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ニュースレター 2020年10月号コラム

2020.10.09

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竹内  昌義

パッシブハウス・ジャパン理事
『みかんぐみ』共同代表

「白馬高校断熱ワークショップをとおして考えたこと」

パッシブハウス・ジャパン理事  竹内  昌義

9月19、20、21日と白馬高校で高校生や応援する地域の人、工務店と一緒に、3階の一つの教室を断熱改修のワークショップをした。もともと白馬高校の高校生は気候変動に敏感で、彼らが気候マーチをしたことをきっかけに、白馬村は長野県に先んじて、気候緊急宣言をした。その高校生が私のレクチャーを長野市まで聞きに来てくれ、このワークショップをやろうということになった。とても、熱心なのである。

一方、長野県も気候緊急宣言をして、実際にアクションを起こすことが求められている。ただ、二酸化炭素を減らしましょうと言っているだけではない。県が宣言したのち、長野県の77ある市町村もこぞって賛同した。白馬以外は特に大きなビジョンがあるわけでもなく、ここで乗っておかないと不利と考えたのだろう。あるいは、何らかの補助金などもらえる可能性があると考えたのかもしれない。その委員会に出席してみてわかるのは、法律を超える制限を簡単に条例化できるわけでもないということだ。一方で、県民運動として、少しでもダッシュを切りたいのである。

断熱の内容を振り返ろう。

  1. 天井の化粧プラスターボードを一部外し、そこから200mmの袋入りのグラスウールを詰める。
  2. 窓の内側にアクリル板(シングル)で作られる内窓を設置。
  3. 窓の下の袖壁はネオマフォームt50 で設置したあと、シナベニヤで仕上げる。
  4. 廊下側の建具もシングルガラスをポリカーボネイド複層板に変更。
    (これはガラス屋さんに作ってもらった)

である。断熱の性能自体は、大したことはないのであるが、それでも施工後は体感温度が変わる。何せそれまでが全くの無断熱である。その差は大きい。

私たちの社会は、一部の家の高性能化は進んでいるが、公共建築はほとんど何の対策もしてこなかった。学校というのはもっとも大切な建物なのに、もっともお金をかけられていない。加えて、気候緊急宣言を有効にし、実行するには建物のカーボンニュートラル化が必須である。

新築の公共建築はカーボンニュートラル化すべきであるが、予算高騰を理由に実現せず、低炭素化社会への舵は切られようとしていない。このままでは、本当に時間切れになってしまう。もっとも大事なのは、社会全体の意識の変化である。竹槍を持って、戦いに臨んでいるかのような感覚すらあるが、少しずつ社会を変えていきたいと思う。

このワークショップが終わって、一緒に活動していたスノーボーダーが長野市の中学校でレクチャーをしたときに、長野市の中学生が「私たちの学校も冬は寒いので、白馬高校みたいに断熱改修してほしい」と意見を言ってきたそうだ。そういうことが一番次の期待に繋がる。

これをここだけの話ではなく、社会を動かす一つのきっかけにしていきたい。