パッシブハウスジャパンニュースレター 079号 2015年11月9日発行
▽持続可能で快適な暮らしの実現に向けて、知識と技術を探求いたします
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パッシブハウスジャパンニュースレター 079号 2015年11月9日発行
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みなさま、こんにちは。
一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
http://www.passivehouse-japan.org
メールマガジン第79号です。
私たちは、
世界中のパッシブハウス推進団体とリアルタイムで情報を共有しながら
日本国内における健康で快適なこれからの省エネ住宅作りを推進しています。
本メールマガジンでは、海外の建築最新事情や、実践的な技術解説、
パッシブハウス・ジャパンが開催する各種セミナー・イベント情報を
お伝えいたします。
持続可能な社会の実現のために、エネルギーに依存しないゆとりある暮らしを
みなさんと共に考えていきたいと思います。
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□Contents□
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1)【パッシブハウスジャパンからのお知らせ】
2)【アメリカのDERs(Deep Energy Retrofits) ってなんだ?|代表理事 森みわ】
3)【本間教授と電磁波対策の土田さんから新たに得た知見|理事 松尾和也】
4)【REFRESH!】仕事のヒント!ニュースや、本、イベントをご紹介
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1)【パッシブハウスジャパンからのお知らせ】
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1.【11/13-11/15 「国際パッシブハウス・オープンデー2015」開催いたします。】
いよいよ今週末となりました「国際パッシブハウス・オープンデー2015」。
2015年11月13日(金)、14日(土)、15日(日)の3日間、国内のパッシブハウスやその
基準にに比類する性能値を誇る家が見学会を行うイベントが開催されます。
実際に生活しているパッシブハウスを体感でき、オーナーの声を直接聞ける貴重な
イベントです。ぜひ、この機会に快適な省エネ基準を体感してみませんか?
『国際パッシブハウス・オープンデー2015』
日 程 :2015年11月13日(金)、14日(土)、15日(日)
会 場 :全国のパッシブハウス、
または所定の性能値をクリアしているパッシブハウスクラスの建物
参加費用:無料
※各会場により見学可能日時が異なります。鎌倉PHは定員超えのため受付を中止しております。
http://c.bme.jp/13/1506/311/4505 (PHJ)
参考:
世界のパッシブハウスデータベース(ドイツ語/英語)
http://c.bme.jp/13/1506/312/4505 (Passive House Database)
2.【11月27-28日|第19回省エネ建築診断士セミナー in 紫波町】
今月末は岩手県紫波町での省エネ建築診断士セミナーです!
席数に限りがありますので、お早めのお申込みをお待ちしております。
◯開催日:
11月27日(金) 9:30~17:00
省エネ建築診断士セミナー
11月28日(土) 9:30~17:00
午前:筆記試験 午後:建もの燃費ナビ実践セミナー&実施演習試験
◯開催場所:紫波町情報交流館 大スタジオ
岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前二丁目3番地3
http://studio.town.shiwa.iwate.jp/ (紫波町情報交流館 大スタジオ)
◯講師:森みわ/松尾和也/夏見諭(燃費ナビアドバイザー)
◯受講料:一般32,000円(認定試験・登録料)
*2日目の燃費ナビ講習のみの受講は20,000円
