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森みわ
パッシブハウス・ジャパン代表理事
ヒートブリッジを制する者はパッシブハウスを制する?!

flixo 8.2導入のお知らせ
今年は全国的に梅雨入りが例年よりも早く、早めの梅雨明けの後には猛暑がやってくることも予測されています。今から先が思いやられますが、少なくとも宅内での暑さ寒さの原因は熱のマネージメントに失敗しているからですね。この気候危機の真っただ中にあっても、熱をきちんとマネージメントすることで、省エネ且つストレスフリーな屋内環境を確保することは出来る訳ですが、この度はパッシブハウス・ジャパンで導入したヒートブリッジ解析ソフトflixoのご紹介です。
窓や外壁、屋根など、外皮の断熱性能が高まった暁には、その高性能な「面」が取り合うことで発生する「線」状の熱損失、すなわちヒートブリッジをケアしていく必要があります。ということで、パッシブハウスの検証でも必要不可欠なヒートブリッジの解析ですが・・・。
当初PHJが導入したWinIso2Dという解析ソフトはなかなか高額で、このソフトウェアを扱えるメンバーは国内で少人数だったため、パッシブハウス認定物件を増やすにあたりヒートブリッジ解析業務がボトルネックになりがちでした。無料で利用できるTHERMというソフトウェアも勉強会を開催して有志で習得を試みたのですが、やはり有料のソフトウェアに比べると使いづらさがあるのは否めませんでした。そこで数年かけて各国でパッシブハウスに取り組むメンバーにアドバイスを貰い続けた結果、スイスのinfomind GmbH社が開発したflixoが候補として急浮上したのです。

こちらのソフトにはPro版、Energy版、Frame版という3つのバージョンが存在し、機能に応じてサブスク費用が異なることから、PHJ事務局としてPro版を導入し、各窓メーカーから受領した窓枠の詳細断面を用いてUf解析をおこなうことでUfデータの一元管理を行える一方、実際にパッシブハウス認定取得に向けてPHPP入力を行う設計者やPHコンサルタントは、導入費用を抑えたEnergy版を導入することで、解析済みのUfファイルを受け取ってインストールψ(プサイ)値を数値化するという連携が可能となりました。操作性に関しては、DXFファイルの取り込みから始まり、物性値や境界条件の設定、熱解析、レポート作成まで、WinIso2Dまたは3Dに比べると非常にスムーズに行うことが出来るため、解析業務の高速化に貢献できそうです。PHPPが入力を求めているψ値の概念が分からないと、flixoを扱うことはあまり意味を成しませんが、ヒートブリッジ解析を習得すると、外皮の取り合い部分のディテールがどんどん進化していきますので、一度スタートを切ってしまえば、パッシブハウスの達人の領域に達するのは時間の問題かと思います。
2025年6月現在のflixo energy のサブスク費用は年間450 EURとなります。designPH導入のためにSketchUpをサブスクしている方も多いかと思いますので、塵も積もれば山となる訳ですが(涙)、あえて書きます。既にPHPPを所有され、入力もある程度修得している方には是非導入をお勧めしたい!下記はflixoで壁と屋根の取り合い部分のヒートブリッジ解析を行ったレポートの例となります。

今後は主にライセンスを導入された方を対象としたオンラインセミナーをPHJで随時開催していく予定です。また、2025年7月16日~18日開催のPHPP集中講座より、配布テキストの中で紹介されるヒートブリッジ解析レポートはflixo版となりますので、こちらもお楽しみに!
