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ニュースレター 2023年6月号コラム~パッシブハウスをとりまく環境の変化~

2023.06.21

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竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事

パッシブハウスをとりまく環境の変化

先日、エネルギーまちづくり社で設計させていただいた福知山パッシブハウスが認定を受けました。これで私自身が関わるのは真鶴パッシブハウスに次いで、2軒目になります。山形エコハウスはそこまで届かなったものの、20kWh/㎡程度、2010年、真鶴パッシブハウスが2018年、福知山パッシブハウスが2023年となります。この何年かで行った様々な変化を考えながら、コラムにしていきたいと思います。

まず、社会的にもパッシブハウスが作りやすい時代になったと強く感じます。

現在、建材などの価格高騰があり、どう作るのかが問われていますが、全ての住宅が高断熱、高気密化する大きな流れは変わらないと思われます。
2025年に建築基準法で等級4(全然十分じゃないですが)の温熱性能の義務化、
2030年までの早い時期での等級5(ZEH基準)の義務化、

そして、
最近では国土交通省も等級6の義務化は当然の流れと発言していたりしますので、結構具体的に、2030年あたりでの等級6までの義務化も視野に入ってきました。

実際、関東以西では付加断熱なし、サッシも樹脂ペア程度で等級6が作れますので、先進的な工務店の取り組む対象としては、パッシブハウスも当然視野に入ってきます。国の制度の等級は、ただの断熱材の量を規定しているだけで、日射取得、気密、換気扇のあり方などのこれだけで大きく性能が変わるファクターを考慮していないので、いたずらに等級を上げることを目指すのではなく、パッシブハウス(15kWh/㎡)やローエナジービル(30kWh/㎡)を目指すのが賢い選択だと思います。

燃費ナビで温熱計算をした時に、通常やっているレベルと共にパッシブハウス基準を目指すようにするといいと思います。実感としては、関東以西でG2って、等級6くらい、これではまだ家のトータルのエネルギー量は減りません。もしあるなら、G2.5が40kWh/㎡くらい、家のトータルのエネルギー量が減る感じになってきます。それこそ、等級7を目指すより、燃費ナビで15kWh/㎡を目指す方が、バランスがいい気がします。

次に、サッシの性能の向上、特にガラスの透過率が高く、日射取得を得やすいが、断熱性能に優れたサンゴバンのガラスの採用など、ガラスの性能向上が著しく、この点を考えると年間暖房負荷15kWh/㎡のハードルが下がってきているように思います。まだ、実現していませんが、YKKあたりが、APW430などにこのガラスを入れたりすれば、価格的にもこなれてくることも予想できます。また、寒冷地での厨房用換気扇を循環型(IHでのコンロになります)にすることで、換気による熱損失が抑えられ、より暖房負荷を減らせる方向に動いていると考えられます。一方、夏の冷房負荷を抑えることに関しては、窓の大きさのコントロールが重要になります。

ハード面では色々な材料や工法が出てきて作りやすくなっている状況です。

ソフト面では、リセールするときも価値の落ちない家のレベルが問われます。時代に応じて、その基準はどんどん上がっていますから、中途半端な「等級6などの将来の義務化レベル」では、希少価値はなく、やはりパッシブハウス級の性能が求められます。クライアントからの要請で価値の落ちない財産が欲しいということで、認定を取りたいという具体的なお願いがあることも事実です。

こういう状況の中で、これから求められるのは誰もが手に入れられるパッシブハウスだと思います。

それは価格のことなのか、持ち家かアパートかという所有の形態を含めた議論です。パッシブハウスはそれを建てる人の、価値の下がらない財産であり、仕様をあまり凝らなくても高くなりがちです。どう建てれば、こなれた価格になるか試行錯誤が必要でしょう。また、持ち家でなければならないという固定概念も捨てるべきだと思います。高性能賃貸の可能性を探っても良いように思います。また、全体の家の価格は上がりますが、賃貸併用住宅を建てるという可能性もあります。住宅の建設費を家賃で回収しようという試みです。さて、ハードルはずいぶん下がっている今、どんどん認定レベルを目指して頑張るべきだと思います。

筆者が現在試したいのは、DIYとのコラボの可能性です。いつも悩みの種は、ビニルクロスです。できるだけ、石油由来のものを使わず、ペンキよりも安く仕上げたいとすると、クライアントに参加してもらって、価格を下げつつ、いいクオリティーのものを探るべきだと思うのです。

これから、日本の住宅産業は職人の不足という大きな課題があります。そういう中では、さまざまな工夫が求められていると思います。