パッシブハウスジャパンニュースレター 008号 2010年6月8日発行
▽世界基準の省エネ住宅普及に向けて、知識と技術を探求いたします
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パッシブハウスジャパンニュースレター 008号 2010年6月8日発行
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みなさま、こんにちは。
非営利型一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
http://www.passivehouse-japan.org
メールマガジン第8号です。
今回は代表幹事の森みわが、ドイツで行われた
国際パッシブハウスカンファレンスに出席していたため、
1日遅れの配信となります。
私たちは、
ドイツのパッシブハウス研究所と連携し、
世界中のパッシブハウス関連団体と幅広く知識・技術の共有を重ね、
日本及びアジア圏での住宅性能の強化を目指します。
本メールマガジンでは、海外の建築最新事情や、実践的な技術解説、
パッシブハウス・ジャパンが開催する各種セミナー・イベント情報を
お伝えいたします。
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□Contents
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1)【本当のエコ住宅を実現するために 理事 松尾和也】
2)【熱交換換気装置について 代表理事 森 みわ】
3)【PHJからのお知らせ】
1.パッシブハウス・アーキテクチャー・プライス2010
2.パッシブハウス研究所より、省エネ改修向け認定”EnerPHit”が発表されました。
4)【賛助会員紹介】
会員登録いただいた企業様を紹介します
5)【REFRESH!】
仕事のヒント!ニュースや、本、イベントをご紹介
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1)本当のエコ住宅を実現するために(理事 松尾和也)
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最近新聞を見ていると、エコ、省エネを目にしない日はありません。しかしながらいつも違和感を覚える点があります。いろいろあるのですがまずは「なんちゃってエコ」の世界です。
例えば住宅業界においていえば、ライフサイクルエネルギーがかなり大きい鉄骨造の家を作っている住宅メーカーが「木を5本植える」ことがエコになったりとか・・・。
確かにそれもやらないよりはやった方がいいのは間違いないです。
しかしながら、木造でしかも国産材を使って建てている工務店や設計事務所の方が一棟当たりで考えた場合のCO2削減、一次エネルギー利用量の削減から見てもどれほど効果的でしょう。
これも一例ですが、他にもう一つ目立つのが総量的、定量的にエコもしくは省エネを規定していないため、先ほどの例もそうですが、「些細なエコ」と「大きな効果のあるエコ」が同程度の評価しか受けない。もしくは宣伝広告の上手下手によっては逆転する可能性すらあるということです。
例えば、ドイツのパッシブハウス基準ではQ値のような目標を達成するための手段に規制をかけるのではなくそれを達成するための一次エネルギー消費量に規制をかけています。こうすれば、設計者の自由度は残しながらも結果だけは確実に出すことが可能となります。
その反面Q値のような手段の部分だけを規制すると、Q値は規制値内に納まっても給湯機や暖房機器の性能が低いために結果的に目標とする一次エネルギーの削減量に届かないといったことが往々にして起こります。
今現在、建築業界においては簡易的に総量を把握できるソフトはいくつかあります。しかしPHPPのようにシビアに把握できるソフトはないと思います。この点に関しては早急に我々PHJがソフトを作らなければならないと思っているところであります。
最後に言えることが、優先順位の優劣がきちんと定められていないということです。
建築においていうならば、Q値、C値の性能を高めておく。日射遮蔽はきちんと行っておく。誰がどう言おうとこれがまずやるべき事項です。それを行わずに、太陽光発電、エコキュート、そこまでならまだコストパフォーマンス的にも理解できますが、燃料電池等までいくと明らかに優先順位を間違っています。
先日こんなお客様に出会いました。「太陽光発電、エコキュート、食洗機・・・電気設備的にはフル装備の建売住宅を買って住みましたが、どうにも冬は寒いし、夏は暑い。確かにエアコンをかければそれなりの温度にはなり、太陽光発電のおかげ電気代もそれなりに安かった。しかしながら、これがちっとも快適とは思えなかった。だから売ってしまいました。」とおっしゃっていました。
売ってしまうというところまでいくと大胆だと思いますが、この発言は本当に的を得た発言だと思うのです。
私がよく施主様に説明する言葉に「半袖のTシャツでカイロを持って生活する前に、厚着しますよね?それが普通ではありませんか?そしてその方が快適で安上がりではありませんか?」というのがあります。衣服で考えると当たり前のことが、住宅になると行われない。衣服と違って簡単に着替えることができない住宅ならではの問題点かもしれません。
