パッシブハウスジャパンニュースレター 013号 2010年8月23日発行
▽世界基準の省エネ住宅普及に向けて、知識と技術を探求いたします
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パッシブハウスジャパンニュースレター 013号 2010年8月23日発行
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みなさま、こんにちは。
非営利型一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
http://www.passivehouse-japan.org
メールマガジン第13号です。
私たちは、
ドイツのパッシブハウス研究所と連携し、
世界中のパッシブハウス関連団体と幅広く知識・技術の共有を重ね、
日本及びアジア圏での住宅性能の強化を目指します。
本メールマガジンでは、海外の建築最新事情や、実践的な技術解説、
パッシブハウス・ジャパンが開催する各種セミナー・イベント情報を
お伝えいたします
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□Contents
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1)【高断熱、病気(健康)、家計との関係 理事 松尾和也】
2)【省エネルギー住宅イコール健康住宅のすすめ
代表理事 森みわ】
3)【パッシブハウスジャパンからのお知らせ】
その1 第2回省エネ建築診断士セミナーの宿泊予約について
その2 茨城パッシブハウスの現場見学会の日程が変更になりました
その3 省エネ建築診断士セミナー向けの参考図書をご紹介します
4)【省エネ建築診断士試験の過去問を配信します】
5)【賛助会員紹介】
登録いただいた企業様を紹介します
6)【REFRESH!】
仕事のヒント!ニュースや、本、イベントをご紹介
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1)高断熱、病気(健康)、家計との関係 (理事 松尾和也)
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最近、高断熱否定というものが極めてしにくくなる発表が話題になっています。
会員の皆さんも見たことがあるかと思いますが、近畿大学の岩前先生によるもので、
家の断熱性と心疾患等の病気の発症率との因果関係を
多数のアンケート結果からまとめあげています。
数種類の疾患についてのデータが公表されていますが、
どの項目も断熱性が高いほど明らかに疾患が少なくなるということが読み取れます。
またこれを裏付ける話もあります。
イギリスでは家の断熱性によって生命保険の掛け金が異なるそうです。
保険の掛け金というのは膨大な量のリスクに関する統計データから
統計を専門に扱う方が決めることなので、
この金額に差があるということは
かなり確証の高いデータであることの証明ともいえるでしょう。
高断熱、高気密もしくは省エネというものは
それにかかる金額を投資回収年数という考え方で見た場合、
「確実に元が取れる」とは言い難いものがあるのは事実です。
しかしながら、一度でも心筋梗塞になり仕事が出来なくなって、
収入に響いたり、医療費がかさんだりということまで考えると、
逆に「確実に元が取れる」といえます。
この概念は最近、熱環境の世界では最高の権威である村上周三先生も
よく発表しておられます。
それ以外にも、日々の暑さ寒さを我慢せずに快適に過ごすということは
お金には表しがたい快適性を得られます。
こう考えると今までは高断熱と家計という項目は
相反する項目のように思われていたものが、
病気(健康)という項目を間に入れることによって逆に高断熱と家計は
両立するということが言えるようになってきています。
しかしながら、より一層の高断熱を実現するにあたり、
ネックとなるのはやはりサッシです。
日本の高断熱化を遮っている最大の障壁といっても過言ではないでしょう。
この原稿を書いてある時点でトステムがサーモスという
断熱性の高いサッシを発表しました。
これにより、同じガラス構成でも3.49→2.91といったように
U値のグレードは1ランクあがるようです。
これはこれで大量に出回るシェアナンバー1の会社の商品が
底上げされるというのは良いことではあります。
しかしながらU値の最低基準が1.3であるドイツの基準のことを考えると
やはり日本のサッシは本当にまだまだ根本的な改良が必要です。
