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【ニュースレター 2025年9月号コラム】パッシブハウスが、一般の住宅になる日への期待

2020.09.16

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高橋 慎吾

高橋建築株式会社 代表取締役
PHJ理事

パッシブハウスが、一般の住宅になる日への期待

パッシブハウスレベルへの迷い

パッシブハウスがとてもハードルが高いと思われている方も多いと思います。
そして、これから住宅を建てようと考えている人も、パッシブハウスが本当に必要か迷われている方も多いと思います。
建築に携わる設計者さんも、住宅業者さんもそこまで本当に必要なのか?疑問を持っているのではないでしょうか?
私も当初はかなり迷いがありました。
しかし、パッシブハウスを建てた方が良いと思えるお話をしたいと思います。

やり過ぎと言われ続け

このコラムをお読みになっている技術者の皆さんの多くは、すでに高性能な建物に取り組んでいらっしゃると思います。
他社に先駆けて取り組んで来られた方は、周りから常に「やり過ぎだ!」と言われてきたのでは無いでしょうか?
20年前もやり過ぎ
10年前もやり過ぎ
今でもやり過ぎ
いつでもやり過ぎです。

25年前のやり過ぎ

まず25年前のやり過ぎです。

25年前ですが、現在の基準の等級4で建てられています。現在は途中で内窓を追加し、UA=0.55となっています。建築当初から太陽光発電設備も4kW設置されています。当時換気も義務化されていませんでしたが、ダクト式の第3種換気も設置されています。C値も0.3台です。先進的な取り組みでした。

当時はやり過ぎと言われていました。

お客さまがハウスメーカーを回ると「やり過ぎ。あそこまでは必要無い。意味が無いことにお金をかけている。」とハウスメーカーにいわれたと何度も聞きました。
自分でつくるつもりがないレベルの他社の住宅をいつの時代も「やり過ぎ」と批判します。

しかし、今現在はどうでしょうか?ハウスメーカーでもZEHを押しています。気密性能をうたう住宅会社も増えていますね。「やりすぎ」ではなかったのでしょうか?
その当時、ハウスメーカーの言葉を鵜呑みにして当社以外で建ててしまった人はどうでしょうか?現在、寒い家、暑い家に我慢して住み続けているのではないでしょうか?光熱費もたくさんかかり続け将来もずっとそのまま。
住宅は簡単に買い換えるわけには行きませんから、我慢し続けるしかないのです。
安易に「やり過ぎ」と言ってしまったハウスメーカーはどう思っているのでしょうか?
この家は、25年たって、周りが追いついてきたという感じです。まだ住み続けようと思いが持てます。

ZEHレベルの不十分さに気がつく

25年前にZEHに近い家を建てましたが、その不十分さには徐々に気がつきます。
温度ムラもありますし、エネルギーの消費量はとても大きいです。
このレベルになると無理矢理エアコン1台で冷暖房したり、ある程度の快適性はあります。しかし、それを維持するためにエアコンを24時間連続運転すると、とてもエネルギーを消費するのです。今まさに問題になっていることです。

省エネ等級4の家を部分間けつ冷暖房するのに比べG1、ZEHレベルの家を連続冷暖房するのでは、後者の方がエネルギー消費量が大きくなってしまう場合があるのです。
その不十分さに気がついてからも性能向上は続きます。北海道レベルにしてみたり、さらに性能をあげたりし始めました。勉強、チャレンジを続けましたが、それでもまだ物足りなさが残ります。

15年前のやり過ぎ

パッシブハウスと出会って、すぐに「求めていたのはこれだ!」と直感で気がつきました。理念、計算ロジックがすごいと感動しました。森代表に教えを請い、すぐにパッシブハウスを計画しチャレンジしました。

ほとんど暖房もいらず、家の中はどこでも快適。快適さが今までとは全く違い異次元の住み心地です。それまでの住宅と比べると、断熱は2倍以上にもなります。そしてトリプルガラスの木製サッシ。第一種熱交換換気システム。

