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ニュースレター 2019年4月号コラム

2019.04.10

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度ニュースレターを発行しております。

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三原 正義

パッシブハウス・ジャパン理事(2024年4月 理事に就任)
エコモ株式会社 代表取締役  

札幌にて独立後、群馬へ移転し住宅設備会社を経営。鎌倉パッシブハウス以降たくさんのパッシブハウス案件の換気設計・施工を多く行う換気のスペシャリスト。

FBで書きましたが、重要なのはことなので改めて深入りして紹介しておきたいと思います。

エアコンの冷房、除湿運転をしているとき、エアコン内部には700gもの水分がたまりっぱなしだそうです。水分が付着していることくらいは認識していました。しかし700gというのは想像をはるかに超える量で驚かされました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2016.3/0/2016.3_253/_pdf

内容をおおまかにまとめると次のようになります。

  • 最大保水量(700g程度)になるまで室内機の水は外に排出されない
  • エアコン停止後は室内機から配水管を通して液体の水としてはほとんど排出されない。
  • 停止後に送風運転してもほとんど排出されない。ならびにそれをやると水分を室内に100g/h放出することになるので加湿していることになる
  • 室内機内部の湿度は、放置時では80%以上の状態が28時間、内部乾燥(送風)字でも約3時間継続し、完全に乾燥するまでは室内より高い状態が続いた。この結果よりカビ等の発生が予想される。

以上ですが、前から送風が止まるとカビが生えやすくなるから連続運転するべきだと思っていました。しかし、運転をし続けないと本体内部、およびドレン配管内の古い水が排出されないことになります。水も空気もよどむとすぐに汚くなり、カビ等も生えやすくなります。梅雨から9月末までギトギトであること、高断熱かつ日射遮蔽ができている住宅では連続運転のほうが安いというのも大きな理由でした。しかし、この実験の結果も3つ目の大きな理由たりうるものだと思いました。

また、オフにするとオフの間中、700gの水分が部屋に置かれているだけの状態になるので微妙に加湿している状態になります。ましてやそこで最近のエアコンによくついているクリーンに保つための送風モードが稼働した場合、これはれっきとした気化式の加湿器になります。ということはオンオフを繰り返すということは除湿に関して3歩進んで1歩下がる。。みたいなことをやっていることになります。これはもっと大々的に世に知られるべきことだと思います。


竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事
『みかんぐみ』共同代表

エコハウスアワード2019の審査員を終えて

今回のPHJエコハウスアワード2019では、いくつかの特徴があった。

それぞれについて書いてみたい。

パッシブハウスが5つのラインアップ

今回はパッシブハウス部門が5件並んだ。また、推奨部門でももう少しでパッシブハウスというものが2件あった。また、常連の参加者が今年は出していないなど、様々なポテンシャルを感じる分野である。パッシブハウスが標準になってきた。喜ばしい限りである。そうなると次は、パッシブハウスであることを前提として、何ができるかというレベルになる。コスパなのか、デザインなのか、単純に新しさなのか。色々な尺度があろう。審査員にもどうしてそれを選ぶのかといった審美眼や先進性への理解が求められるようになる。

例えば、このクラスの参加者による勉強会なども考えられないだろうか。より理解を深くし、パッシブハウスの普及に役立つのではないかと思う。今年は九州で大会が開かれたこともあって、東北、北海道勢はベテランしか来れていなかったが、北海道、東北での新たな試みが行われていると聞いている。来年が楽しみである。また、このクラス、認定までは(お金もかかるし)ハードルは高いけど、そのクラスの建物であるということが、一応客観的に1次審査される。認定以前のパッシブハウスという意味で、1次通過は価値があると思う。

このクラスになると地域の気候の差が大きく作品に影響する。簡単にいうと西に行けば、温熱的に有利だという話だ。確かに冬に関しては、そう言える。一方で夏の日射遮蔽に関しては、かなり難しくなる。そういう点、西では夏のパッシブハウスのデザインに期待したい。また、温暖な気候エリアの中で、先進的な取り組みを続けていくことに評価したい。また、これをより標準にする努力が求められる。

