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ニュースレター 2020年5月号コラム

2020.05.10

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竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事

「デザインPHの可能性」

私が先日参加した、森理事によるDesignPH(デザインピーエイチ, PHI監修によるSketchUpの拡張ツール)のオンラインセミナーの報告です。DesignPHはSketchUpでモデルを作った後、その各面に熱貫流率を入れ、窓などのコンポーネントをはめていくだけで、そのモデルの年間暖房需要などの数字が出せるツールです。SketchUpは安価な3Dソフトで、現在はGoogle傘下となり、無償版もあることから広く使われています。平面に四角形を描いて、その四角形を文字通り、押したり引っ張ったりして、立体を作っていきます。そして、ある部分を引っ張ったりすることでヴォリーム自体を変形できます。

建物のアウトラインと窓の位置が判る平面図と立面図があれば、DesignPH用のモデルをSketchUpで簡単に作成できます。

建築の形を再現する場合、例えば屋根の面に沿って比較的簡単にひさしが出せたりします。 そして、その出来上がったヴォリームの各面に熱貫流率の属性を入れ、y軸が北の方位となるようにボリュームを回転するとすぐに、年間暖房需要や、各窓の日射取得量を計算してくれるのです。何が優れているかというと、直感で動かせるところと言えると思います。つまり、デザインを変えたら、その場ですぐにその状態の性能が分かるわけです。今まで使ってきた建もの燃費ナビは主に木造住宅のために作られ、その利便性は高いですが、非住宅の場合やもう少しデザインを凝り、違うことをやろうとするとなかなか上手く使いこなせない部分がありました(住宅に特化しているソフトなのだから、当然といえば当然です)。そういう場合、DesignPHのほうが上手く対応できる気がします。

南西を向いた窓からの眺め。隣家と日照の関係が月毎、時間毎に視覚化されるため、設計の早い段階でデザインの修正を行う事が可能となる。

一般のSketchUpのパースは、壁や屋根、窓にテクスチュアを貼り付けて作りますが、このテクスチャアに当たる部分が、熱貫流率などの外皮の温熱の性能を表す属性になるのです。 また、実際やってみて特に簡単だなと思ったのは、屋根や床、壁といった外皮の外側のシングルラインの入力だけで良いことです。DesignPHには壁の厚みは関係ないので、外形だけトレースすれば良いということ。一方、室内の床面積は今までどおりです。パッシブハウス認定と同じルールなので部屋の内寸を測る必要があります。これは別に出しておく必要がありますがそれほど手間ではないですよね。

SketchUpの機能を使い、このように地形をメッシュ状に再現すると、DesignPHは日射取得量を自動計算します。

文字で書くとややこしいかもしれません。でも、作業自体は簡単です。建築は図面を引いて、それをコピーした紙を貼り合わせて、模型を作り、温熱計算を別でして、、、と、図面を書いたり貼ったりの周りをやたら行ったり来たりしますが、これだと3Dで形を作り、そのまま計算、そしてプレゼンとひと繋がりになります。実際、世界で建築模型をリアルに作っているのは日本ぐらいで、その模型を作る時間や材料、手間の余裕がないところで3Dソフトが発達したと言われています。 私自身は模型を作るのが好きだったので、いくら寝ていなくても自動的に作れるというブラックな学生時代を過ごしてきたせいで苦にはなりませんが(笑)、模型を作らなくても3Dを見ること、感じることができれば、それに越したことはありません。落とし穴はスケール感の把握がしにくいということだと思いますが、SketchUpには膨大な無料の点景のアーカイブ(もちろん無料)があります。これを利用して、いつも知っている家具や自動車など置くことで、スケールずれという落とし穴にも落ちにくくなります。 これからの時代は住宅だけではなく、非住宅のパッシブハウス化が大きなテーマになってきます。一足先にその世界を見るために、DesignPHを導入されるのが良いと思います。もちろん、住宅設計にも向いています。ひさしを出したり、袖壁を出したり、そういうことが四角形をつくるだけで、計算できるのです。かなりお得で速いと感じています。