パッシブハウスジャパンニュースレター 016号 2010年10月12日発行
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パッシブハウスジャパンニュースレター 016号 2010年10月12日発行
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みなさま、こんにちは。
非営利型一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
http://www.passivehouse-japan.org
メールマガジン第16号です。
私たちは、
ドイツのパッシブハウス研究所と連携し、
世界中のパッシブハウス関連団体と幅広く知識・技術の共有を重ね、
日本及びアジア圏での住宅性能の強化を目指します。
本メールマガジンでは、海外の建築最新事情や、実践的な技術解説、
パッシブハウス・ジャパンが開催する各種セミナー・イベント情報を
お伝えいたします。
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□Contents
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1)【省エネ改修のはなし 代表理事 森みわ】
2)【エクセルギーとは? 理事 松尾和也】
3)【パッシブハウスジャパンからのお知らせ】
第3回省エネ建築診断士セミナー開催について
4)【賛助会員からのメッセージ】
Tonwerk Lausen AG(トーンヴェルク・ラウゼン)の
日本総代理店「青い空」からのメッセージ
5)【賛助会員紹介】
登録いただいた企業様を紹介します
6)【REFRESH!】
仕事のヒント!ニュースや、本、イベントをご紹介
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1)省エネ改修のはなし (代表理事 森 みわ)
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みなさん3連休はいかがお過ごしでしたでしょうか?
鎌倉は土曜日を除いて大変お天気が良く、観光客でにぎわっておりました。
私は時間を見つけては自宅の省エネ改修の計画を進めておりましたので、
今日は省エネ改修のお話を少ししたいと思います。
私が現在住んでいるメゾネットタイプの長屋は鉄筋コンクリート造で、
いわゆる外断熱改修になりますが、コンクリートの蓄熱性能がとても高いこと、
それから長屋である故に外壁の面積が大分少ないことなどが起因して、
14センチ程の外断熱でパッシブハウス化が可能です。
もちろん床下の無い鉄筋コンクリート造での一階床周りの断熱強化や、
日射取得量の増大にはいろいろな工夫がなされています。
一方、木造では改修の手法が大分変わりますが、築50年以上の木造住宅には、
パッシブデザインの基本が守られているケースが多く有ります。
南側にある大きな掃き出し窓からは、冬場の日射を最大限に取得することが出来
、大きな庇は夏場の日射を遮ります。
風通しの良い間取りはエアコンに頼りすぎずに夏場の涼を取るためには有効ですし、
土壁は木造住宅に蓄熱性能を補う重要な要素でした。
このように、既に基本中の基本が守られている古い木造住宅は、
断熱気密性能および不動産価値が皆無であっても、
効率良くパッシブハウス並みの性能の省エネ住宅として蘇らせ、
眠っている中古住宅のストックを流動化する事が可能なはず、そう考えた私達は
、パッシブハウス・ジャパンの賛助会員である株式会社OKUTAの協力を得て、
中古住宅、特に賃貸物件のリフォームスキームを作り、
先日2次募集のあった国土交通省の省CO2先導事業に応募いたしました。
これまでは賃貸物件の借り手では改修に必要な融資が受けられず、
貸し手目線の必要最低限のリフォームが一般的だった中古市場ですが、
住み手目線の省エネ性能や居住性を重視した大規模リフォームが可能となるように、
融資や改修後の性能保証もフォローしたスキームとなっています。
LCCMの観点から見ても、既存の木造の建物を取り壊さずに、
省エネ改修を行った方が、建設中のCO2発生量を相殺するまでの年数が
半分以下になることが、CASBEEとPHPPを併用したシミュレーションで
明らかになりました。
古いものを捨てずに直して使うことがまずエコの第一歩であるということは、
皆さんも実生活の中で感じている事であるはず。
その感覚を家づくりの際にも大切にし、省エネ性能に妥協しない住宅ストック作りに
貢献していただきたいと思います。
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2)エクセルギーとは? (理事 松尾和也)
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最近、環境系の人と話をしていると「エクセルギー」という言葉が
よく聞かれるようになってきました。
私が熱環境の研究室にいた大学時代にも一切出て来ませんでしたし、
一級建築士の学科の問題にも出てこない言葉です。
原子力が専門の友人にも聞いてみましたが
エネルギーの専門家の彼ですら知りませんでした。
