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ニュースレター 2022年10月号コラム

2022.10.25

竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事

太陽光発電の必要性

今後、太陽光発電の必要性が増してくると思いますので、その点について話してみたいと思います。

1)燃料費の高騰

ロシアのウクライナ侵攻により、現在様々な燃料のコストが高騰しています。特に石炭。日本の主力電源の燃料です。基本料金の他に、再エネ賦課金と燃料調整費が加えられたものが電力料金です。直前3ヶ月の燃料輸入費の平均値で算出されますが、東電などの大赤字を受け、政府はこの燃料調整費のキャップ(それ以上上がらないようにする制限)を外すことを決定しました。そうしないと電力会社が潰れてしまうからです。転嫁される先は一般市民で、冬に向けて電力料金が高騰する(爆上がりする)ことが予想されています。こうなると固定価格買取制度での金額よりも自家消費の金額がものすごく高くなるので、余剰電力として売るよりも自家消費したほうがお得になると考えられます。自家消費分を全て太陽光発電で賄えれば、パネルの減価償却分を除いて、電気代は実質タダになります。このベネフィットが今度太陽光発電をつけるモチベーションになります。

2)脱炭素への道 2030年46%削減のために

今年の4月から、京都府市が「再生可能エネルギー導入説明義務化」を条例で決めました。その後、東京都が大手メーカー(200戸以上建設)に対して、適地である85%に2kWのパネルを載せる(普通はパネルを載せる時は5kW程度載せるで、規制の厳ししさは実質85%x2kW/5kW=34%程度と言い換えることができます。)この条例案、アンチの反対にあったのですが、若者が一生懸命パブコメを出した結果、56%が賛成、おそらく条例案は可決されるでしょう。また、川崎市がついでこの条例を参考に義務化の条例案を作っています。

温暖化対策の切り札などはありませんが、2030年にある程度の結果を出すのに、太陽光発電の義務化が必要と思われます。2050年脱炭素を前提とすると、30年もつ家はすでに全てを脱炭素している必要があります。このように社会の変化が著しいので、きちんとフォローするようにしましょう。また、断熱化に反対したハウスメーカーも太陽光発電の準備は確実に行なっており、太陽光発電の導入を標準化しつつあります。工務店や設計事務所も導入を検討するべきだと思います。

3)新技術の導入

〈スマートメーターの設置〉

現在、2024年100%設置を目的にスマートメーターの設置が進められています。スマートメーターは通信機能を持つ電気メーター。デジタルに計測し、その使用状態がモニタリングできるようになります。30分おきの電力消費が記録されるので、これを利用しながら様々な活用ができると考えられています。たとえば、デマンドコントロール。発電所の限界はピークで決まりますが、このピークコントロールにデータが役立てられます。今後、そのスマートメーターとHEMSが連携し、より電化された状態がコントロールしやすい状況になっていくのは容易に想像がつきます。

〈電気自動車との連携〉

電気自動車の普及に伴い、電気自動車自体を蓄電池のように使うことで自家消費率を上げることができます。電気自動車の燃費を電費というのですが、km/kWh と1kWhで何キロは走るかがで示します。
(電費の詳しい説明はこちら。https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/energy-efficiency/
電費のいい車はこの文章でも紹介されているテスラSR3+とのことことで、その電費は6.4km/kWhとなっています。これって今の電気代がどのくらい、クルマの使用状況によっても変わるのですが、電気がkWh50円、ガソリンが1ℓあたり150円を超えることを考えると、ガソリン車に比べて、電気自動車は約3倍走れることになるので、19.2km/ ガソリン1ℓあたりと同等です。電気自動車自体の燃費性能はガソリン車に劣らないと言えましょう。もし、自宅の上に乗っている太陽光発電で発電したものなら、ほぼタダでずーっと走っていることができているというふうに言えるので、お得感はどんどん増します。

〈おひさまエコキュート〉

今後、自宅の電気をどう自家消費するかという点において、蓄電池の利用があげられますが、まだ、蓄電池は高いです。その前にやるべきは昼間の余った電気を使ってヒートポンプでお湯を沸かす「おひさまエコキュート」の活用です。原発がある時代はエコキュートは安い深夜電力を使ってお湯を沸かすのがメリットだったのですが、今は自分で発電した昼間の電気を使うことで自家消費率を増やすことが目的となります。

このように色々な技術が相まって、太陽光発電周り技術は日進月歩しています。電気自動車の導入も含めて考えてみても良いかもしれません。

さいごに

さて、いろいろ書いてきましたが、これらを検討するからといって、パッシブハウスの最も大事な断熱性能の確保を損なっては意味がありません。パッシブハウスの性能が上がることは、住まい手の快適性がいかに向上するかということなので、それを損なってしまっては本末転倒です。太陽光発電をいっぱい載せて電気をいくら作っても、快適じゃない家に住みたくないのは当然です。太陽光の導入には第3者所有のPPAやリースなどの方法もいろいろあり、自己負担なく導入することもできます。でも私は安く確実につける自己所有モデルの方でいいように思います。太陽光電池のコストは家のコストと考えるのではなく「電気代の前払い」と考え、別のお財布で払うべきとするのが良いです。そのためには当初から予算にいれず、ほぼ決まってからそのコストとオンするかどうかをクライアントに聞く方法が良いのではないと思っています。