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【ニュースレター 2024年6月号コラム】 HVAC KOREA 2024とSAREKフォーラム参加のご報告

2024.06.18

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森みわ

パッシブハウス・ジャパン代表理事

HVAC KOREA 2024とSAREKフォーラム参加のご報告

m&m’s韓国へ飛ぶ

この度、韓国の空調学会(SAREK)よりご招待を受けまして、2泊3日で私とPHJの三原正義理事のm&m’sコンビでソウルに渡航して参りました。

主催者からは、私ともう一人、日本からパッシブハウスの施工のベテランを招きたいという打診があり、設備フォーラムということで迷わず三原理事に白羽の矢が立ちました。三原理事のパスポート申請も間に合い、当初2名で渡航の予定でしたが、直前に私がぎっくり腰をやった関係で、片言の韓国語を話すキーアーキテクツの角田も急遽お世話係として同行となり、おかげで現地での移動や隙間時間での食事の段取りも任せることが出来ました。

例年よりも気温が高いとのことでしたが、この週のソウルでは日中は26度まで上がり、夜は16度くらいまで下がりました。ソウル市の緯度は福島よりも低いのですが、寒冷地の夏を思わせるような気候でした。

SAREKは年に一度開催される建築設備の展示会HVAC KOREAと同時期にフォーラムを開催しており、今回はパッシブハウス・ジャパンを交えた日韓交流イベントを企画してくださいました。

HVAC KOREA 2024ですが、5月22日~24日の3日間の開催で、幕張メッセよりも少しこじんまりしたサイズの展示場に、換気空調設備のみならず、給排水、消火栓などの機械設備のブースがひしめき合います。大手メーカーのブースは少なく、新規参入の若いメーカーがビジネス・マッチングの機会として出展している印象を受けました。

意外にもヒートポンプ技術に関するブースは一つもありませんでした。伝統的にオンドルと呼ばれる床暖房が普及している韓国では、未だにガス床暖房の人気が根強く、給湯もガスが一般的なようです。エアコン暖房が主流で大手ヒートポンプメーカーが大きな影響力を持っている日本市場とは状況が異なるということでしょうか。

今回はやはり換気空調設備のところをしっかり見てきましたが、まだまだ3種換気が一般的な印象が少し残念だったのですが、3種換気といっても様々なメーカーがデザインや操作方法を工夫しており、脱衣室用にバックライト付きの鏡の中にタッチパネルがあるようなモデルまで。パキッと白くて薄くてシャープな製品が多かったのが羨ましかったですね。日本だとクリーム色でボテッとした形のスイッチやコントロールパネルばかりなので(笑)。

縁の下の力持ち達・・

そして換気ではなく、省エネというテーマのブースに、水洗いできる全熱交換素子を単品で販売するメーカーを見つけました。

こちらは素子1台からサイズオーダー出来るという事で、「これが手に入れば自分たちのドリーム換気装置作れるじゃない?」とm&m’sの夢は広がります。

熱交換効率も年々向上しているようで、既に日本の換気空調メーカーとの取引も始まっているとのことでした。個人的にはマンション・リノベなどの際に壁厚に収まってしまうような薄型で、70㎥/h程度の熱交換換気が使いたくて、日本ではまだなかなか手に入らないので、自作したい気持ちが沸々と・・・

もう一つ気になった、すごく地味な製品として、温水床暖房の効率を22%向上させるという薄い銅板のパンチングパネル。

追分の家で試験採用している土壁暖房は、7mm角メッシュのファイバーを伏せ込んでいるのですが、その代わりにこんなものを伏せ込んだらものすごく放熱効率が良さそうです。

塗り壁にここまで強固なものは必要無いのかもしれませんが、このように換気や空調システムの全体効率に寄与する地味なパーツの技術革新無くして、社会全体の省エネ化というものは語ることが出来ません。

オンドルの文化が根強い韓国市場ならではかもしれませんが、このような小さなイノベーションが、出来るだけ多くの人とマッチングし、ビジネスに繋がっていくことが、社会の変化のために重要だと感じます。

ZEBの普及状況に日韓の差が?!

