森 みわ

キーアーキテクツ株式会社 代表取締役
パッシブハウスジャパン代表理事

東京都出身
横浜国立大学工学部
Stuttgart大学建築・都市計画学部
ドイツ・バーデンヴュルテンベルク州公認建築士

パッシブハウスコンサルタント(Certified Passive House Designer by PHI)
パッシブハウス認定者(Accredited Passive House Certifier by PHI)
国連環境計画(UNEP)日本法人理事

ドイツ・アイルランドの建築事務所での省エネ施設やパッシブハウ スの設計プロジェクトに携わり、2009年3月に帰国。同年8月に完成の鎌倉パッシブハウス、著書「世界基準の「いい家」を建てる」で、日本建築業界に彗星のごとく現れ、設計事務所・工務店等の地域の実務者、研究者にに大きな衝撃と影響を与え、建物の省エネ化への多くの疑問を計量的に解き明かしてくれた。
ヨーロッパ気候で培われたパッシブハウスという省エネ基準をもとに、湿気・地震・シロアリ対策など、日本風土に適応したパッシブハウスの確立を推進してきた功績は大きい。伝統的な日本家屋の持つ良さと今の時代に合ったエネルギー効率のいい家の融合に真摯に取り組む柔軟な思考も魅力の一つ。

「省エネ運動は貧困撲滅運動であり、反戦運動でもある。地球上の人々が幸福でいられますように願う」この言葉に感銘を受け、環境問題は人権問題であること、建築を通じて「だれも置き去りにされない社会の実現」をめざそうという大きな目標に共感する仲間が、森みわ氏のサポーターであり、PHJという強固な集団を形成している。

PHJでは、代表理事として実務者の啓蒙・教育、一般の方への情報発信など、持続可能な社会をめざし日々奮闘している。

理事挨拶

~ドイツ人から教わった、【prioritize】というワーク~

気候変動によって地球上で4億人が難民化するという試算が、近年の国連のIPCCレポートでも報告されています。これを自分事と捉えるには、全校生徒1000人の学校で、50人が路上生活者になるような状態を想像してみてください。

パッシブハウス・ジャパン設立から12年の歳月が経ちましたが、環境問題は人権問題であることを、PHJ設立当時から念仏のごとく唱えて参りました。誰も置き去りにされない社会の実現のために、建築部門の徹底的な省エネはもう待った無しの様相となっており、施主・施工者・設計者は一丸となってこれに取り組む必要があります。
私が20代の頃のドイツ滞在を通じて体得させてもらったの事の中で、恐らく一番価値があったのは、目的がブレなければ、乗り越えるべき課題は明らかにしやすいということ。かけられる時間は有限だという感覚と、ブレない目的意識があれば、今何を一番優先するべきかがおのずと見えてくるということを、現地の多くの方が実践で示してくれたことだったと感じています。
まさに常に自分の行動のプライオリティを見極めながら行動する、【prioritize】というワークが自分の中に芽生えたきっかけでした。

~「コスパ」の「パ」こそ、あなたの価値観~

さて、製造過程での環境負荷も少なく、私たちをより健康にしてくれる食材や調理方法が編み出されても、従来品との価格差により、コスパの悪い料理と批判されることがあります。なぜこのようなことが起きるのでしょうか?
その理由はおそらく、コスパの「パ」に含まれるもの、すなわち皆さんが製品やサービスに求めているパフォーマンス、それが皆さんの価値観そのものだからです。
例えばファーストフードチェーンのハンバーガーセットをコスパ最大と考える人は、最小限のコストで最大限のカロリーを得られるという事を言っているかもしれませんし、近所にあるミシュラン星付きのレストランの料理こそが最高のコスパだと考える人もいる訳です。
家づくりに関しても、コスパの「パ」の中身は極めて主観的であり、それが皆さんの価値観そのものと言えます。ですから是非皆さんが家づくりにおいて大切だと思うパフォーマンスを整理し、それを守り抜く努力をしてください。勿論、優先順位を付けなければいけないこともあるかもしれません。
そんな時は、皆さんが守りたいパフォーマンスの半分を、自分と家族の身の安全と資産を守るための「エゴ」に、もう半分を地球の裏側の人々の命や次世代の未来を守るための「エコ」に振り分けた上で、それぞれで優先順位を付けて頂けないでしょうか?

気候変動は、もはや取り返しのつかないステージへと突入し、私達の努力が果たして報われるのかどうか、残念ながら判らなくなってきています。それでも私達には他の選択肢などありません。皆さん一人一人の行動力と、情報発信力がもたらす変化を、信じたいと思います。

インタビュー

関連リンク

著書