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ニュースレター 2024年3月号コラム ~ あなたは本気で脱炭素するつもりがありますか。 ~

2024.03.29

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竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事

あなたは本気で脱炭素するつもりがありますか。

先日、スタッフも連れてヨーロッパに行ってきました。案内は滝川薫さんにアテンドいただき、4日間、オーストリアフォアアールベルグ地方(ヘルマンカウフマンさんのところ)とスイス(バーゼル、チューリッヒ)とを回ってきました。せっかくヨーロッパまで行ったので、一行から外れパリに寄り道をして帰ってきました。昨年、秋にデンマークも行ったので、定期的に出かけています。

まず、総評。

「何だ、これは」というほど物価が高いです。着いたチューリッヒ空港で、サンドイッチとコーラとコーヒーでだいたい5,000円です。日本円からすると3倍くらいでしょうか。いや、もっとかもしれない。覚悟はして行ったのですが、、、

いやはや、何ともという感じです。本当に日本は貧しくなりました。
私、学生時代に1年パリにおりまして、その時は超円高の時代。東京よりパリの方が生活が安いんじゃないかという錯覚できる環境におりましたので、これは凹みます。そこで、途中から、換算するのをやめました。滞在するのが、1週間足らずなので、2週間(3週間か?)いたことにすればいいんじゃないかと勝手に思うことにしたのです。

1ユーロは100円と考えると、ちょっと気が楽になります。(本当は160円だけど、、、)

旅の間中、ずーっと考えてました。「なんで日本はこんなに貧しくなっちゃったの????」

滝川さんのツアーはバランスが良くて、単純なエコハウスだけの見学にあらず。
スイスバーゼル州の環境局に行ったり、
ランゲンエック村という少数の村に行ったり、
スイス発祥の、リノベをやるのを解体現場に探していくような新進気鋭な事務所に行ったり、
機械に頼らない断熱バッチリの学校、
アーチストのための集合住宅、
あるいは4周に太陽光発電がぐるっと取り付けられている建物に行ったり、、、。

そこに加えて、カウフマンさんの建物がいくつかという豪華ツアーでした。

至る所で聞かれるのは、「性能はパッシブハウス基準」(スイスでは、ミネルギー基準)は当たり前。
それに加えて、
「脱炭素にするには、、、」
「脱炭素を考えた時のライフサイクルコストを考えると、、、、、」
といったフレーズです。

パッシブハウスは基礎的な技術になっているのです。

思い起こせば、2014年のパッシブハウスのツアーで、同じような地域を巡った衝撃もすごかったことも思いだしながら、それとは違った衝撃を受けてきました。思い起こせば、あれから10年。ヨーロッパの社会はどんどん、脱炭素を本気で取り組み、そちらに思い切りアクセルを踏んで、差がついてしまったなという感覚です。

本当に全ての基準が脱炭素。
日本ではいまだに温暖化会議論者がいて、
「温暖化は本当に二酸化炭素のせいではないのではないか」とか
「やっぱりクルマはEVじゃなくて、ハイブリッドだよね。」と、
だからそんなに脱炭素しても、、、、みたいな雰囲気が所々に残っていますが、
あるいは「脱炭素なんて、そんなの無理」みたいな雰囲気があります。
同じように、「パッシブハウスまで本当にいるの?」ということもよく聞きます。

さて、本当にそれでいいんでしょうか。

一般の人のマインドセットを待っていてもダメなのではないかと思います。

「温暖化」に関しては、本当は時間が経って、歴史を見ないと誰もわからないというのが真実だと思います。
ですが、「温暖化」が来るかもしれないと考え行動し、
エネルギー転換を行っていった社会の方が、確実に発展していて、豊かになっているのもまた事実です。

直接的に因果関係があるかどうかは議論を呼ぶところだとは思いますが、
・「温暖化対策頑張った」
・「新しいイノベーションが様々あるよう試行錯誤した」
・「社会が豊かになった」
は、どう考えても関連がありそうに思えます。

下の表は、すでにエネルギーの転換がどのくらいまで進んでいるかの各国の比較表です。
現時点で、アメリカ合衆国、フランス、日本以外は40%以上が再生可能エネルギーで賄われています。
アメリカは資源がたくさん出る産油国、フランスは原発に頼っています。
日本は、、はさておき、カナダ、この表にはないがデンマークなどは70%に近づく勢いです。

そのことが何を示すか。

簡単です。
インフラが整ってしまったら、エネルギーを購入せずとも再生可能なエネルギーで賄えることを示しています。
エネルギーがただってすごくないですか。

さて、反対に
・「温暖化を疑った」
・「何もする必要がないと思った」
・「社会が貧しくなった」
も関連がありそうに見えます。

結果として、何も大きな変化を求めなかった私たちはどんどん取り残されていく。
変化しないんだから、取り残されて当然です。
試行錯誤していないので、そのままなので、相対的に遅れていくのは当然です。
色々な温暖化に対する議論は慎重な議論にも思えなくもありませんが、
極めていくとそこにあるのは「現状維持、何もしない」です。

私たちは進歩しないと生き残れません。イノベーションが必要なんです。

ちょっと前、自分たちの技術に自信のあったNokiaという会社がありました。もう変更はしないと決めていたら、結局今は会社自体、無くなってしまっています。

自動車に関しても、駆動を受け持つのがハイブリッドエンジンか、電気で動くモーターかということよりも、自動車に頼る社会というものをウォーカブルにしようとか、自転車に変えようという大きな流れがあり、乗るならば公共交通であったり、自転車であったりするように、社会全体を変革させていく。その結果としての駆動の問題も、日本では国民が自動車メーカーの方針の心配をしているような変な状態です。正直、余計なお世話です。クルマメーカーは自分たちのことを生き残りをかけて考えています。

ですので、パッシブハウスも通過点として、エネルギーのかからない家がより求められていると思うのです。数が増えることにより社会的な影響力ももっと増えるはずです。いつかはパッシブハウスではなく、「今でしょ」っていう感じです。確かに建築物のコストは上がり建てにくい状況にいます。ですが、いろんな工夫のしどころだとも思います。

また、ヨーロッパの建物の関して言えば、
LCCM(ライフサイクルコスト)的に、現在建っている間のエネルギーの消費量ではなく、作るエネルギー、壊すエネルギーのトータルとしてのエネルギーやCO2の排出量が計算されています。新築ではなくリノベーションに力点が移ってきているようにも思いました。

ヨーロッパが全てではないですが、
ずっと安然と現場に留まることはできませんので、少しでも追いつく努力をしたいと思います。

セーヌ川沿いの自動車専用道路は歩行者とランナーに開放されている。