ニュースレター 2021年9月号コラム

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度のニュースレターを発行しております。

理事によるコラム他、セミナー開催や建もの燃費ナビ関連のお知らせ等を毎月お届けいたします。


PHJ相談役 高橋 慎吾

 

 

パッシブハウス認定を目指そう!
~「秩父パッシブハウス2020」を例に計算手法の簡単なご紹介(前編)~

パッシブハウス・ジャパン理事 高橋 慎吾

 

 

ドイツ発祥のパッシブハウスが作られ初めて30周年だそうです。

パッシブハウスの建築手法がなぜ必要なのでしょうか?

詳細なエネルギー計算によりエネルギー効率が最適化され建設されるパッシブハウス。特に、ガラス面への影の影響や熱橋の影響などの計算は、ほかのシミュレーションソフトでは見られないほどの厳密さです。
「そこまでは必要ないのでは?」との声も聞かれそうですが、それは違います。あまり高断熱とはいえないレベルでは、それらの影響は少ないかもしれません。しかし、断熱性能が上がれば上がるほど、その影響が顕著になってきます。パッシブハウスレベルの超高断熱になってくると、日射の影響や、熱橋の影響が無視できなくなります。同じ外皮性能の家でも住み心地や、燃費が大きく変わりますね。UAという指標では全く見えてこないのです。
パッシブハウスの計算ソフト「PHPP」では住み心地や、燃費に関わりそうなありとあらゆるデーターを細かく入力していきます。それによって、シミュレーションができるだけ実際に近い値になるように計算されます。

今回、秩父パッシブハウス2020が認定を取得しましたので、その内容をかいつまんでご紹介しようと思います。

パッシブハウスでは冬は20℃ 夏は25℃ を家中で維持できるエネルギー量を計算します。そして家の大きさや利用目的などにより内部発熱量を計算します。内部発熱とは生活により室内で発生する熱の量です。照明器具から出る熱、人体や家電から出る熱などですね。10年前に認定を受けた秩父パッシブハウスではこの内部で発生する熱により室内が暖まり暖房器具に頼らず、無暖房で生活できるほどです。ですから内部発熱はきちんと計算が必要ですね。
続いて気象データーは建築地の気象条件です。

建築地の高度なども入れます。同じ地域でも山の上と下では違いますね。このグラフで月ごとの日射量もわかります。地域によってずいぶん変わりますのでその地域にあった窓の付け方やガラスの選び方、日射遮蔽の方法などを変える必要があります。
私の地域である秩父は冬期の南面の日射量が多く、これを利用できれば大変暖かい家が作りやすいと言うことがわかります。

次に各部位の熱貫流率。いわゆるU値です。断熱には一番メインになるところですね。基本的に外張り断熱になることが多いと思います。断熱以外のところで工夫をすれば今回のパッシブハウスのようにあまり厚くない断熱でもパッシブハウスにすることができます。

そして計算の基準となる床の面積や外皮の面積
特に床の面積の出し方が日本の基準と違い特徴的です。有効床面積というのですが壁の厚みや階段など普段使えない空間は面積に算入できません。ですから断熱を内側につけていくとどんどんお部屋が狭くなるので床面積も減っていき不利となります。外壁の色なども重要ですね。色によって熱の吸収の仕方が変わります。

そして熱橋 様々な熱の逃げやすい場所を拾い出し計算します。
この図は基礎と土台、床と壁の取り合いです。床から土台にそして外張り断熱材の受け材の木材に熱が逃げるのがわかります。この熱の逃げが0.066W/mK。土台1mあたり温度差1℃で0.066Wも逃げてしまうのです。
今回のおうちは土台が約40m 真冬内外温度差が20℃あるとすると0.066×40×20=52.8Wもの熱が逃げるのです。大きいですね。今回の住宅は38.63坪+屋根裏収納4.5坪の少し大きめな家です。パッシブハウス用の床面積が117㎡ですから、ピークの暖房負荷がおよそ1000Wくらい。先ほどの土台からの熱の逃げが52.8Wですからおよそ20分の1もの熱に匹敵するのです。大きいですね。パッシブハウスレベルの家には熱橋の計算がいかに重要かおわかりいただけると思います。


ガラスの性能や枠の性能。ガラスのスペーサーなどの性能も重要です。


地盤の影響も考慮します。夏暑い地域では、全体のバランスを考えて地面に熱を奪わせるような設計手法も出てきます。そのようなこともシミュレーションできます。


面倒なのがサッシのinstallψ(インストール・プサイ)値。サッシの取付部の熱の逃げです。表面温度なども見て、結露が起きにくいかもシミュレーションします。
これはとある国産樹脂窓(フィックス窓)を通常の収まりで取り付けたときの様子です。内付けにすればもっと良くなりますね。

‥‥後編(10月号メルマガ掲載)に続く