北は逆に日射取得に関して、様々な取り組み(外付けブラインドや庇、開口の取り方など)があるように思う。

推奨部門での多様性と基礎知識

様々な取り組みがあった。一方で、断熱や機械に頼る前の配置計画、平面計画の段階でのパッシブハウス的な思想が理解されていない事例も散見された。建物はシンプルな矩形の方が温熱的に有利だし、日射取得のため南側を開けられるのに、そうなっていないなど。地域での地道な勉強会などが望まれる。あるいは講評会狩り、そこでのデザインレビューのようなものがあってもいいかもしれない。また、このクラス、裾野をもっと広げる必要がある。様々な取り組みの場にできるといいんじゃないかと思う。

リノベーションの新機軸

リビルディングセンタージャパンの東野さんの参加には、正直びっくりした。若手で自らも手を動かし、古い民家の古材をレスキューし、どうやって次に活かしていくかなどを提案する若手デザイナーである。彼は自宅を暖かくしたいと築50年ほどの平屋の住宅の断熱リノベを行なった。この間、1年である。1年でG2レベルのリノベを実施し、現在、同様のレベルのリノベをするために、勉強しているという。こういう形で、インフルエンサーが断熱に取り組むことの意義を考えたい。大きな話でいうと、日本の住宅の40%は無断熱。やっていても大したことないものを入れると90パーセント近くが、改善されなければならない。そういう状況の中で、このリノベ部門だけがあってもいいと思うほどである。

非住宅へのパッシブハウスの応用

今年も保育園の募集があった。学校や公民館など、多くの人が利用する建物でのパッシブハウス化も重要なテーマである。近い将来、自治体の公共建築をどう使っていく(あるいは壊す)のかが、仕事のヴォリームゾーンとなる可能性もある。そうなった時の、改修の断熱化は必須になると思われる。リノベだけではなく、新築も同様である。CO2の排出の多寡、あるいはランニングコストを含めて考えると、住宅だけではなく、都市(公共)施設全般に言えること。そこにチャレンジする姿勢を評価したい。一つの挑戦が仲間を増やしていくだろう。また、今年度なかったが、エコタウンのような建物群も意義深いと思う。

エリアの自立と活性化

以上、ざっと振り返ってみたが、一つ提案をしてみたい。気候による差や予算帯も違うので、各エリアで地域ならではの予選を行ってはどうだろうか。参加のハードルもグッと下がる。そこでの目的は、審査というより情報交換である。みんなでワイワイやって、ボトムアップを上げることをするのだ。そして、そこで選ばれたもので決勝戦を行う。あるいは、敗者復活戦的に全国でダイレクトに出てきてもいい。そうなると色々と盛り上がるような気がする。

PHJの存在意義

さて、ここで、PHJは何のための協会なのか、何をどうするための協会なのだろうと思いが至る。これは事務局に対しての問いではなく、会員一人一人にとっての団体、各自が思い描く団体のあり方の話である。単純に言えば、この団体は単なる営業目的のフランチャイズではない。あるいは、勉強会だけでもない。実践も伴っている。みんなが共通に燃費ナビを使うことができる。ただ、それだけだろうか。

もっとも大きい目標は、「パッシブハウスを日本中に広める」ということである。あくまで私の印象だが、お互いにはライバルというより、同じ戦いを闘う同士のようなものだ。超のつくトップランナーもビギナーもいる。実に様々な人がいる団体に思えるのである。これだけバラエティの富んだメンバーがいるPHJの目標は、単一にはなり得ない。各自が各自でそれを考える必要がある。

最初は森さんが,「日本でもパッシブハウスを広めたい」と始めた集まりが、どんどん大きくなっている。そしてそれがスタートアップの第1フェーズから、徐々に成長する成長期の第2フェーズ、そして、会員各自が動き出して拡大する第3期。今はすでにその期に入っていると思う。さらにその上を目指すためには事務局だけではなく、会員全員がいかに参加し、PHJをどうするのか

議論もしなくてはいけない。ラクビーでよくいわれるOne for all ,All for one(一人はチームのために、チームは一人のために)である。各自がそれぞれにとってのパフォーマンスを最大限にすると、PHJはもっと成長するのではないか。一人一人が組織のことを考え始めると、組織は一気に自己増殖的に発展できるだろう。多様性のある発展が見込まれる。以上が、私がコンペを審査しながら思ったことである。