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ニュースレター 2024年1月号コラム ~ 分けて捉えたい、平時の省エネと非常時の省エネ。~

2024.01.11

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森みわ

パッシブハウス・ジャパン代表理事

分けて捉えたい、平時の省エネと非常時の省エネ。

能登半島の地震発生により、元旦から大変重苦しい2024年の幕開けとなりました。被災した皆様がいち早く元通りの生活を取り戻せるよう、切に願うと共に、非常時の行政主導の限界そして民間レベルでの連携の必要性を感じています。

元旦当日の私は、幾ら温めても室温が16度程度にしか達しない鎌倉のボロアパート(大家さんゴメンナサイ。他にふさわしい表現が見つかりません・・ちなみに私がお送りしたガイアの夜明けの録画、観て頂けたのでしょうか?)で年越しを迎えた訳ですが、まさに今自分が凍えている鎌倉の木造家屋を彷彿とさせる古くて簡素な家々が能登半島で複数倒壊した様子をテレビで眺め呆然としながらも、私の平時モードは一瞬にして非常時モードに切り替わったのでした。

「こんな極寒アパートでも全く無いよりはマシか」と平時の不満も一瞬で吹っ飛ぶ訳なのですが、果たして私達は、もう何回このような光景をテレビで目にしたのでしょうか。大地震とその直後に押し寄せる津波、常につきまとう原発の懸念は、3.11以降の日本にとって相変わらず非常時扱いなのでしょうか?

少なくともそれらの発生は私達にとって既に想定内なのですが・・。

言い換えれば、この災害大国ニッポンにおいて、ある日一瞬にして沢山の方が被災し、救助の手が追い付かないということが常に想定されながらも、テレビで目にする避難先は相変わらず何十年前と変わらない環境であることに、素朴な疑問どころか、怒りさえ混み上げます。

寒い避難所では段ボールベッドすら行きわたらず、新聞紙を使った暖の取り方などをテレビのレポーターが大真面目で紹介するという状況に、根本的な問題を感じる方も多いでしょう。そう、もしも近隣住民の避難場所となる体育館をはじめとする公共施設がもっと快適で暖かかったならば、太陽光発電や独自の非常用熱源を有し、外部からの電源供給に依存しないような状態になっていたならば、そのような被災者任せの採暖など不要だったと。近隣の方々ももっと身軽な恰好で避難出来るだろうし、身一つですぐさま走った方が津波を振り切れる可能性も高くなるのにと。

さて、住宅の省エネ化を検討する際、「非常時も強い」こと、すなわち防災と同義であるならばと決断される方も少なくは無いのですが、そこは一旦整理して考えるべきだと感じています。住宅の省エネ化は、平時の地球全体の営みとしての省CO2の観点から必須なのであり、住宅が非常時にまず発揮しなければならないのは住人の命を守る耐震性能や耐火性能でしょうか。一方で、防災拠点となりうる公共建物の省エネ化は(もちろん平時の省CO2にも貢献すべきなのですが)、主目的として、非常時に被災した方々の心のケアと人命救助の後方支援、要約すると災害関連死の阻止のために必須なのではないでしょうか?

という事で、昨年末に日本の全ての小学校にグローブを3つ(2つでキャッチボールは成立しますが、人口の10%と言われる左利きにも配慮して)配った大谷翔平選手をお手本に、日本政府には日本中の学校の体育館の断熱改修を行い、非常用熱源を含む災害時に必要な備蓄を備え、道路やインターネットが機能せずとも救援要請や安否確認が可能なデバイスやソフトウェアも開発して全国で無償配布して貰いたいです。

それ位の予算は2025年に予定されている大阪万博を中止すれば捻出出来るのでは無いでしょうか? 不謹慎ではありますが、渡りに船と安堵する万博推進派の政治家もいる筈です。オリンピックや万博を「復興の希望」の象徴とするような時代錯誤な解釈が再び横行しないよう、これから私達国民による監視の目が非常に重要と感じています。

この度の地震で震度7に見舞われた石川県珠洲市ですが、30年間続いたと言われる珠洲市民の皆さんの根強い反対運動により、珠洲原発の計画が凍結された町です。もし、原発が稼働していたらと思うと、恐ろしい限りです。このメルマガを読んでくださっている皆様も、何事もおかしいと思う事にはNOと発信しましょう。

今年のPHJ年賀状募金は、この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様のため役立てて頂きたく、災害発生翌日から珠洲市内でレスキュー活動を展開している空飛ぶ捜索医療団ARROWSに寄付させて頂くことになりました。地震発生から124時間経つも1月6日に救助された90代の女性も、こちらのチームの医師によるレスキューでした。

引用)空飛ぶ捜索医療団ARROWS https://arrows.red/news/emergency/n20240107/

この度、現在のPHJメルマガ購読者数6232人x100円の623,000円を、PHJ年賀状募金として空飛ぶ捜索医療団 ARROWSに寄付させて頂きましたこと、この場でご報告させて頂きます。これを可能にしてくださった、PHJ賛助会員の皆様にも御礼申し上げます。