「注目すべき概念であるのにそれを知らないということは恥ずかしい。」
そう思い、エクセルギーに関してアマゾンで検索してみました。
何冊か該当する本があるのですが、
一冊だけ建築学科の先生が書かれたエクセルギーの本があったので
迷わずその本を選びました。
それが東京都市大学教授の宿谷先生の書かれた
「エクセルギーと環境の理論」という本です。
結論から言いますと、この本は熱環境における「パラダイムシフト」
とも呼べる内容でした。
今までの熱環境や一級建築士の世界では全く出てこなかったのにも関わらず、
今まで私たちが、エネルギー等に関して、
数値と感覚にずれを感じていたことを見事に埋め合わせてくれるものです。
エネルギーに詳しい人の間では「省エネという言葉はおかしい。
エネルギー保存の法則があるのだから・・・」という言葉がよく聞かれます。
しかしエクセルギーの概念を理解すると
実は省エネとは「省エクセルギー」のことだったのだと理解することができます。
では、エクセルギーとはなんなのか?というと
「拡散という現象を引き起こす能力」と書かれています。
これだけでは分かりにくいのです、具体例をひとつあげてみます。
例えば、気温が20℃としたとき、
40℃、20Lのお湯と100℃、5Lの持つ熱エネルギーは
ともに1674kJとなります。(温度×水量が等しいため)
しかしながら、人間の感覚としては100℃、5Lのお湯の方が
強烈な何かをもっているような気がします。
この何かというのを表す概念がエクセルギーといえます。
エクセルギーの観点で表すと、前者は55kJ、後者は194kJと
4倍近い差がついています。
誰もが分かることですが、この二つを比べた場合、
どちらが急激に温度が下がっていくかというと明らかに後者です。
ここでいう「急激に温度が下がっていく」ということが
「拡散という現象を引き起こす能力」ということになります。
ここで注意しておかなければならないことがあります。
エクセルギーはあくまで相対的な指標であるということです。
例えば上記の40℃のお湯であればエネルギー的に見れば絶対値として
気温が何度であろうと40℃で、そのお湯が持つエネルギーは変わりません。
しかしながら、エクセルギーの概念では、
気温が0℃のときは温度差が大きくなるためエクセルギーは
現状よりかなり大きくなります。
逆にいうと気温が40℃であったならば、そこが温度の安定状態となるので
エクセルギーはゼロとなります。
更にいうと気温20度のときに、水温が10℃であったならば、
その水は冷エクセルギーを持つということになります。
エクセルギーよりもう少し耳慣れたことばにエントロピーという言葉があります。
これはエクセルギーの逆の概念で「拡散の大きさ」を表します。
ただ、単位が異なるので注意は必要です。
{消費されるエクセルギー=生成されるエントロピー×環境温度(室温や気温)}
以下に私が特にハッとさせられたことを列記してみたいと思います。
・なぜ省エネ機器に頼る前に外皮の性能を上げた方がいいのかを
定量的に説明できている。
・冷房病が起こる理由を定量的に説明できている。
・地球、宇宙、空気、植物、動物、日射・・・といった、
万物におけるエクセルギーの循環を見事に説明している。
・今までどんな熱環境にも載っていない、
具体的なグラフ等がふんだんに書かれている。
(例えば周壁平均温度と気流速とエクセルギーの関係の図のようなものが
数十はある)
非常に難解な部分も多いですが、前半は読み物としても十分に楽しめます。
断熱や省エネに興味のある方は必読の書といってもいいかもしれません。
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3)パッシブハウスジャパンからのお知らせ
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第3回省エネ建築診断士セミナー開催について
2011年1月13日(木)・14日(金)に第3回省エネ建築診断士セミナーを
開催いたします。
会場は、東北芸術工科大学・山形エコハウスです。
山形県と同大学が共同で開発した山形エコハウスを教材にして、
省エネ住宅についてレクチャーいたします。
今回は、東北芸術工科大学の生涯学習プログラムの中で行われますので、
申し込み先も東北芸術工科大学となります。ご注意ください。
詳しくは以下のHPをご覧くださいませ。
http://www.tuad.ac.jp/plusart/program/qualification/index.html
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4)【賛助会員からのメッセージ】
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今号から4回にわたって、メーカー会員のTonwerk Lausen AG
(トーンヴェルク・ラウゼン)の日本総代理店である「青い空」の
小川厳鐡さんからのメッセージをお送りします。
パッシブハウス・ジャパンのメールマガジンをご購読の皆様へ
皆さん、はじめまして。
そろそろ薪ストーブに火をくべるのがまちどおしい、青い空の小川です。
皆さんは蓄熱型薪ストーブって御存知ですか?
「薪ストーブ」といえば、鋳物で出来たストーブを思い出されるでしょうか?