☆賛助会員は上記費用の半額で受講できます☆
1日目の筆記試験だけでなく、2日目の実技試験に合格された方は、
“省エネ建築診断士エキスパート”のIDカードを発行させていただきます。
○申込み方法
PHJ予約システムより申し込みお願いします。
http://c.bme.jp/13/1506/313/4505 (PHJ予約システム)
3.【第5回勉強会 11月19日「建もの燃費ナビ技術勉強会」|関東支部】
パッシブハウス・ジャパン関東支部では、第5回を今年の締めくくりとして、言葉やイメー
ジだけでない真の省エネ住宅を提案することができる「建物燃費ナビ」をテーマにしま
す。建物にも自動車と同じように燃費があり、建物燃費ナビを使えば真の省エネ住宅を
設計段階で検証し、視覚的にアピールすることができます。今年の建物燃費ナビ勉強会
ではソフトの使い方を一から指導する入門セミナーではなく実務で使っている方をお招
きして燃費ナビアドバイザーの夏見氏を中心に座談会 + 説明会の形式で開催します。
『第5回 関東支部勉強会「建もの燃費ナビ技術勉強会」』
日時:11月19日(木)
12時30分~16時30分(開場 12時15分)
会場:東京ビッグサイト 702会議室(江東区有明3-11-1)
会費:賛助会員:無料 / 省エネ建築診断士 2,000 円 <締切11月16日>
詳細・お申し込み用紙はこちら
http://c.bme.jp/13/1506/321/4505 (PDFダウンロード)
4.【富山県黒部市に「前沢パッシブハウス」誕生!パッシブハウスデーで見学できます】
日本の北陸地方は太平洋側と比べて冬季の日射が極端に少ないことから、窓からの日射
取得を積極的に行う省エネ住宅モデルはこれまであまり普及してきませんでした。しか
しそれは窓の性能が不十分だった時代の話。高性能な国産サッシの登場によって、室内
からの熱ロスを大幅に削減しつつ、外からの日射を積極的に取り込むパッシブデザイン
が可能となりました。前沢パッシブハウスは豪雪地域でも太陽と風に素直に設計し、
断熱気密性能を担保する事で、夏も冬も省エネで快適な暮らしが実現することを沢山の
方々に知ってもらいたいという施主の思いで実現しました。11月9日に竣工したばかり
の物件を国際パッシブハウスデーで見学できます。当日は設計したキーアーキテクツと
施工したカネタ建設さんが現場にいます!
<前沢パッシブハウスのオープン予定>
2015/11/14(土)13:00-15:00 / 15:00-17:00
最寄駅:北陸新幹線「黒部宇奈月温泉駅」タクシーで10分 所在地:富山県黒部市
見学のお申し込みはコチラ
http://c.bme.jp/13/1506/315/4505 (PHJ申し込みフォーム)
5.【2016年3月4日|パッシブハウス・ジャパン6周年総会です】
パッシブハウス・ジャパン6周年総会は<2016年3月4日(金)>となります。
詳細、お申し込みはまだ先となりますが、手帳へのご記入をお願いいたします。
日時: 2016年3月4日(金)
場所: アジュール竹芝 14階天平の間(東京都港区海岸1丁目11-2)
6.【省エネ建築診断士セミナー団体申し込み割引のご案内】
PHJでは定期に行われている省エネ建築診断士セミナーでの団体割引プランを
ご用意しております。20名以上で一括お申し込みの場合は、通常参加費の割引を
行っております。全社で省エネ建築診断士取得を目指される企業様、団体様などは
お気軽に事務局までお問い合わせください。
ご相談お待ちしております、お気軽にお問い合わせください。
http://c.bme.jp/13/1506/316/4505 (PHJ)
7.【パッシブハウス・ジャパンは賛助会員を募集しています!!】
パッシブハウス・ジャパンでは、賛助会員を募集しております。
工務店、設計者、メーカー、あるいは個人など各種会員枠を設けており、
当会の理念にご賛同いただける方に幅広くご参加いただけるようにしております。
本年は支部の体制を新たに整えて、全国の皆様とより良い知識を共有するための
プラットフォームを再構築いたしました。会員だけの勉強会やネットワークへの
参加、推奨建材の斡旋サービスもご利用いただけます。
ぜひ、この機会にPHJの賛助会員として一緒に活動いたしましょう!
一緒に最先端の知識を学び、いい家造りをしましょう!
