ニュースレター 2020年8月号コラム

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度のニュースレターを発行しております。

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PHJ相談役 高橋 慎吾

 

 

~寒い家は壊される~

高橋建築株式会社 代表取締役

PHJ相談役 高橋 慎吾

 

寒い家は壊される

これは私の持論です。

今回もお客様と打合せを重ねた結果、リフォームでは無く建て替えとなってしまいました。なぜこうせざるを得なかったのか?一般的な考えでは、できるだけ古いものを活かして使い続けるのが正しいのでは無いかと思えます。私もそう考えました。しかしそういう決断には至りませんでした。

 

25年前、私の考えを大きく変えた出来事

当社は、大工を家業とし受け継がれてきました。この地域では腕の良い大工として、お茶室、数寄屋建築などを手がけていました。しかし、25年くらい前に、築30年にも満たないとても雰囲気の良い和風の建物を壊し建て替えることになったのです。お客様は40代だったと思います。その和風の価値が解らないのかとがっかりしました。理由は「こんなに寒い家には将来住み続けたくはない」ということ。

私たち職人はプライドを持ち、よりよい家を造ろうと精一杯作ります。腕を競い、良い材料を使い、伝統の技術で作り上げていくのです。ですから自分のつくった建物にはとても愛着があり、魂の分身とも思えるくらいです。

壊される建物もまだまだ使えます。本当に素晴らしい価値のある建物です。しかし、「寒い」という理由だけで壊されていくのです。とても悲しい出来事でした。

 

自分が造る建物は壊されたくない。

日本の建物はおよそ30年で建て替えられているそうです。これではとても資源の無駄遣いですし、個人の経済的にも負担になります。壊されない建物を造るにはどうしたら良いのか?私はそのときに決意したのです。「暖かい家をつくるしか無い」。和風の建物を得意としていた工務店としては、当時は一大決心でした。そこから当社の高断熱化の家づくりは始まります。

 

パッシブハウスレベルの家の住み心地を知ってしまう

築20年の家を建て替えることを決断させたもっとも大きな要因は、お客様がパッシブハウスレベルの家を体感してしまったことです。「このような家に住みたい」そうおっしゃいました。「リフォームでこの家と同じにできますか?」そう言われてしまったのです。当社でも高断熱リフォームの経験は多数あります。取り組んできた方は承知しているとは思いますが、かなりの工夫をしても現在作られているパッシブハウスレベルの建物と同じような性能にすることはかなり大変です。

数年前、エコハウスアワードで大賞を取った「雫石の家」が素晴らしい建物でしたが、元も良いというのもありますし、リフォームでもほとんどいじり直すレベルの内容で取り組んでいます。とても大変では無かったのかと想像しました。

 

どこまで直せば、良いのか?

私も日本一たくさん家を建てている建設会社の断熱等級4の建て売りを買いました。そしてそれを200万円のお金をかけ断熱リフォームをしました。天井に200mmを追加ブローイング、気流止め、ペアガラスの内窓設置です。しかしそれでも私が20年前に建てたもう一軒の自宅より寒いのです。数字上のスペックは今回の建て売り断熱リフォームの方が性能は高くなったにもかかわらず。リフォームには限界があると言うことをしみじみ感じました。本当に暖かくするには、構造材だけを残すくらいの大胆なリフォームしかないのでは無いかと感じました。

今回のお客様は「パッシブハウスレベルの住み心地」を求めています。もちろん社会的には、リフォームをするべきだという流れがあるのも承知しています。

私にはリフォームで「パッシブハウスレベルの家の住み心地」を実現することは難易度が高いと感じてしまいました。

 

「壊されない家」の断熱レベルは?

壊されない為にはどこまで断熱すれば良いのでしょうか?家の性能の向上は日進月歩です。20年前は次世代省エネ基準 現在の指標では HEAT20の提唱する G1,G2グレード。そして昨年案が出されたG3グレードがあります。もちろん我々が目指しているパッシブハウス。できればパッシブハウスにするのが良いのに決まっています。しかし現実では予算の問題などもあります。

私は現在のところ、どのレベルまでとははっきり言うこともできませんが、「できるだけ後悔の無いところまで頑張るべき」と思います。そして大切なのは、基本的なことをきちんと押さえておくことです。これをしておけば将来の性能向上がやりやすくなります。基本的なところとは、気密、防湿、断熱ラインをしっかりとることだと思います。熱橋対策も必要です。私の建て売りの家の事例のようにこれがしっかりできていない住宅は、断熱材を足しても快適な性能は得にくいです。

「将来の性能アップを考え、基本性能だけは確保しておき、後悔の無いところまで断熱する。」それが私の出した「壊されない家」の結論です。

 

今回の家は壊し「壊されない家」に建て替える

これが、今回築20年の家を壊して建て替える言い分けです。和風の良い家ですが、基本的なところまで直すのは,とてもお金がかかります。資源も労力も新築以上かもしれません。基本的なところを直さないと、お客様が望むパッシブハウスレベルの住み心地」にはできません。

今回建てる家は壊されないように、私の技術を尽くします。

皆さんはどう考えるでしょうか?

立場により違うとは思いますが、ご意見をお聞かせください。