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森みわ
パッシブハウス・ジャパン代表理事
東日本大震災から15年 ― 住まいと「暮らしの安全」を考える
2010年に生まれたPHJは、今年で設立16周年を迎えました。ただ先日開催した全国大会では海外ゲストをお招きすることになり、いつもより少し大きなスケールでの開催となりました。そこで切りの良いところで、ちゃっかり「15周年記念イベント」とさせていただきました。ややこしくなってしまい、大変申し訳ありませんでした(笑)。

さて、PHJ設立の翌年に起きたのが東日本大震災です。あれから今年で15年が経ちました。多くの人の尊い命と暮らしを奪ったあの出来事から、私たちは一体何を学んだのでしょうか。原子力発電はゾンビのようによみがえりつつあり、不安定な世界情勢のなかでエネルギー価格の高騰は続いています。私たちの省エネの取り組みとは、もはや地球温暖化対策なのでしょうか。国防の様相ではないでしょうか。
ドイツの省エネ運動が、脱ロシア依存という意味合いを強く持っていたことは、これまで皆さんにもお話ししてきました。もっともそれは、すでに40年以上も前の話です。現在は気候危機が深刻化し、世界各国はエネルギー価格の高騰と、食い止められなかった異常気象への対応に追われています。
では日本はどうでしょうか。15年前の大災害からの復興すら完全に終わったとは言いがたいこの国が、もし戦争に巻き込まれるような事態になったらどうなるのでしょうか。どこかの国の戦争に加担し、敵視され、日本列島が攻撃を受けるような状況になったとき、私たちはどうやって家族や親しい隣人、そして弱い立場の人たちの暮らしを守ればよいのでしょうか。どうやって、徴兵されていく子どもたちの命を守るのでしょうか。

私は「自助努力」という言葉が嫌いではありません。しかしそれは民間人である私が、自らに課している覚悟です。国政を担う立場の人がその言葉を口にするとき、私は強い警戒心と違和感を覚えます。自然災害とは対話することができません。しかし人間同士は、言葉の壁を越えて対話を続けることができます。自然災害には備え、殺し合いは対話によって未然に防ぐ。私はそれが、人間社会の進むべき道だと思っています。

さて、欧州に30年近くも遅れを取って、遂に公営住宅をパッシブハウス仕様で実現したいという地方自治体が名乗りを上げてくださいました。パッシブハウスがもたらす沢山のメリットをひとまとめにすると、それは「暮らしの安全」に集約されるのだと思う今日この頃、このメリットを、最も困窮している方々に届けられるとしたら、だれも置き去りにならない「優しい社会」に、日本も一歩近づけるのではないでしょうか?
私たちなりの「国防」を、形にしていければと思っています。

16年間の活動を通じて、PHJには全国に多くの仲間が広がりました。今回のイベントで基調講演をされた海外ゲストのお二人からは、「このコミュニティには元気で若いメンバーが多いように見える」というコメントをいただきました。
PHJを長年支えてきてくださった企業の事業継承が順調に進んでいること、そして近年新しく参加してくれた若いメンバーが加わったこと。その両方が、このような印象につながっているのだと思います。実はこの流れを受けて、PHJの理事会にもこのたび新たに2名の理事にバトンが託されました。設立当初から長年にわたりPHJを支えてくださった高橋慎吾理事、高岡文則理事には、この場を借りて心よりお礼申し上げます。これからもプレーヤーとして建築業界をけん引していただければ幸いです。