http://c.bme.jp/13/1506/317/4505 (PHJ)
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2)アメリカのDERs(Deep Energy Retrofits) ってなんだ?(代表理事 森みわ)
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鎌倉も紅葉して参りました。もうすっかり秋ですね。
我が家では日曜日に煙突掃除をしまして、遂に薪ストーブシーズンがスタートです。
さて、今年最後から2番目のPHJメルマガの投稿は、私の嫌いなアメリカ合衆国のお話です(笑)。
アメリカの住宅って、ヨーロッパのそれと比べるとエネルギーダダ漏れのイメージ、
ありますよね?失礼ですが、アメリカって国内のエネルギーが不足したら、中東で戦争
を仕掛けて油田を占拠するだけなんじゃないかって、思っている方意外と多いですよね。
実はアメリカでは2009年の時点で、年間の総エネルギー消費量の22%が住宅部門であっ
たことを受け、国や州レベルで住宅の省エネ化に向けて法規制を進めています。そして
アメリカの州の中で一番取り組みが進んでいるのがカリフォルニア州だそうで、2020年
までには既存建物の25%に関して、2008年のレベルから70%のエネルギー削減を達成
しようとしています。
今日の投稿のタイトルのDERs (Deep Energy Retrofits)とは、アメリカの打ち
立てる省エネ政策のカッティング・エッジと呼ばれており、既存建築の省エネ改修に
よって、エネルギー消費量をなんと70%以上削減しようという試みなのです。10~20%
程度の削減であれば、特に難しいことでは無いと言われてきましたが、“ディープ“と
いうだけあって、気合が違います。そこで始めて専門家の間でもパッシブハウスという
キーワードが浮かぶことに。
http://c.bme.jp/13/1506/318/4505
上記のリンクは、アメリカ合衆国の環境省の発注により2012年にBerkeley National Laboratory ( http://c.bme.jp/13/1506/319/4505 )から発表されたケーススタディレポートで、
カリフォルニア州の11の省エネ改修事例に関する報告及び分析となっております。
レポートは321ページに渡りますが、最後に要約がありますので、一部を私の和訳で
紹介させて頂きます。
(前略)パッシブハウス基準で求められるような高い気密性能や断熱性能は、我々の
ような温暖な気候ゾーンで既存建物のエネルギー消費量を半減させる目的のためには
不必要であるとこれまで考えられてきた。しかしながら、パッシブハウス的アプローチ
は居住者の自由な生活スタイルを守りつつも、冷暖房エネルギーを大幅に減少させる
ためには非常に有効であることが証明された。比較的温暖な気候であっても、断熱性能
や気密性能によって、空調エネルギーを削減する事が出来る一方、機械設備に頼った
省エネ住宅モデルというものは、往々にして不必要に複雑であり、上手く機能しない事
もあり、余計にコストがかかるだけでなく、程々の省エネ性能しか発揮しない場合が
ある。オリジナルの設備コンセプトの類も問題が多く、ことに太陽熱と暖房を組み合わ
せた温水システムもわずかな効果しか発揮していないように見受けられる。このレポー
ト作成の目的は、今後DERsを推進していくための助言となることであるが、既存の
建築物の改修によって、70%以上のエネルギー削減効果を求めるDERsにおいては、
充填断熱を脱却した(付加断熱)仕様や漏気回数3.0回(C値で言えば1.5相当)以下の
気密性能、そして最高スペックの窓、熱交換換気装置や省エネ設備、更に最低でも2kWの
再生可能エネルギーの搭載が必要である。(下略)
如何でしょう、アメリカの本気度、皆さんに伝わりましたでしょうか?
がんばれ属国ニッポン!?
最後に・・・。
PHJ事務局@鎌倉では、今週末に迫った国際パッシブハウスデーのポスター&チラシの
発送を終え、物件見学申し込みを頂いた皆様へ現地案内図等を送信する作業を開始いた
しました。私自身は今年は前沢パッシブハウスにおりますので、まだどこを見に行くか
迷っている方は是非北陸新幹線でお越しください。施工工務店の協力により、黒部宇奈
月温泉駅からシャトルバスを準備しておりますので、足の無い方でもご参加頂けます!
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3)本間教授と電磁波対策の土田さんから新たに得た知見 (理事 松尾和也)
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この一週間の間に宮城学院女子大学の本間義規教授と住宅の電磁波対策の第一人者で
あるレジナの土田さんのお二人に会うことが出来ました。本間教授とは2回目でしたが、
じっくり話が出来たのは今回が初めてでした。一方土田さんとは10年来のお付き合いに
なります。
まず本間先生との講演で興味深かったのは1階と2階の場合、2階の外壁の方が内部結露
するリスクが高いということでした。理由は極めて明快です。水蒸気分圧の観点では冬
は内から外に水蒸気が移動しようとすることは基本なので、皆さんご存知かと思います。
それにプラスして温度差による空気の動きがあります。いわゆる重力換気というもので
すが、これは換気口に限らず、外壁全体にも影響しているとのことでした。分かりやす
く言うと1階は外から内へと動こうとする力、2階は内から外へと動こうとする力が強い
ということです。
この2つの力を足して考えると面白いことがわかります。2階はいずれも同じ方向なので
内部結露が出やすい方向に働きますが、1階に関しては打ち消し合う方向に働いている
ということです。言われて見れば当たり前ですが、こういう観点は今まで見たことが
無かったので新鮮でした。それともうひとつ、遮熱系の通湿防水シートですが、以外な
効能がありました。夏の熱さ対策としてはほとんど意味がないことは再三お伝えしてき
たとおりです。そうではなくて夏の逆転結露に関しては輻射の観点から有効に働くと
いうことでした。これも完全に初耳でした。
これで一瞬「使う価値はあるんだな」と再認識しかけたところで土田さんに会いました。
土田さん曰く、4面を遮熱系のシートでくるんだ木造住宅が宅内電磁波の観点からは
最も良くないそうです。同じ週の中でこれらの話を同時に聞けたのは幸運でした。
ここで、遮熱系のシートは意味が分かったのですが、木造住宅がなぜ良くないのだろう?
