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【ニュースレター 2025年1月号コラム】2025年新春雑感

2025.01.17

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竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事
『みかんぐみ』共同代表

2025年新春雑感

新年最初のメール配信ですので、少し大きな時代の話について書いてみようと思います。

みなさん、VUCA社会という言葉、ご存知ですか。
GOOGLEで尋ねるとこういう答えが返ってきます。

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、変化が激しく、先行きが見えにくく、複雑で、曖昧である状況を意味します。
アメリカで1990年代に軍事用語として生み出され、国家間の戦略がより複雑化している状況を表す言葉でした。2010年代から激しく変化する世界情勢を指す言葉としてビジネスの分野でも利用されるようになり、現代の社会やビジネスを考えるうえで重要な概念として注目を集めています。
VUCAの時代には、次のようなスキルや能力が求められます。情報収集力、問題解決力、意思決定力、コミュニケーション力、 臨機応変な対応力。
VUCAの時代にビジネスを成功に導くには、予測しづらい状況のなかでも最適な意思決定を行うことが不可欠です。そのため、普段から市場動向や消費者の動きにアンテナを張り、シミュレーションを繰り返しておくことが大切です。

とAI っぽい答え。

現代はまさにそういう時代といえます。
こういう時代に臨機応変に対応していくのに邪魔になるのはなんだと思いますか。
高齢化し、臆病になった日本の最大の特徴としてあるのは「変化したくない」病 と「ここまでは変わらない」病だと思っています。

テレビで政治を見ると本当におじいさんばかり。VUCA社会においては年功序列ではうまくいかないのです。今までの経験ではうまくいかないということなんです。私もそれなりにいい歳になってますが、年功序列で考えないことがとても大事だと思っています。

変化が進んでいる現在

 例えば、今年4月から断熱義務化が始まります。2020年の義務化が延びに延びて、今年の実施になりますが、同時に東京都ではある程度の規模の会社の住宅には太陽光発電の義務化が始まります。また、川崎市も同様に義務化されていきます。また、国土交通省主導の「再生可能エネルギー促進地域」が、東京都5区(葛飾、港、大田、渋谷、杉並)と横浜市全域で実施されます。どうやら、この流れは他の区も続いていくようです。これは高さ制限などの緩和の他に、設計事務所がクライアントに「再生可能エネルギーのメリット」を説明しなくてはならなくなります。

 また、全然別の流れもあります。義務化のときにはグズグズ反対していたハウスメーカーは海外での業績が伸び、そこで闘うための武器として、より高い性能の建物を建て始めました。その流れに乗って、国のGX戦略の一部として、断熱強化型住宅を視野に入れた補助金、断熱性能とともに再生可能エネルギーを入れる必要がある「超省エネ住宅」(←一体何のことかわからないネーミング)の補助金が制定されていたりします。義務化がどうの、とか言っていることが嘘のように、景色が変わってしまっています。

 少し、視点を変えれば、アメリカの大統領にトランプが返り咲きます。それを応援していたイーロンマスク。Twitterを買収し、Xにトランプの右腕として活躍しています。テスラという会社のCEOですが、再生可能エネルギーの可能性をまとめた「第4の革命」では、意欲的な若者として映っていた頃から、隔世の感があります。また、スーモの記事にまとめられたタイニーハウスの記事がおもしろいです。これらの小屋は真空断熱材が使われていたりして、プリンタで作る家とは全く違った、ミニマルな家のあり方を教えてくれます。富裕層が考える家のあり方がミニマルな方向に向かっていてとてもおもしろいです。
『量産型”折りたたむ家”は10坪で約580万円!イーロン・マスクも住むと話題の最新プレハブ住宅』SUUMOジャーナル

引用元:ユナイテッドピープル『第4の革命 予告編  2011年』

書籍をご紹介します

『15分都市 人にやさしいコンパクトな街を求めて』(カルロス モレノ 柏書房)
『2050年再エネ9割の未来 脱炭素達成のシナリオと科学的根拠』(安田陽/ストラスクライド大学アカデミックビジター/発行所:山と溪谷社

です。

まずは、『15分都市 人にやさしいコンパクトな街を求めて』から。

15分都市という概念は、以前にもご紹介したとおり、パリで実践されており、イタルゴ市長のもと、強力に進められており、その論理的な位置付けの本です。でも、著書のモレノさんは都市計画家というよりは、複雑系の研究者やイノベーションプロセスの専門家として位置付けられ、それを市長が公約にして進めたという印象です。

『パリ、2030年までにヨーロッパで最も緑な都市へ転換』タイムアウト東京

ジェインジェイコブスの「アメリカ大都市の死と生」などの流れから、都市が本来はどうあるべきか、コロナ禍、DX化の推進を受けての、無駄な移動をしなくても都市の魅力が作れるという本です。読者の方は、工務店や設計者といった都市の中の一ピースを作ることが仕事のメインかと思いますが、まちや都市がどうあるべきか考えることで、設計する家の考え方にも影響があるはずです。

