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ニュースレター 2022年5月号コラム

2022.05.16

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度ニュースレターを発行しております。

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森みわ

パッシブハウス・ジャパン代表理事

一生賃貸宣言の撤廃のお知らせ

2年ぶりに自粛要請の無いGWでしたが、皆さん少しは息抜き出来ましたでしょうか? 4日には岸田総理がノーマスクでローマ教皇と面会している様子が報道されましたね。そのままノーマスクを日本に持ち帰って頂けると幸いですが。さて、今月のメルマガは「信濃追分の家」についてのお話です。

誰もが賃貸で快適に省エネに暮らすことが出来、ローコストの新築戸建て住宅の需要は無くなり、結果として次世代に住み継がれる高性能な家だけが建てられる、そんな社会の実現を目指して生きて参りましたが、どうも私は大家さんに恵まれない星の元に生まれたようで(笑)、やむなく自分が最終的に大家になるべく、これまで以上に真面目に働くことを決意いたしました・・・。

ということで先日、「信濃追分の家(仮称)」がパッシブハウス仕様にて着工いたしました。
感慨深いのは、自分が施主となって設計を進めた結果、その外皮仕様に一番近いのは、なんと2009年の鎌倉パッシブハウスなんですね。ウッドファイバーの断熱材や、アルミクラッド木製サッシ、当時は構造体だった2x6材は、今回140mm厚の付加断熱下地となりました。日頃何となく予算との葛藤の中で諦めてしまっているものたちが、結局諦めきれません(涙)。

信濃追分の家の設備コンセプト

そしてそこに、近年のキーアーキテクツ設備仕様が加わり、パッシブハウスならではの外皮性能の強さを生かした、再生可能エネルギーとのマッチングを試みています。寒冷地であっても暖房需要は極限まで減っているため、給湯をサポートするペレットストーブが今回もお目見えします。また大の蓄電池嫌い、車嫌いの私が遂に田舎暮らしのためにEVを購入したことで、モビリティが住宅のエネルギーコンセプトに組み込まれました。

安田陽先生の言うところの“セクターカップリング”ですね。

結果的に、災害が起きても恐らく上水さえ止まらなければ不自由なく暮らすことが出来る試算です。
ですが電力会社とは契約することにいたしました。エネルギー事業者を置き去りにしてしまうと、省エネ運動において対立構造になってしまうというのがファイスト博士の意見だったからです(プロパンガスは契約しませんが、木質ペレットを売ってと頼み続けます)。

ですから「オフグリッド」ではなく、「ちょいグリッド」とでも呼びましょうか。

農作物に例えれば、自家消費できない程沢山採れてしまった作物は、保存食として貯蔵するか、隣人に配る、もしくは地域で流通させますよね。地産地消のエネルギーも同様に上手に融通して、無駄なく利用できれば、これぞ本物の暮らしの安全であり、地域の安全保障であり、戦争に加担しないための道しるべでは無いでしょうか?

さて、今回は個人で住宅ローンを組んだ都合上、年内にはひとまず長野県民になります。そのため、長野県佐久地域振興局の方からは「パッシブハウス・ジャパンが長野に移転するのですね!」と喜んで頂きましたが、PHJ事務局は当面鎌倉におります(笑)。先日阿部知事からも、是非実務者向けの施工見学会やセミナーの開催をお願いしますと言って頂きましたので、施工会社さんとも相談しながら、タイミングを見て企画をしていきたいと思います。

ここで紹介しきれない実験的な要素も幾つか盛り込まれておりますので、無事に完成するのかハラハラドキドキではありますが、このプロジェクトを通じて、私たちのこれからの暮らし方について、多くの方と意見交換できる機会となれば幸いです。