初は高密度で入っていそうな個所】

不織布を切り取り下記落してもなかなか落ちて来ませんかなりの高密度になっているようです。サヤ管やホールダウン金物の周りのも隅々までキッチリと詰まってます。
密度:63.4㎏/㎥ と十分に入っています。

【密度の少なそうな個所】

不織布を切り掻き落そうとするとバサバサと簡単に落ちてきました。
密度:50.77㎏/㎥
最低の密度は入っていましたがもう少し入れても良いのかなと感じ。次の現場よりブローイング密度は55㎏/㎥を最低として施工しようと決めました。

ブローイングの件数をこなすことで施工スピード及び施工精度も上げる自信がある、
と職人も言っている事もあり、次のパッシブハウス認定申請予定の2つの現場も 施主様に承諾を得てウッドファイバーに仕様を変更。

まとめ

いろんな種類の断熱材がある中でウッドファイバーを必ずしも使わないといけないと言うわけではありませんが、
成長する資源とまで言われる木材。
構造材、羽柄材だけでなく壁・屋根の断熱材もウッドファイバーにすることで、より一層カーボンマイナス効果があることは間違いないと思われます。

パッシブハウスの様な高性能な建物とすることで地球温暖化の対策にもなり、次の世代の責任を引き受ける事にもなると考えられます。

私も参加しているグループ「House de Oreganic」の目的でもある、

建築を通して「子供たちに豊かな未来を残す」に共通するかとも思います。

最後に日本では生産中止となっているウッドファイバーの生産工場が復活することを願いたい。