次に、『2050年再エネ9割の未来 脱炭素達成のシナリオと科学的根拠』

一般の人に2050年の世界のエネルギーは90%が再生可能エネルギーになるというと、そんなはずはないと言われてしまいそうですが、読者の皆さんはどう考えますか。

あと、25年経つと本当にそうなっているでしょうか。25年前に振り返ると2000年。初代プリウスが売られ始めたのが1997年であると考えると、その圧倒的な社会の変化もあり得ると考えられるのではないでしょうか。過去の日本でも、鉄道の電化の歴史などを振り返ると圧倒的な速さで時代が変化していく事例もあります。東海道線全線が電化されたのはいつだかご存知ですか。戦後も戦後、なんと1956年なのです。(戦時中は、つばめなる列車がC62の蒸気機関車が引っ張っていた絵は見たことあるかたが多いと思います。)なんと、その8年後、1964年に新幹線が開通します。かなりの急ピッチの変化です。高度経済成長だからそのくらい変わって当然だと考える方も多いかもしれません。世界は同じようなピッチ、あるいはそれ以上早いピッチで変化し続けています。温暖化対策のための再生可能エネルギーの導入の速さは目を見張るものがあります。ヨーロッパはほぼ全地域で40%をこえ、コペンハーゲンなどは2030年にカーボンニュートラル達成を具体的な目標と掲げて、実行し続けています。

昨年の夏の暑さは温暖化の深刻さを表しているとすると、日本社会もようやく変化の軌道に舵を切るのではないかと思われます。安田さんが、日本のエネルギー基本計画のダメさ加減をグラフにしてくださっているので、ここに添付しておきます。

さて、日本は本当にダメか

さて、日本は本当にダメかというとそうでもないと思っています。お正月大河ドラマの後に放送されていた「ジャポニズム」の漫画やアニメに対しての放送は少し勇気をもらいました。大河ドラマの番宣っぽくもあるのですが、日本的な考えやプロダクトが評価されるのは嬉しいものです。
新ジャポニズム 第1集MANGA わたしを解き放つ物語 – NHKスペシャル – NHK

PHJの会員の方は、グローバルなビジネスというより、地域に根ざして活動されているかとは思いますが、社会の変化はやはり世界的な規模で進んでいると思うので、ユニクロの柳井さん(好き嫌いは分かれそうですが、)の番組を紹介しておきます。いつの時代もそうですが、金融や政治で経済はつくられるのではなく、価値があるもので作ることが大事だと思います。そのコンテンツとして、パッシブハウスを作るということは現実的な一つの目標として存在しています。

引用元:TOKYO MX 報道局 公式YouTubeチャンネル【ゲスト:柳井正】寺島実郎の世界を知る力対談篇〜時代との対話〜#24(2023年3月26日放送)

柳井さんは動画の中で、やらない人は常にやらない理由を考えるということをおっしゃっていますが、本当にそうだと思います。記事に引用が多く、なかなか進まないよというご意見もあろうかと思いますが、最後に矢沢永吉の定番のYouTubeの動画がありますので、添付しておきます。

引用元:YouTubeチャンネル「言葉は人生を変える」

いつの時代も「やるやつはやるし、やらないやつは何をしてもやらない」という内容です。みなさまにおかれましては、ぜひ「やるやつ」になっていただけますよう、良い一年を過ごされることを祈念して最初の配信とさせていただきます。

下記の引用は、文中に使用したものをまとめてあります。ぜひお施主様とのトークのネタにお使いください。

竹内昌義


◯記事『量産型”折りたたむ家”は10坪で約580万円!イーロン・マスクも住むと話題の最新プレハブ住宅』
https://suumo.jp/journal/2022/03/17/185902/
引用元:SUUMOジャーナル

◯動画『第4の革命 予告編  2011年』
http://www.youtube.com/watch?v=XdaHWgptfts
引用元:ユナイテッドピープル

◯書籍『15分都市 人にやさしいコンパクトな街を求めて』カルロス モレノ 柏書房

◯記事『パリ、2030年までにヨーロッパで最も緑な都市へ転換』
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/paris-green-sustainable-city-plan-081921
引用元:タイムアウト東京

◯書籍『2050年再エネ9割の未来 脱炭素達成のシナリオと科学的根拠』安田陽(やすだ・よう)ストラスクライド大学アカデミックビジター発行所 山と溪谷社

◯TV 新ジャポニズム 第1集MANGA わたしを解き放つ物語 – NHKスペシャル – NHK

◯動画『ゲスト:柳井正】寺島実郎の世界を知る力対談篇〜時代との対話〜#24(2023年3月26日放送)』
http://www.youtube.com/watch?v=56nY419CRz8&t=331s
引用元:TOKYO MX 報道局 公式YouTubeチャンネル
24分ごろだけでも「やらない人はできない言い訳を考える、、、」という柳井さんの発言

◯動画『今も昔も、やるやつはやる!やらないやつはやらない!矢沢永吉 名言』
http://www.youtube.com/watch?v=xUbOo-6fkK0
引用元:YouTubeチャンネル「言葉は人生を変える」