竹内 昌義

『みかんぐみ』共同代表
パッシブハウスジャパン理事

1962年神奈川県生まれ。建築家。
東京工業大学工学部建築学科卒業
東京工業大学大学院理工学専攻科建築学専攻修士課程修了
東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科助教授
専門は建築デザインとエネルギー

環境省、経産省、国交省合同の「脱炭素社会における住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」にも召集される建築業界のご意見番的な存在でもある。
山形エコハウス(山形県が事業主体、環境省の21世紀環境共生型モデル住宅整備事業の一つとして選定)をきっかけに、環境・エネルギーに配慮した住宅を設計、紫波町オガールタウンの監修などを手がけ、保育園などの非住宅の高性能化にも積極的で、非住宅部門や環境・エネルギーに配慮したまちづくりへの先駆的な試みは、 PHJ会員への刺激となり、社会へそして行政への反響につながることが期待される。

多彩な実績、多くの著書による発信力の高さ、ウィットにとんだ柔軟な思考で、PHJ理事として渉外を担当する。

理事挨拶

脱炭素社会というとむずかしく考えてしまうかもしれませんが、住宅、建築においては今ある技術を使って容易に実現できるもの。それにはパッシブハウスの断熱性能や再生可能エネルギーの技術が必要不可欠になります。日本のエネルギーの3分の1は住宅、建築部門で消費され、エネルギー転換も決して上手くいっていません。日本人特有の性格なのか、切羽詰まらないとなかなか変化を起こす行動が取れません。
ロシアによるウクライナ危機や、震災時に明らかになった電力系統の脆弱さから、日本のエネルギー問題は危機的な状況だと言っても過言ではないでしょう。特に今年の冬の夜間、暖房ピークの時間に停電の可能性があります。もし、日本の住宅が全てパッシブハウスになっていたら、住宅内で消費するエネルギーを大幅に減らすことができ、夜のピークも無いに等しいでしょう。また、太陽光パネルは年々、価格を下げリーズナブルになってきました。6kW程度の太陽光発電を家電とクルマに使えるのであれば、それでカーボンニュートラルとすることができます。

さて、次の課題は、住宅のストックの問題です。現状6000万戸と言われている世帯に対して、どう住まいを高断熱化していくことが、これからの日本の大きな課題です。また、議論が及んでいないのは公共建築物です。ゼロエネルギービルを実現する技術はさほど難しいものではありませんが、残念ながらなかなか普及していないのが現状です。断熱工事だけであればほぼ全ての工程は地元の工務店が取り扱える技術です。特に大きなゼネコンなどは必要ありません。また、再生可能エネルギーの普及に関しては、多くの消費者が屋根載せの太陽光発電に抵抗があるようですが、日本の将来の脱炭素化を視野に入れた際、太陽光発電無しに実現できるはずがありません。勿論、屋根の耐久性の観点から、きちんと漏水を防ぐことができているかどうか、技術的な判断することが求められています。

2030年度までに現行のCO2排出量を46%に削減することに照らし合わせれば、このペースで省エネルギー + 再生可能エネルギー = 0 としていてはとても間に合いません。もっと急ピッチに、もっと本格的に進めることが必須であり、パッシブハウス級の建築物を大量に増やすなど、有効な手立てを考える必要があります。私自身もまだ、それほど多く作れてはいませんが、私たちと一緒に作っていきましょう。

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