TOP > お知らせ > 【ニュースレター 2025年10月号コラム】統計からみる建設業の人的実情

【ニュースレター 2025年10月号コラム】統計からみる建設業の人的実情

2025.10.31

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度ニュースレターを発行しております。理事のコラムを先に読むことができる他、セミナー開催等のお知らせは主にニュースレターで発信しております。購読ご希望の方は、ページ下部のフォームよりご登録ください。

三原 正義

パッシブハウス・ジャパン理事(2024年4月 理事に就任)
エコモ株式会社 代表取締役  

札幌にて独立後、群馬へ移転し住宅設備会社を経営。鎌倉パッシブハウス以降たくさんのパッシブハウス案件の換気設計・施工を多く行う換気のスペシャリスト。

統計からみる建設業の人的実情

深刻な建築不況です。

統計によると25年9月期の倒産件数において、前年同月比で17.41%増と高い数字となっている建設業です。報道によればマンション等の成約率も70%を大きく割り込み50%台と低調のご様子。令和の建設不況真っ只中という状況です。そんな中、倒産理由として材料費や人件費の高騰など様々な事情の中から、人手不足や後継者不足などの人的事情に関係するデーターを統計からざっくり集めてみました。

建設業の人的実情

2024年統計によれば建設業就労者数は約477万人で産業全体の7%という数字になります。
(2005年は568万人)
内、技能職が占める割合は303万人。技術職・営業職・事務職・管理職がそれぞれ39万人・23万人・86万人・17万人その他が9万人。

建設業就労者数職種別2024年統計2005年統計
技能職303万人393万人
技術職39万人32万人
営業職23万人34万人
事務職86万人80万人
管理職17万人27万人
その他9万人2万人
累計約477万人
(産業全体の7%)
568万人

2005年と比べると技能職が393万人。技術職・営業職・事務職・管理職が32万人・34万人・80万人・27万人・その他が2万人。

2005年と比べ477万人-568万人=▲91万人
技能職303万人-393万人=▲90万人
単純に建設業従事者の減数分は技能職の減数分となる。

年齢階層別では、ざっくり15~49歳、50歳以上で分けてみます。

建設業就労者数年齢別2024年2005年
15~49歳233万人326万人
50歳以上243万人243万人

2005年では326万人・243万人。2024年は233万人・243万人となり、
なんと50歳以下の人数をすべて足しても50歳以上に届かず、半数以上が50歳以上となります。

内60歳以上は123万人全体の約26%(2005年は85万人全体の約15%)と大幅に上昇しており、逆に働き盛りの30~49歳の層では238万人から177万人に大幅に減少しています。

建設業就労者数年齢別 その22024年2005年
30~49歳177万人238万人
60歳以上123万人(約26%)85万人(約15%)

また55歳以上が全体の37%を占め、29歳以下はわずか12%で他産業に比べ、著しく高齢化が進んでいると総括されています。

賃金の話

全産業男性の年間賃金総支給額は5,908千円、
建設業男性は5,884千円、
建設業生産労働者男性は4,819千円です。

労働時間の話

(調査対象30人以上常用労働者のいる事業所2024年)
全産業:1714時間/年
建設業:1943時間/年

年間休日数の最低ラインは105日とされていますが、2024年の土日祝日数(土日重複日を除く)118日盆暮れ正月休み無しで118日のみ休んだと仮定して、247日×8時間=1976時間。(乱暴な計算ですが)上記建設業1943時間≒1976時間

出勤日数では(調査対象5人以上の常用労働者のいる事業所)
全産業:212日 
建設業:238日

もうね、建設業をデーターから見ると労働時間が長く、休日も少なく、賃金も安く、倒産リスクも高い。こんな業種を若い人選びます?

先日、現場で珍しく若い兄弟の電気屋さんと一緒になって、ちょっと話を聞きました。

兄弟二人で電気設備業をやっている。法人化はしていない。労災、損保、健保は話を濁していたから加入は怪しい感じ。年金は払っていない。理由は『僕らの年では年金なんて貰えないでしょ。』単価が安くて、仕事用の車も買い替えできない。最近のハイエースなんて中古でも絶対無理とのこと。

仕事は丁寧で、掃除もしっかり、挨拶等々感じもよく。若いのになかなか良い感じに思われましたが、上記の話しを聞くと、いつ廃業してもおかしく無いなと思ってしまいます。建設業の中核をなす世代が健全な経営と生活が出来る方向に早くなってほしい。しなくてはならない。と感じます。

注:兄弟には労災、損保、健保、年金に関しては社会ルールに従うよう、適切にアドバイスしておきました。

僕もね、贅沢は言いません。月に2日程度の休日と日に6時間の睡眠時間が欲しいだけなんです。社会の常識に従って。…違うか⁈(笑)

日本国初の女性総理も誕生したのでもう一つ

建設業の女性就業者数は2005年81万人で2024年は87万人で増加しております。

先日某現場で女性職人と楽しくお話し。そこでの会話ですが、現場仕事は嫌いじゃないんだけど、仮設トイレだけがどうしても我慢できないとのこと。たしかに男の僕でも、仮設トイレは汚いなーと思うことが多いです。『現場の仮設トイレは立ちション禁止。使用後は必ず掃除でも良いくらい。あと水洗も義務化してほしい。』女性職人からの貴重なご意見でした。PHJにおいても女性の活躍が目覚ましい昨今ですので工務店の皆様、御一考のほどよろしくお願い致します。余談ですが新幹線や飛行機のトイレも男女別でもいいのでは?と思っています。

あと僕世代の男子諸君、トイレでは『一歩前に』『終わった後も直ぐにはしまうな』を徹底しましょう。理由はわかるでしょ。(笑)

データー参考:
総務省「労働力調査」・厚生労働省「雇用動向調査」「賃金構造基本統計調査」「毎月勤労統計調査」
国土交通省「公共工事設計労務単価」