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2)省エネルギー住宅イコール健康住宅のすすめ
(代表理事 森みわ)
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家電の性能は良いのに不快な家、断熱が厚いのにカビだらけのシックハウス、
建材に天然素材を使用しているのに燃費が悪い家などなど、
省エネルギー住宅イコール健康住宅という方程式が成り立たない事例が後を絶ちません。
一方で、省エネルギー住宅に経済性が伴わなくては、そもそも消費者に選択されることなく、
普及に及ばないというのも事実です。
これは逆らうことのできない市場の原理であって、
これに対する突発的な助成金などは無力どころかかえって市場を混乱させてしまいます。
省エネ性能の悪い家と、良い家(Q値=1.0近辺)、両者の30年間の光熱費の差額で、
省エネ性能の良い家の建設費のアップが回収できるのかを比較すると、
現在の日本ではなかなか難しいと言わざるを得ません(環境先進国ドイツなどでは、
深夜電力の料金設定が日本ほど安くなく、国が義務化する省エネレベルがそもそも高いため、
パッシブハウス級の住宅建設のコストアップが現在5-6%に留まっており、
光熱費節約分によって30年以内で回収できてしまう計算になります)。
しかしながら日本の現在のオール電化住宅向けの深夜電力の料金設定や、
需要が少ないゆえに未だに高額な高性能サッシなどの建材価格のせいで、
省エネ住宅がペイしないと市場が断言するべきなのでしょうか?
松尾氏も指摘するように、もしかすると省エネ住宅の経済性を図る尺度の方が
不完全なのではないか?という思いがよぎり始めます。
ヒートショックに起因する脳梗塞による介護負担、シックハウスに起因する喘息などの
治療費等を金額に換算することは比較的容易ですが、介護者のストレス、
拘束時間はたまた不快な住環境に起因する夫婦不仲とその子供への心理的影響、
もしかすると生きる気力の低下まで、
社会の抱える経済負担は金額に換算できないほど大きいはずです。
これらを高断熱・高気密と逆行するような住宅の払うツケと捉えると、
私たちが今実現させようとしている高断熱・高気密住宅は、
たとえ15%のコストアップであったとしても、経済性が伴うと判断される可能性を
充分に秘めているのです(ただしこの理論は、設備に頼りすぎた、すなわち太陽光発電や
高効率家電等によってのみ省エネを図ろうとした、住宅には当てはまりません)。
冒頭に述べた、省エネ住宅イコール健康住宅という方程式が成り立った時、
ただしい経済性の尺度の導入によって、必然的に経済性を伴った省エネ住宅が
誕生するのではないでしょうか?
9月10日に富山大学にて開催される、日本建築学会の環境工学研究協議会では、
こういった温熱環境と疾患に関する研究も発表される予定です。
「地球環境時代に環境工学はどう社会貢献できるか?」
日時:2010年9月10日(金) 14:15-17:00予定
場所:富山大学
主催:日本建築学会 環境工学委員会
建築学会大会に関する詳しい情報はこちら
http://news-sv.aij.or.jp/taikai/2010/kenkyu.html
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3)パッシブハウスジャパンからのお知らせ
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その1 第2回省エネ建築診断士セミナーの宿泊予約について
9月16日・17日に大阪で行われるセミナーに日本各地から参加される方々の為に、
パッシブハウスジャパンでは宿泊ホテルをご用意いたしました。
シングルで一泊6000円です。
これからセミナーにお申し込みなさる方で宿泊も必要な方は、
その旨も記入してメールにてパッシブハウスジャパンまでご連絡ください。
すでにセミナーにお申し込みいただいている方もお申し込みいただけますので、
メールにてお知らせください。
info@passivehouse-japan.org
その2 茨城パッシブハウスの現場見学会の日程が変更になりました
茨城パッシブハウスの一般向け現場見学会は10月30日(土)、31日(日)
に変更となりました。
見学をご予定の方はご注意くださいませ。
その3 省エネ建築診断士セミナー向けの参考図書をご紹介します
省エネ建築診断士セミナーを受講される方々から、
「予習にお勧めの本はありますか?」とよく質問をいただきますので、
ここで1冊ご紹介させていただきます。
「最新 建築環境工学 改訂3版 井上書院」
内容も非常に的確で、演習もついているのでこれ以上の本は