しかし、ガソリン車がハイブリッドカーへと進化したように、
薪ストーブも環境と人に優しい「熱効率と熱の品質」を研究した末に誕生した、
「トーンヴェルク・蓄熱型薪ストーブ」があります。
熱の心地良さはもちろん、今年世界で最初にドイツ建設技術研究所で認可された、
パッシブハウスと相性の良いトーンヴェルク蓄熱型薪ストーブについて、
これから4回にわたって御紹介させていただきます。
目次
1)私とトーンヴェルク・ストーブとの出会い:
2)トーンヴェルク高蓄熱型薪ストーブ誕生秘話:
3)世界初の燃焼技術:
4)パッシブハウスとT-LINEeco2:
1)私とトーンヴェルク・ストーブとの出会い
私と薪ストーブとの出会いは、20年ほど前のことで、
彫刻家であった私がアトリエを建てたときのことです。
この頃は薪ストーブの情報が殆どありませんでしたし、
鋳物ストーブしか入手できませんでした。
20坪天井高4メートルの空間を暖める為の暖房機器として選んだのが、
鋳物製薪ストーブでした。
そのストーブは、5シーズン目に鋳物が割れてしまい、
新しい薪ストーブに変える必要が生じました。
このとき猛烈に調べました。当時はインターネットが普及しておらず、
蓄熱型ストーブの存在を知るに至らず、再び鋳物ストーブをチョイス。
今度こそはと思い、調べ尽くした末に買ったこのストーブ、操作が面倒で、
ちょっと油断すると直ぐに温度が上昇し絶えず温度を気にする必要がありました。
3シーズン目に再び破損!大きなダメージを受けてしまいました。
薪ストーブに対する印象は悪くなる一方でした。
そんな時友人から、「私の友達が設計したんだけど、
スイスにトーンヴェルク高蓄熱型薪ストーブというものがあり、
たった1回の薪の燃焼で12時間ほど暖かく過ごせるストーブがある」
と知らされました。
温度管理は必要なく、ただ薪を燃焼室に一杯に入れ、
空気コントロールは不要(全開)、上から着火する変わったストーブ
と言う話でした。
そして驚いたのは、火が消えたら燃焼空気を遮断し、
その後10時間ほど暖かく過ごせるという、嘘のような話です。
それがトーンヴェルク・ストーブ、TOPOLINOとの出会いでした。
今から12年前のことです。
長い年月をかけてメーカーと交渉の末、その後開発されたT-ONEを購入し、
現在9シーズン目を迎えようとしていますが、
毎年このストーブの素晴らしさに感動しています。
そして驚くのは、ガスケットなどの消耗パーツさえ何一つ交換していないことです。
耐久性においても他の追随を許しません。
2)トーンヴェルク高蓄熱型薪ストーブ誕生秘話:は次回お話させていただきます。
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5)【賛助会員紹介】
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ご登録いただいた賛助会員の皆様をご紹介します。
◎新規会員
グローブホームビルド株式会社(設計)
イー住まい有限会社(工務店)
<工務店会員>
株式会社島田材木店
株式会社HORI建築
株式会社セイズインターナショナル
株式会社アイシーホーム
高橋建築株式会社
株式会社OKUTA
棟晶株式会社
光輝建設株式会社
株式会社五感工房
エコモ株式会社
有限会社アーキテクト工房Pure
株式会社カーサ
株式会社ラクジュ
<設計事務所会員>
植田優建築工房
株式会社建築工房わたなべ
溝口建築設計事務所
都建築設計室
空設計工房
真建築事務所
なちゅらる・さーかす
H2O design associates
株式会社プランニング・ジャパン
空間工房/上岡直樹
株式会社大庄
HIRO建築設計舎
株式会社グリーンサークル
WORDS建築事務所
<メーカー会員>
マグ・イゾベール株式会社
日本スティーベル株式会社
Tonwerk Lausen AG
旭化成建材株式会社
<一般会員>
ハイアス・アンド・カンパニー株式会社
<特別会員>
NPO法人木品協
Dotプロジェクト
NPO法人新木造住宅技術研究協議会
IG Passivhaus Schweiz(スイスパッシブハウス振興会)
NPO法人日本VOC測定協会
NPO法人外断熱推進会議
賛助会員へのご興味のある方、詳細はこちらからどうぞ
http://phj.zz.tc/member
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6)REFRESH!!
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このコーナーでは、建築業界の話題からは少し外れた、
けれども仕事のアイデアを広げてくれるような、
そんな情報を紹介していきます。
そろそろインフルエンザの予防接種の時期ですね。
近所のお医者さんでも予約が始まっています。
インフルエンザの予防には、まず手洗いとうがいが基本ですね。
突然ですが、10月15日はなんの日かご存知ですか?
山口百恵が引退した日?・・・それもそう!
でも2年前から10月15日は「世界手洗いの日」にもなっているのです。
手洗いって、いまさら定めることもないんじゃ・・・と思いませんか?
私はこの日のことを聞いてはじめにそう思いました。
この日は、ユニセフが不衛生な環境で生活している世界の子供たちに
「手洗い」の大切さを伝えるためのキャンペーンをきっかけに
定めたものだそうです。
石鹸を使って正しく手洗いができれば、
なんと年間100万人の子供の命が守られるそうです。
ちいさな子供が楽しく手洗いを覚えるために「世界手洗いダンス」
というダンスも考えられています。
日本では清潔に気をつかいすぎて逆に免疫が下がってきている
とも言われていますが、このようなキャンペーンは、
恵まれ過ぎている日本の子供たちが、自分たちとは違う環境の世界に
目を向けるいいきっかけになるのではないでしょうか。
もちろん、手洗い・うがいはどんな人の健康にも役立ちますしね。
世界手洗いの日のHPはこちら→http://handwashing.jp/index.html
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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