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ニュースレター 2023年12月号コラム ~4年ぶりに環境視察ツアーに参加して思ったこと~

2023.12.20

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高岡文紀

有限会社アーキテクト工房 Pure 代表取締役
PHJ理事
四国支部リーダー

4年ぶりに環境視察ツアーに参加して思ったこと

コロナ化も落ち着いたのか慣れてきたのか円安なのか外国からの観光客の方が日本にも沢山来られていますね。
おかげで東京の宿泊施設料金は( ゚Д゚)する金額になっていますね・・・・

さて、円安のさなかですが某輸入建材業者さんの企画する環境視察ツアーに参加してきました。
PHJの賛助会員さんは私を含めて4名参加されており仲間がいてちょっと一安心。ツアー参加費は物価高と円安とが重なってビックリするような金額でした( ;∀;)

視察先はドイツ・オーストリア・スイスの3ヶ国

2019年12月にオーストリアウィーン東部に建築されていたCLT24階地上84mの『HOHO』他を視察に行って4年ぶりのヨーロッパです。

CLT24階建て『HOHO』も建物の性能はPassiveHouseと普通に言われたのに驚いた記憶があります。
そこから欧州がどんなふうに変わっているか楽しみに今回参加させて頂きました。

今回はPassiveHouseを見て回るツアーではないので実際にPassiveHouseに出会えるかどうかもわかりませんでしたが
少しだけツアーの内容をご紹介いたします。

最初の視察先はドイツでウッドファイバーを造っている断熱材メーカーの事務所

ウッドファイバーを造っている会社は世界で3社しかないと説明を受けました。
日本でも数年前までは製造されていたのですが残念なことに現在は製造しておりません・・・

事務所建築は木造4階建てで担当者の方よりウッドファイバーを使っての建物の防火構造について説明を受けました。日本とは法律が違いますので外壁の延焼ラインなどは全く無いようで窓は全て木製トリプルアルミクラッドサッシ。断熱材は付加断熱共にウッドファイバー担当者が設計をしているスライドの中に見慣れたマークがあり。

何方かが質問をすると、認定はとっていないが建物は‟PassiveHouse” と返事が返ってきました。
当然のように建物の説明の中にはエネルギー削減や持続可能な建物であるとの説明も有り。

‟1本の木を切ったら2本植える”

と持続可能な環境の話も出ていました。
こんなカッコイイ事言ってみたいですね!!

プリンツ・オイゲンパーク(木造建築を使用した環境モデル集落)

ミュンヘン東部にある旧プリンツ・オイゲン兵舎。
ミュンヘン市が都市開発のために国から買い取った軍事区域のうちの 1 つ。

都市計画で取り組まなければならない中心課題は
・環境とエネルギーを大切に利用
・エコロジーな定住地を構築すること
木造建築を使用した環境モデル集落として建設という事で

最大7階建ての建物はハイブリット木造建築から純木造建築まで様々な工法を用いて木材をふんだんに使った建物が建っています。

説明をして頂いた設計士さんが言っていた言葉がとても印象的で
木造建築は ‟成長する資源” とまで言われていました。

住居空間一平方メートルに対して何キログラムの木材が使われているかという事で3段階に分かれているようで、最低割合が一平方メートルあたり50㎏との事です。最大一平方メートル280㎏の木材が使われた建物もあるそうです。

私は一平方メートル当たり何㎏使われているかといわれてもなじみが無いので使っている量が何㎏と言われてもピンときませんがこれからは知っておく必要がありそうですね!! 