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2)熱交換換気装置について (代表理事 森みわ)
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5月28日から29日までドレスデンで開催された国際パッシブハウス・カンファレンスにて、鳩山政権の25%CO2削減と、未だに義務化されない次世代省エネ基準の話で笑いを取ってきた矢先、先週末に帰国してみると首相が交代しているのには驚きました。
今回で14回目となる国際パッシブハウス・カンファレンス。アジアからは韓国からの参加者が圧倒的に多く、同国でのパッシブハウスに対する関心の高さを感じ取ることが出来ました。
併設の展示会では、パッシブハウスに必要なコンポーネントが一通り紹介されている中、基礎の断熱施工をより確実で施工性の高いものとするための様々な工法、そしてパッシブハウスの暖房需要に合わせたコンパクトな薪ストーブや煙突を不要とするバイオ・エタノールのストーブなどが展示されていたのが印象的でした。
次回のメールマガジンではカンファレンスの発表に関して、より詳しい内容をご報告したいと思います。
今回のメールマガジンは熱交換換気装置のお話です。
室内からの排気と外気との間で熱交換を行って省エネを計るシステムが、熱交換換気装置ですが、温度のみを交換する顕熱交換式と、湿気(潜熱)と温度(顕熱)を交換する全熱交換式とに大きく2分されます。
ヨーロッパでは、これまで顕熱のみによる熱交換が一般的で、現在でも全熱の熱交換ユニットを採用するメーカーはスイス、ドイツで合計4社ほどしかありません。
顕熱による熱交換が一般的な理由として、先日の省エネ建築診断士セミナーでも触れました通り、寒冷地での冬場の熱交換において、潜熱の割合は大変少なく、温度の回収のみで大幅な省エネ効果が得られることが挙げられます。
そもそも換気装置の役割は、室内の汚れた空気を、新鮮な外気と入れ替えることですから、間違っても排気が室内に逆戻りするような事態は起きてはなりません。そのため熱交換換気システムにおける排気側から給気側への空気の漏れは、3%以下で無くてはならないことが、DIN規格によって定められていますし、実際ドイツで製造される機種の空気漏れは1%を切っていると言われています。
ドイツでは熱交換換気装置の交換効率を測定する際に、幾つかの条件があります。参考までにパッシブハウス研究所の試験方法を紹介しましょう。
外気温度は-3度、+4度、+10度の3点で測定し、外気の相対湿度は一律80%とします。一方室内側からの排気の温度は一律+21度、ただし相対湿度は外気温度に応じて変化し、-3度の際には36%、+4度の際には46%、+10度の際には56%とするとされています。
このような測定条件で試験を行い、認められた熱交換効率を、パッシブハウス設計に用いるPHPPソフトに入力します(パッシブハウス研究所による熱交換効率の測定費用は現在5000ユーロ程度です)。
第三者機関による性能数値が無い熱交換換気装置に関しては、メーカーのカタログ数値から12%を差し引いて入力する必要があります。たとえば全熱交換型の熱交換システムにおいては、排気側の相対湿度と温度を高くすればするほど、顕熱分の交換効率が上がりますので、有利な数値を得ることが出来ます。そのような数値の競い合いで消費者が惑わされてしまわないように、交換効率の測定条件は一律にして試験を行うのがドイツのルールなのです。
一方で、全熱交換のメリットにも注目が集まっています。パッシブハウスの南下に伴い、少しずつ夏場の除湿の問題がクローズアップされ始め、全熱交換システムの除湿効果を有効利用しようという意見があり、PHJも現在、この全熱交換の際の(エアコンによる)除湿負荷の軽減をPHPPに正確に反映できるように、パッシブハウス研究所との協議を行っています。
その第一歩として、潜熱の交換効率を正確に評価するための試験方法が国際的に確立される必要があることは否めません。
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3)パッシブハウス・ジャパンからのお知らせ
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【1.パッシブハウス・アーキテクチャー・プライス2010】
ドイツ建設省主催の第一回パッシブハウス・アーキテクチャー・プライスの表彰式が5月29日にパッシブハウス・カンファレンスのプログラムの中で行われました。
応募された60の作品の中から、以下の設計事務所が入賞いたしました。
こちらのリンクから、各作品の写真を見ることが出来ます。
http://www.passiv.de/archpreis/download/architekturpreis_praesentation.pdf
1位
Halle 58 Architekten GmbH ベルン、スイス
リーベフェルドの集合住宅
2位
KEY ARCHITECTS 鎌倉、日本
鎌倉パッシブハウス
Cukrowicz Nachbaur Architekten ZT GmbH
ブレゲンツ、オーストリア
セント・ゲロルドの村役場
3位
Schweger Associated Architects ハンブルク、ドイツ
ドレスデン州立資料館(増築)
特別賞
D’Inka Scheibe Hoffmann Architekten BDA フェルバッハ、ドイツ
モジュールシステムによる体育館