と疑問に思いました。これも聞けば一瞬で納得することができました。鉄骨造や、RC造
の住宅は鉄自体がアースになるからということでした。鉄筋コンクリート造の外断熱に
関しては熱的にも素晴らしいことは知っていましたが、鉄骨造に住環境の観点での
メリットを発見したのはこれが初めてのことだったので意外でした。
そもそも海外の住宅はほとんどが200V以上の高電圧であるため全てのコンセントに
アースが付いています。しかも面積がそれなりに広いので距離によって激減する電磁波
の影響はほとんどありません。またRC造においては外断熱しかないので温熱的にも電磁
波的にも理想的な住宅が大半を占めることを再認識しました。翻って日本では温熱環境、
電磁波環境共に最悪の状況の住宅が大半を占めます。いわゆるヒートショック的な観点
ももちろんですが、アトピー、精神的疾患といった分野においても日本の住宅はほとん
どのお医者様すら気づかない中で相当悪さをしているように思われます。10年前から
常に考えていましたがまずは温度、次は湿度、それができたら長期の耐久性と電磁波対
策・・・費用をかけるべき順、達成すべき順序は自分の中でこのように考えています。
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4)【 REFRESH! 】仕事のヒント!ニュースや、本、イベントをご紹介
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3Dプリンターで部品の75%が作られた自動車が、来春より世界で初めて販売される見通し
です。開発・生産しているのはアメリカ・アリゾナ州のローカルモーターズ社という
ベンチャー企業で、バギータイプの電気自動車「LM3D Swim」などの数車種を2016年
春より事前予約を始め、2017年初頭には納車開始の予定ということです。
注目したいのは、環境への影響考慮の側面と自動車業界では考えられない地域に目を
向けたビジネスモデルです。3Dプリンターで使用する素材としてABS樹脂80%、炭素
繊維20%の混合素材を使用し、自動車として必要な強度を持つボディをより軽量に実現
することが可能になり燃費向上が期待されます。また、3Dプリンターで使用する素材は
リサイクルすることができるそうで、現在は75%の部品を3Dプリンターで生産している
ところ、さらに技術開発を続けることで、将来的にはその比率を90%まで高めることが
できるとしています。
また、自動車製造業といえば、大規模工場による大量生産というビジネスモデルが当た
り前となっている中、3Dプリンターが可能にするのは、各地のコミュニティーに自動車
の設計やモノづくりを行う小規模拠点を設け、デザインや技術をオープンな形で共有
しながら、地域の雇用確保や経済の活性化を目的に掲げるという新しいモデルです。
技術面だけでなく、地域志向なビジネスのあり方に、”イマドキ”を感じます。
小さい工場で環境負荷の小さいクルマづくりを実現する3Dプリンターカー
http://c.bme.jp/13/1506/320/4505 (LOCAL MOTORS)
【 パッシブハウス・ジャパン賛助会員一覧 (2015年11月9日現在)】
http://passivehouse-japan.org/membership/members (PHJ賛助会員リスト)
皆様のエリアでパッシブハウス設計及びパッシブハウス建設のお手伝いが
可能なエキスパートをご紹介いたします。パッシブハウスにご関心のある
方はメールにてお問い合わせください。
メールの宛先:admin@passivehouse-japan.org
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【パッシブハウスジャパンニュースレター】
2015年11月9日発行(0079)
発 行:一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
編 集:蓮見太郎