そしてここに建築されている建物の性能はミュンヘン州都の最低基準からPassiveHouse基準まで建っているそうです。室内は見学できませんでしたけど外壁はどの建物も板張りで施工されていました。あたりまえでしょうが日本よく使われているサイディングボードは全くありません。

‟成長する資源”見習わなくてはいけませんね。

ホルガー・ケーニッヒ氏の講演を聞いて

『欧州及びドイツにおいての建築環境政策の最新動向』というタイトルでホルガー・ケーニッヒ氏の講演を聞きました。

未来に通じる建築として環境と健康を分けて考えないといけない。
環境⇒再生・原料・成長する材料
健康⇒快適性・湿度・音・臭い
健康は利己主義でも良いが環境はグローバルに大きな空間で考えなくてはならないと言われていました。

Von der Wiege bis zur Bahre:揺り籠から墓場まで
「この世に生まれてから去るまで、社会全体で面倒をみましょう」という社会保障制度

Von der Herstellung bis zur Beseitigung:生産から廃棄まで
エコ収支の計算を行い建材製品の循環が大事で木造建築は炭素の中間貯蔵庫であると言われるように欧州では特に木材利用は‟成長する資源”としてライフサイクルを考慮した建物計画が大事だと言う事でした。

ヘルマン・カウフマン氏の建築視察

場所をドイツからオーストリアへ移動して建築家ヘルマン・カウフマン氏の案内で

・ザンクトゲロルド村の歴史的修道院施設の改修現場
・ヴァンダンス村の電力会社ビル
・ゲツィス村の社会福祉的な木造集合住宅

上記の3個所を案内して頂きました。
ザンクトゲロルド村の歴史的修道院施設に向かう途中2010年にパッシブハウス・ジャパンのツアーで見たことのある建物が見えてきました。

2010
2023年

私がパッシブハウス・ジャパンの賛助会員になって最初に参加したツアーだったこともあり今でも鮮明に覚えている建物でした。
小さな村役場の施設で同じ建物の中に幼稚園も入っていました。
室内は床・壁・天井全てモミの木かトウヒが使われとても綺麗に納まっていました。

思わず代表理事の森さんにメッセンジャーで‟ここに来てます“と連絡を入れてしまいました(笑)

修道院は1000年前の納屋だった場所を宿泊施設に改修。
使われた素材は粘土と木(トネリコ・モミの木)で1000年前の木材も表し仕上げでとても美しくまとめられていました。

カウフマンさんの話では‟解体の事を考えて接着していない”と言われていました。
断熱材も含めて100%自然素材で改修されているのは素晴らしいですね(^^♪

ヴァンダンス村の電力会社ビル(水力発電)

会社はお休みだったのですが日本から視察に来ると言う事でわざわざ秘書の方が会社を開けていたようです。
湖畔に突き出る様に建っている建物は木造4階建、工場でプレハブ化されたパネルを現地で組立6週間で建て方が出来たとのこと。
水力発電会社の事務所で使っているエネルギーは当然100%自然エネルギーで
余った排熱は地域暖房として供給しているとのこと。

カウフマンさんが‟木は人に近い建材”と言う言葉がとても印象的でした。
パッシブハウス・ジャパンのメンバーですと紹介して頂くとカウフマンさんが
‟この建物PassiveHouseだよ”と答えて頂きました。

ドイツとオーストリアそしてスイス(ミネルギー)の建物を視察し感じたこと

13年前に同じ建物をしさせさせて頂きその後何回かドイツ・オーストリアのPassiveHouseを視察せていただきました。
視察するたびに性能だけではなく使用されている素材など環境の事や持続可能な社会の事など日本はいかに遅れているかを気付かされます。

昨今の資材高騰で高くなるからとか、売れないからとか、いろいろと言い訳を付けて

‟成長する資源”からますます遠ざかって行くのではないかと思われます

住宅ローンは35年~50年と長期にわたり支払いされていくのに建物の資産価値は20数年で資産価値の無い建物となり住宅ローンだけが残っていく。

又、住宅ローンを借りる為に生命保険(団信)にまで入って命がけでお金を借りて住宅を建てるのですから100年150年とメンテナンスが出来、使い続けられる資材を使ってPassiveHouseの様な高性能な建物であるべきではないでしょうか!!