ないというくらいお勧めの本だそうです(理事松尾談)。
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4)省エネ建築診断士試験の過去問を配信します
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今週から4週に渡って、毎週月曜日に省エネ建築診断士試験の
過去問を配信いたします。
第1回目はこちら。
<問題1>
夏場の室内の快適性に密接にかかわらない用語はどれか
1 ルームエアコンのCOP
2 相対湿度
3 気流
4 室温
<問題2>
日射遮蔽に関して誤った記述はどれか。
1 東西に取り付けられた窓においては、庇の日射遮蔽効果は南よりも少ない
2 同じ形状の日よけブラインドを窓の外側に取り付けた場合、
日射遮蔽効果は内側に付けた場合の3倍以上である
3 南側の窓に取り付ける庇は深すぎると冬場の日射取得を減少させる
4 遮熱Low-Eガラスは南側の窓で効果を発揮する
正解は次週の問題配信メールに掲載いたします。
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5)【賛助会員紹介】
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ご登録いただいた賛助会員の皆様をご紹介します。
◎新規会員
旭化成建材株式会社(メーカー)
<工務店会員>
株式会社HORI建築
株式会社セイズインターナショナル
株式会社アイシーホーム
高橋建築株式会社
株式会社OKUTA
棟晶株式会社
光輝建設株式会社
株式会社五感工房
エコモ株式会社
有限会社アーキテクト工房Pure
株式会社カーサ
<設計事務所会員>
植田優建築工房
株式会社建築工房わたなべ
株式会社島田材木店 二級建築士事務所
溝口建築設計事務所
都建築設計室
空設計工房
真建築事務所
なちゅらる・さーかす
H2O design associates
株式会社プランニング・ジャパン
空間工房/上岡直樹
株式会社大庄
HIRO建築設計舎
株式会社グリーンサークル
<メーカー会員>
マグ・イゾベール株式会社
日本スティーベル株式会社
Tonwerk Lausen AG
<一般会員>
ハイアス・アンド・カンパニー株式会社
<特別会員>
NPO法人木品協
Dotプロジェクト
NPO法人新木造住宅技術研究協議会
IG Passivhaus Schweiz(スイスパッシブハウス振興会)
NPO法人日本VOC測定協会
NPO法人外断熱推進協議会
賛助会員へのご興味のある方、詳細はこちらからどうぞ
http://phj.zz.tc/member
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6)REFRESH!!
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このコーナーでは、建築業界の話題からは少し外れた、
けれども仕事のアイデアを広げてくれるような、
そんな情報を紹介していきます。
今日はエコ・ジャパンカップについてご紹介したいと思います。
そもそもは2005年の「愛・地球博」のイベントとしてはじまったこのコンテスト。
簡単に言うとエコのアイデアを競う日本選手権。
主催は、環境省、総務省、一般社団法人環境ビジネスウィメン、日本政策投資銀行、
三井住友銀行での、産官民の協働事業となっています。
このエコ・ジャパンカップ、どんな人でも応募できるのです。
ビジネス部門・カルチャー部門・ライフスタイル部門・ポリシー部門と
大きく4つに部門がわかれていますが、
ライフスタイル部門の中には「エコチャレンジ!」といって個人や家族が
生活の中でのエコなアイデアについて応募するものもあり、大賞賞金は何と30万円!
「環境ビジネス・ベンチャーオープン」では大賞をとると、賞金300万円以外に、
その後の事業支援も受けられるというから、すごいですよね。
ビジネス部門の「環境ビジネス・ベンチャーオープン」と
ライフスタイル部門の全ての募集項目の締切は8月31日です。
自分や未来のためのエコですが、ご褒美があるとますますモチベーションがあがりますよね。
今年は駄目でも来年の応募に向けて、もっとエコに力を入れてみませんか?
詳しくはhttp://www.eco-japan-cup.com/をご覧ください。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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