5月23日の午後に開催されたSAREKのフォーラムですが、
冒頭、韓国国交省グリーンビルディング課のからご挨拶
→韓国パッシブハウス協会の方のプレゼンテーション
→私の講演
→パネルディスカッション
となりました。パネルディスカッションには三原理事にも参加して頂き、通訳を交えて会場の皆さんと技術的なお話をして頂きました。

今回私は、日本におけるZEBとパッシブハウスのための設備技術に関するプレゼンテーションを先方から要望されていましたので、渡航前に日本におけるZEH/ZEBの普及状況について調べてみたのですが、なんと、ZEHに関しては2022年で市場の22%、ZEBに関しては2022年でたったの0.7%の達成率ということで、唖然としてしまいました。しかも、ここで言うところのZEHやZEBは、Nearly-○○〇や○○〇-Ready,○○〇- Orientedといった、なんちゃっても含まれた総数であるため、我が国が真のゼロエネ建築の普及には程遠い現状であることが判ります(国の評価方法でZEHやZEBをクリアした建築を、本当にゼロエネと呼ぶかはまた別の議論になるので今日は深堀しないでおきます)。

一方で、韓国では2025年にも一般の集合住宅へのZEB等級5の義務化、公共建築はZEB等級4で義務化というお話が国交省の方からあり、やはり進んでいる!という印象を受けた訳ですが、あとで詳しく聞いてみると、ZEB等級1で完全にゼロエネルギー達成という事なので、やはり日本と同様、Nearly ZEBやZEB Ready, ZEB Orientedといった、なんちゃってZEBを含めたZEBファミリーの総称なのだなと(笑)。 それでもNearly-○○〇を2年後に義務化するとしたら、日本より断然政策として進んでいますね。

ちなみに、ソウルは北海道並みに寒い冬と、東京並みに蒸し暑い夏を合わせ持った、省エネ化の難易度が非常に高く、私達から見るととても可哀そうな都市なのですが、そこに韓国の総人口の2割が集中しているという状況で、住宅といえばよっぽどの郊外で無い限り、20階建て程度の規模の集合住宅で、住宅政策の主な対象となっています。

今回フォーラムの後に会食に参加頂いた、換気空調学会の元会長のHikiさん(写真左、修士課程では太陽エネルギーを専攻され、東工大に留学されていたそう)や、老舗の換気メーカーの社長さんも、どんな住宅に住んでいるのか伺ってみたところ、皆さん口をそろえて「マンション」と仰り、ソウル郊外に別途、庭付きの戸建て住宅を持っている訳でもありませんでした。「ソウル市内のマンションが高額すぎて、セカンドハウスなんて到底所有出来ない」と苦笑いしながら答えてくれました。

ということで、ソウル市内にはとてつもない数の集合住宅が建っており、これからは古いものの断熱改修のニーズが多いことを見越し、集合住宅の既存の窓に取り付けられる熱交換換気装置などが今回の展示会でも幾つか見られました。省エネ化のための外断熱の施工に関しては、20~30階建てのマンションも多く、耐火の問題が議論されているとの事です。また、中国の住宅のようにガスコンロを使った中華料理の習慣が無いためか、IHコンロは比較的普及している様子でしたが、高気密化に伴い必要不可欠となる、同時給排型のレンジフードは市場に存在せず、室内循環型のタイプも認知されていないようでした。

今回の渡航は韓国のパッシブハウスの団体からの紹介ではありましたが、フォーラム自体は通常の換気空調学会主催であったため、逆に韓国の一般的な建築の仕様を初めて理解することが出来た貴重な機会となりました。今期からSAREKの会長をつとめられるSongさんからは、今後も日韓で情報交換を続けたいとの意向を頂きました。日本の省エネ化は世界から見れば随分と周回遅れですが、もしかしたら私たちのこれまでの経験値が今後韓国の皆さんの役に立つことがあるかもしれませんね。

さて、来月7月3日は沖縄にて、台湾のパッシブハウスメンバーを交えてのフォーラムをPHJ九州支部主催で開催いたします。オーストラリアとニュージーランドのパッシブハウス推進メンバーとの定例ミーティングも先月より参加することにしています。コロナが明けたタイミングで、少しずつ近隣諸国との連携も復活させていきたいと思う今日この頃です。

フォーラムに参加された皆さんとの集合写真
三原さんの左側が前SAREK会長Choiさん、森の右側が今期からのSAREK会長Songさん。