また同じように、「あそこまではやり過ぎ。」お客さまから聞くとハウスメーカーから「あの住宅はフェラーリと同じです。普段の生活にフェラーリがいりますか?」と言われたというのです。
確かにハウスメーカーの住宅は等級4をやっとクリアーするレベル。フェラーリに見えたかも知れません。
私も「とんでもない住宅を作ってしまった。」と当時は思いました。

迷いの始まり

パッシブハウスの技術を学び作れる様になってもG2レベルで十分でないかという迷いも出ます。私もコスト優先で性能をG2まで落とした住宅も数多く作りました。ですが、やはり物足りなさを感じます。

作りつつ、中途半端な気持ちになってしまうのです。体感の違いがはっきりわかります。消費エネルギーの差もはっきり解ります。そしてお客さまの反応。やはり違うのです。そして後悔の念に駆られます。できるのにやらないのは不誠実だったのではないかと思い始めました。  そして、立地条件が合えばパッシブハウスとできる仕様が標準となっていきます。

オーバースペックの見極め、本当のやり過ぎ

パッシブハウスが解ってくると、どこをどうに設計していくと性能が上がるのか解ります。コストをあまりかけずにハイスペックにすることも可能です。そうするともっと高性能にしたくなります。それでできたのがオーバースペックな建物です。

暖房需要が数kW/㎡と言う住宅も作りました。その住宅では暖房はいりません。オーバーヒートもおこります。住み心地は真冬でも暑く感じることが多くなります。そのレベルが必要だとはとても思えません。私もこれこそ本当のやり過ぎだと思いました。

私の思うちょうど良い、やりすぎではないレ

これまで、高性能化に取り組んできました。その経験で解ったこと。それはパッシブハウスがちょうど良いと言うことです。普通では味わえない異次元の快適性が得られます。

そして省エネ。
これ以上性能を上げてもオーバーヒートの頻度は上がりますし、冷房需要も増えるでしょう。快適性も上がらなそうです。設備のコスト、建築費も含めてとても良いバランスと思えます。

これからの住宅レベルの向上

ハウスメーカーも徐々に高断熱化をしています。少しづつではありますが、変化し続けるでしょう。
以前は等級4以上 必要無いと言っていたのが、ZEHレベルが必要。等級6が必要と言い始めています。どこまで行くでしょうか?

我々の建築をやり過ぎだと言っておきながら、20年遅れでやり始めます。やり過ぎだと諦めさせたお客さまへの責任は感じないのでしょうか?その時、ハウスメーカーの営業さんの言葉を信じて低いレベルの住宅を建てた人は後悔しているかも知れません。とても残念ですね。

このまま、断熱レベルが上がっていくのは間違いないですが、どこまで上がっていくのでしょうか?相当の年月がかかると思いますが、私と同じようにパッシブハウスの性能があれば十分と気がつくでしょう。

そうです。これは将来パッシブハウスまで性能が上がっていき、パッシブハウスで止まるのでは無いかと言うことなのです。それなら、今パッシブハウスでつくっておけば後悔することはないと言うことでは無いでしょうか?

パッシブハウスの普及 願い

徐々にパッシブハウスが増えてきています。100棟以上出来ました。計画中もとても多いようです。今まではほとんど見かけることがありませんでしたが、全国各地に建ち始めました。今では日本各地で体験することもできます。住んでいる人のSNSでの投稿も増えてきました。そうすると今後、爆発的に増えるのではないでしょうか?その兆しを感じます。

あなたがもし住宅を建てようとしているなら。もし住宅建築に携わる人なら。後悔しない様にパッシブハウスに取り組まれてみてはいかがでしょうか?これまでの私の経験上、本当に、本当にそう思います。 一般の方が、普通にパッシブハウスに住める世の中になる。パッシブハウスが特別なものではなく、普通の住宅になる日が一刻も早く来ることを願っています。