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ニュースレター 2020年6月号コラム

2020.06.10

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三原 正義

パッシブハウス・ジャパン理事(2024年4月 理事に就任)
エコモ株式会社 代表取締役  

札幌にて独立後、群馬へ移転し住宅設備会社を経営。鎌倉パッシブハウス以降たくさんのパッシブハウス案件の換気設計・施工を多く行う換気のスペシャリスト。

「令和の今になっても、住宅建築家の不勉強ぶりは改善されていない」

つい最近の話です。一般の方がプロの建築家に質問できるサイトで

「高気密高断熱でも家の向きはやはり南が良いのですか?」

という質問があがりました。それに対して、建築家10名程度が答えるのですが、犯罪に近いレベルの回答、思わず吹き出しそうな珍回答が自信満々で語られていました。下記に例をあげます。

  • 高気密・高断熱はいいことばかりではありませんし、そことのバランスになると思います。
  • 高気密高断熱が大流行ですが、大事なのは日本は大部分がアジアモンスーン地域であるということと、家の中に住むのは生きた人間で、新陳代謝で老廃棄物を出すし、ゲップもオナラもするということです。高気密の中で住む人間が、どんどん汚れたものを出すのです。高温多湿の環境で、金魚鉢の中でハツカネズミを飼ったらどうのようになって行くか、どんな臭いがするか、これも想像すれば簡単にわかることです。

これに類することがわんさか書き込まれます。これらに共通することは

  • 勉強してない人ほど自信満々で書いてある。
  • 根拠がない
  • 他分野の一般論をすり替えの比喩として使う
  • 感覚と思い込みが全て

という傾向があるように感じます。このような雰囲気は20年から30年前はむしろ建築、住宅業界では主流でした。しかし、ここ10年くらいの間にPHJも新住協もかなり認知されるようになりました。前先生、岩前先生、YKKAP、一条工務店、新建ハウジング、、、あげればキリがないですが、そういった影響力のあるところが高断熱の重要性を日本中で叫び続けてきました。その結果、ほんの少しでも情報収集の努力をしているのであれば、むしろ高断熱化の話が聞こえないはずがないのです。にもかかわらずこのようなコメントがバンバン出てくるのは、ちょっとした専門誌の定期購読費すら払えないほど困窮している。もしくは、情報が入っても「俺の考えが一番正しい」と決めているから新しい情報を全く受け付けない状況となっているのどちらかだと思います。このようにならないためには、常に「自分は間違っているかもしれない」という感覚を忘れないこと

それにプラスして「計算できる項目は計算、シミュレーションして確かめる」癖をつけること。まずはこの2つが基本になると思います。その分野を朝から晩まで専門的に研究している人たちが「正しい」という結論に至っていることよりも、何も勉強していない「俺」のほうが正しいと思い込める能力は私には持ちえませんが、そういう能力を持った方が多いのがまだまだ現実であるということを痛感させられた次第です。