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高岡文紀
有限会社アーキテクト工房 Pure 代表取締役
PHJ理事
空気も選ぶ時代になるの?
2025年4月より建築基準法の改正
・4号特例の見直し
・構造関係規定の見直し
・省エネ基準適合義務化
上記3項目がかわります。
省エネ基準適合義務化についてはパッシブハウスの賛助会員の皆さんは、緩~い基準でようやく義務化と、余裕ではないでしょうか?
この義務化で懸念されることが
“令和のシックハウス対策“
今まで高断熱・高気密に取り組んでこなかった住宅メーカーや工務店が否応無しに取り組まなければならないことになります。昨今の資材高騰に合わせて省エネ基準が義務化されさらに建築価格が高くなるのを抑える為に、少しでも安価な新建材を使って家づくりをされることが予想されます。
過去にも住宅リフォーム・紛争処理センターに寄せられたシックハウス等の相談件数が省エネルギー基準の改正後多くなっており、今回の省エネ基準適合義務化で高断熱・高気密と室内空気質は切っても切れない関係になることは間違いないですね。

シックハウス症候群とは
皆さんご存じかとは思いますが受託や建物内の空気汚染が原因で、住人が体調不良を引き起こす現象の事です。新築やリフォーム後の建物で特に問題になりやすく、化学物質やカビ、ダニなどが原因とされています。
2003年に建築基準法の改正で
24時間換気の義務付けや、ホルムアルデヒドなど6種類の有害物質に対する厳しい規制が実施され、現在流通している建材の多くは安全基準(F★★★★)をクリアしています。
その結果、かつてのシックハウス問題は大幅に改善されました。
しかし、現代の高断熱・高気密住宅は、エネルギー効率や快適性を追求するあまり、室内に化学物質が滞留しやすいリスクを抱えています。規制対象外の代替物質が、新たな健康リスクを引き起こす可能性が指摘されており、従来の対策だけでは十分でないのではないかと思われます。
日本の法律では下記表の6項目が規制されています。

German Committee on Indoor Air Guide Values(ドイツ室内空気ガイド値委員会)では揮発成分は約60種類もあると言われています。

2013年に森代表理事とドイツへ環境視察ツアーに行った時にTVOC(※)のコンサルが行われている話を聞きました。詳しい数値は覚えていませんが・・・。
・クライアント・担当医師・設計事務所・工務店そしてVOCが発生する材料を扱っている、
・建材納品業者や給排水業者などがチームを組んで目標とした数値までにTVOCを抑える、
と言う事でした。
※TVOCとは:常温で揮発する有機化合物(VOC揮発性有機化合物)の総称。Total Volatile Organic Compoundsの略語で、「総揮発性有機化合物」とも言われる。
パッシブハウス申請準備物件空気測定実施
一般社団法人空気環境改善研究所石坂氏と出会う機会がありパッシブハウス認定申請を予定している現場の室内空気を124種類以上化学物質の検出ができる「エアみる法」で測定してみました。
124種類の化学物質の中には下記の種類があります。

中でも全体としての割合が多いのが
脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素、溶剤成分で疎水性の化学物質を溶解(水に溶ける)する薬剤で、塗料や接着剤など健康に被害が出やすいものが多く含まれています。
他には
・水溶性の塗料の溶剤として使用されているグリコール・グリコールエーテル類
・木材成分からの揮発成分であるテルペン類
・一般的な化学物質としてエステル・アルデヒト・アルコール類・ケトン類
上記のような成分に分類されているようです。
自社で建てた超高断熱・超高気密で自然素材を使って建てた引き渡し前のパッシブハウス(申請物件)の室内にはどんな成分があるのか不安です!!
空気の採取方法は…
30分間全部の窓を開放して、採取する場所に高さ1.2~1.5mの位置にサンプラーを設置し、窓を閉めて24時間採取し、検査機関へ送ります。
送付先の検査機関が、地元愛媛の企業で全国的にもZボイラーで有名な三浦工業株式会社内の三浦化学研究所!まさか地元で空気の検査をしているとは思いませんでした。
測定の結果



日本で決められている6種類の検査結果 TVOC490μg/m3
新築住宅ではTVOC平均値は3000~4000μg/m3との事で測定結果のTVOC490μg/m3はとても少ないので、一般社団法人空気環境改善研究所 石坂氏より結果報告の解説を受けた時に“本当に新築ですか?”と確認されました。
ほとんどの成分が木材自然素材由来の結果ではありましたが赤で表示されている成分が気になります。
成分のメチルエチルケトンは、接着剤や塗料に含まれる成分でした。 とんでもなく少ないTVOCなので安心してお客様にご説明くださいと言われて一安心でした。
TVOCが低かった理由として考えられること
・床(杉無垢フローリング無塗装)、壁(ラウファーザー素地)、天井(杉羽板無塗装・ラウファーザー素地)と全てが自然素材
・内装の仕上げ材が無塗装
・気密性能が0.05㎠/㎡で漏気回数が0.25回と高気密な建物のなっており、24時間換気(ゼンダー)の換気が計画通りに機能している
上記の様な事が考えられるかと思います。
まとめ
人は1日あたり20㎏の空気を吸っていると言われており、体重あたりの空気の吸引量は、子供は大人の2倍となり空気質はとても重要となります。どんな快適な超高性能な建物を建てても“令和のシックハウス”と言われてしまっては元も子もありません。
パッシブハウスの様な厳しい基準をクリアした建物は計画換気が機能していたとしてVOCが発生していないとは限りません。
”建材選びは空気選び”
と考えても良いのではないでしょうか?
自分たちが建てている建物のTVOCがどのくらい出ているか、又どの成分が何から発生しているのか知ることは大事な事で一度「エアみる法」を使って空気の見える化してみませんか?
ご興味がわきましたら、中国・四国支部合同勉強会2025に是非ともご参加ください!
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