Huke-Schubert Berge Architekten ハンブルク、ドイツ
ハンブルクーオッテンセンの集合住宅
その他入賞4作品
【2.パッシブハウス研究所より、
省エネ改修向け認定”EnerPHit”が発表されました。】
この度パッシブハウス研究所では、既存建物の省エネ改修のための、新しい認定基準が確立されました。建物の省エネ性能を一番効率よく発揮させる方法は、基本設計段階からの省エネ性能を見据えた設計アプローチです。
ところが既存建物の省エネ改修では、もともと省エネ性能が不足、もしくは欠落した建物に、その性能を”後付け”せざるを得ないため、新築と比べて同じパッシブハウスの性能を出すためのコストアップは必然的に大きくなってしまいます。
そもそも既存の建物を改修して使うこと自体が省エネである訳ですから、省エネ改修を推進するために、今回改修物件向けの新しい基準”EnerPHit(エナフィット)”が誕生したという訳です。
とはいえ、EnerPHitの認定のためにクリアしなくてはならない年間の暖房負荷は25kWh/m2(もしくはパッシブハウス認定を受けた建材を利用した省エネ改修も対象)となり、日本の新築住宅よりもはるかに優れた外皮性能を有する必要があります。
EnerPHitの認定に興味をお持ちの方は、是非PHJまでご連絡ください。
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4)【賛助会員紹介】
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ご登録いただいた賛助会員の皆様をご紹介します。
◎新規会員
株式会社 マグ(メーカー)
<工務店会員>
株式会社HORI建築
株式会社セイズインターナショナル
株式会社アイシーホーム
高橋建築株式会社
株式会社OKUTA
棟晶株式会社
光輝建設株式会社
株式会社五感工房
<設計事務所会員>
植田優建築工房
株式会社建築工房わたなべ
株式会社島田材木店 二級建築士事務所
溝口建築設計事務所
都建築設計室
空設計工房
真建築事務所
なちゅらる・さーかす
H2O design associates
株式会社プランニング・ジャパン
空間工房/上岡直樹
株式会社大庄
HIRO建築設計舎
<特別会員>
NPO法人木品協
Dotプロジェクト
NPO法人新木造住宅技術研究協議会
IG Passivhaus Schweiz(スイスパッシブハウス振興会)
賛助会員へのご興味のある方、詳細はこちらからどうぞ
http://phj.zz.tc/member
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5)REFRESH!!
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このコーナーでは、建築業界の話題からは少し外れた、
けれども仕事のアイデアを広げてくれるような、
そんな情報を紹介していきます。
ワールドカップ開幕まであと少し。
みなさん盛り上がっていますか?
最近の小学生男子の間では、イナズマイレブンというサッカーアニメが流行しているらしく、そのゲームソフトもかなり売れているそうです。
私の時代はキャプテン翼でしたが、とにかく今、小学生の間でもサッカーは大流行だそうです。
Earth FCというフットボールクラブをご存じですか?
地球代表のサッカーチーム?対戦相手は宇宙人?
Earth FCとはSONYが2007年から行っている社会貢献活動のひとつで、ぼろぼろのボールやただ布を巻いて作ったボールでサッカーをしているアフリカの子供達に、荒れた地面にも耐えられるような頑丈なボールを開発して寄贈したり、テレビの普及していないアフリカでパブリックビューイングを行ったりしています。
どんな人でもこのフットボールクラブのメンバーになれます。いろいろな方法がありますが、もっとも簡単なのが、クリックするだけ。1000クリック集まると1つのボールをアフリカの子供たちに送ることができるそうです。
ただ日本にあるボールを贈るのではなく、少しでも長持ちするように、そこの土地にあった素材のボールを贈る。この発想は私たちの仕事や生活のどんな場面にでも応用できるのではないでしょうか。
http://www.earthfc.sony.net/jp/
をのぞいてみてください。
遠い国の子供たちの笑顔のために、私達にもできることはとても簡単です。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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次回は、2010年6月21日(月)配信予定です。
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【パッシブハウスジャパンニュースレター】
2010年6月8日発行(0008)
発 行:一般社団法人パッシブハウス・ジャパン
発行人:森みわ
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神奈川県鎌倉市小町1-11-11
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ご意見・ご要望:
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