森みわ
パッシブハウス・ジャパン代表理事
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年間3000棟のパッシブハウスを夢見て・・・
新年あけましておめでとうございます。
日本の豪雪地や寒冷地の皆様も、温かいお正月を迎えられたことを願っております。
そして世界の誰一人として、飢えや寒さで苦しむことの無い社会となることを祈っております。
今年のPHJ年賀状募金ですが、メルマガ購読者数6170人x100円で、昨年同様NPO法人キッズドアに寄付させて頂きました。建設業界でも今年から年賀状送付を廃止した事業者様も多いように見受けられますが、事業規模によってはかなりの資源とコストの節約になっている訳で、是非その浮いた経費を、社会を良くする目的で使って頂ければと、誠に勝手ながら願っております。
さて、昨今は住宅における断熱気密の重要性がテレビコマーシャルでもうたわれるようになり、HEAT20のG2やG3レベルを標準仕様とする地場工務店さんも増えて参りました。昨年計画中だった軽井沢町のパッシブハウスが、なんと長野県の信州健康ゼロエネ住宅の先導モデルの外皮性能Ua値0.20W/m2Kを切れないという想定外の展開にもなっている中、パッシブハウス・ジャパンは今後何を目指していくのか?というお問い合わせまで耳に入るようになりました。
実はパッシブハウス・ジャパンの当初の事業計画によりますと、2030年までに年間3000棟のパッシブハウスを輩出するという密かな野望がございました。実際には皆さんご存じの通り、なかなか苦戦してはおりますが、例えばPHJのサポートメンバー250社が毎年12棟のパッシブハウスをプロデュースすれば、この目標はクリアできるのです!
何故G2~G3の間のどこかに落ち着くであろうパッシブハウスを増やしたいのか?それはパッシブハウスの当初からのポリシーである、パフォーマンス・ギャップの無い省エネ建築設計の重要性を伝え続ける使命があるからに他なりません。これまでセミナー等でしつこいほどお話して参りましたが、Ua値という基準は、建物の魔法瓶性能に他ならず、快適性の尺度としては優れていますが、窓の方角等の影響は加味されないため、省エネ性能の尺度としては片手落ちです(ZEHの問題はまた後日書きます)。また、外皮の性能が上がれば上がるほど、ヒートブリッジのケアが必須となりますが、Ua値にはそれが反映されていません。換気によるエネルギー効率の評価についても、非常に曖昧と言わざるを得ません。Ua値が唯一の省エネの物差しになってしまうと、真面目に取り組んだビルダーですら「同じG3なのに随分と省エネ性能が違う」というようなクレームを付けられる可能性があり、また不真面目なビルダーによる「G3詐欺」の被害者も増殖してしまうでしょう。
省エネ住宅を望み、それに対して大きな投資をした人が、真の省エネ住宅を手に入れられる市場を作ることが、非営利型社団法人であるパッシブハウス・ジャパンの使命であるからこそ、パッシブハウスだけでなく、省エネ性能をアピールしている物件に対して、実測値が設計段階での計算値を裏切らないことを検証していくワーキンググループの立ち上げの重要性を強く感じました。そこでパッシブハウス・ジャパンでは、一昨年の夏以降より「PHJエコハウスアワード 実測部門」を立ち上げ、実際のエネルギー消費量および居室と脱衣室の温湿度のモニタリングに着手、昨年11月のPHJ全国大会2022では、実測データから得られた実際の温湿度環境をPHPPの計算に反映し、両者のエネルギー消費量を比較するという試みを行っています。今後も実測の物件数を増やし、得られた実測データをPHPPによる設計値と比較分析するという試みに力を入れていく方針です。これによって、パッシブハウスのパフォーマンス・ギャップの少なさが立証され、もっと多くの実務者が、クライアントに対して自信をもってパッシブハウスというメソッドの魅力を伝えられるようになればと思っています。
最後になりますが、昨年10月より、テレビ東京の「ガイアの夜明け」という番組の制作チームが私の奮闘する日々に密着して下さいました。放送は1月13日(金)の10時からとなります。一体どのような仕上がりになっているのか、想像するだけでも恐ろしいのですが(笑)、宜しければご視聴ください。パッシブハウスの認知度向上のため、そして年間3000棟の実現のため、今回のTV露出で少しでも貢献できれば幸いです。