エコハウス・アワード2017 最優秀賞 倉敷の家

エコハウス・アワード2017にて、最優秀賞を受賞した倉敷木材株式会社の「倉敷の家」。受賞の決め手を、パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわと、理事 松尾和也、両名に聞きました。

 家の温熱環境が変わるとライフスタイルが変わる、それを施主自ら見越して空間をデザインしたところが、このプロジェクトが評価されるポイントではないでしょうか。

松尾 誰にでも手に入りやすい建材ばかりで普及型のパッシブハウスを作ったということに大きな意義があると思います。

s_image11

今回は、「倉敷の家」オーナーである倉敷木材株式会社の福本さんと奥様に、家の快適さと、会社としてパッシブハウスに取り組むようになった経緯をお聞きしました。

こだわったキッチンよりも、家の快適さに毎日感動する

ー奥様は家の性能に元から興味があったんですか?

奥様 性能に関しては全く興味がありませんでした。私にとっては間取りが大事だったので、性能は任せます、と。実際に住んでみると、快適さにびっくりしました。自分は幸せものだなって思っています(笑)。

s_image10

ー建てる前と後では、考え方に変化があったんですね。

奥様 住む前は、意匠とかキッチン周りが気になりますよね。でも、キッチンは思い通りのものが完成すれば、一旦満足なんです。実際に住んでみれば、快適さは24時間常に感じるものですから、性能の重要度がぐんと上がりました。

今までの家とパッシブハウスでは妊娠中の思考回路も変わる

ー今、気づきましたが、妊娠されてるのに、裸足ですね!?

奥様 そうなんです。前の家では靴下を四重にして、ルームシューズも履いたんですよ。パッシブハウスに住むようになってからは、室内の服がずいぶんと薄着になりました。妊婦生活を身軽に過ごせるのは、とても楽です。1人目は里帰り出産をしたのですが、今回はやめました。実家が寒いんですよ。ここでの生活に慣れたら、他の家の寒さはなかなか耐えられません。

s_image7

長生きできる家を探していたらパッシブハウスにたどり着いた

ーそもそも、どうしてパッシブハウスにしようと思ったんですか?

福本 長生きしたいからです。僕が今年45歳で、妻が32歳。13歳離れているので、20年くらいは僕のほうが先に死ぬと思うんですよ(笑)。だから、気温差による負担がないパッシブハウスに住んで、なるべく長生きして、迷惑をかけないようにしたかったんです。

s_image15

ー長生きしたくてパッシブハウスを建てたというのは、はじめて聞きました(笑)。

福本 さらに正直に言うと、家を建てる前に「パッシブハウスを建てる!」って公言しちゃったんです。ある程度、間取りや仕様を決めてから、パッシブハウス・ジャパンの森さんに相談しに行ったら、想定よりも断熱をあげないとダメだということが分かりまして(笑)。お金はないけど、建てないとかっこ悪いし、とにかく頑張りました。

s_image5

s_image6

s_image12

ー間取りは変更しなかったんですか?

福本 そういう話も出ましたが、自分たちの理想の暮らしや間取りを諦めるのは、納得できなかったんです。

奥様 ちょっと意地だったよね(笑)

パッシブハウスに住んでみたら、パッシブハウスしか薦めたくなくなった

ー工務店でもパッシブハウスに舵を切るのは躊躇すると聞きますが、倉敷木材さんの場合はどうでしたか?

福本 「あいつ、最近、ドイツだ、ドイツだって言ってるけど、何やってるんだ?」と思われていたはずです(笑)。自分が快適な家に住むために自分で勉強して建てたので、スタッフも、現場の監督も、大工も、こんなに厚い壁は絶対にいらないっていう意見の人がほとんどでした。

ーどうやって、その状況を変えたんですか?

福本 快適さを実感してもらったことが大きいと思います。我が家は中国地方ではじめてのパッシブハウスなので、工務店さんがたくさん視察に来てくれたんです。そうすると、社内はざわつきます(笑)。

s_image9

福本 実際に来てもらえれば、暖かさが実感できますから。その後、スタッフが高性能な家を建てたりもして。良さが伝わると、こんなに良い家なのにお客さんに提案できないのはよくないねというのが、社内の認識になりました。弊社は年間30棟くらい建てていますが、今ではパッシブハウスレベルの家がほとんどです。

s_image3

s_image8

パッシブハウスには人生を変える力がある

ーえ、ほぼ全部この性能で建てているということですか!?

福本 そうですね。年間暖房負荷15kWh/㎡くらいを全棟標準にしています。G2が標準のときもありましたが、性能をちょっとあげるくらいでは、生活は変わらないんですよ。お客さんの家に行くと、冬はエアコンもホットカーペットもついているし、家によってはコタツもあるし、ダウンも着てる。

s_image1

福本 パッシブハウスレベルまで性能をあげれば、変化が大きいんです。家の中では1年中Tシャツでいいし、子どものオムツを変える時も楽。洗濯物も減りますし、冬用布団や毛布はいらなくなります。

s_image14

ー生活が本当に変わりますよね。

福本 そうなんです。パッシブハウスには、生活のクオリティをあげて、自分たちの人生を変える力があります。寒さに備えなければいけない生活だったら、この庭は維持できないんです。暖かくて、ボーっとする余裕があるから、庭とじっくり向き合える。時間や気持ちのゆとりを持つことで、他のことができるんです。

s_image2

福本 こういったことって、お金で買えない価値だ、とよく言いますが、パッシブハウスにすることで ”買える” んです。それなら、パッシブハウスにしなければ、損ですよね(笑)。

s_image13

リノベーション賞 大町タウンハウス

庶民でも、賃貸でも、諦めない。 リノベから生まれるパッシブハウスへのウルトラC

2016年3月に開催された第一回目のエコハウス・アワードにてリノベーション賞に選ばれた「大町タウンハウス」。パッシブハウス・ジャパンの代表理事 森みわの自宅である賃貸物件を、森自らがリノベーションしたのがこのプロジェクトです。HOME’S総研所長/一般社団法人リノベーション住宅推進協議会設立発起人の島原万丈さんと、森との対談が、授賞式の当日に行われました。

賃貸をリノベーションして、高性能な家にする。この対談を通じて、日本のこれからの住まいにマッチした、パッシブハウスの広がり方が見えてくるのではないでしょうか?

s1050PEA1614_7

制約ゆえに生まれる、アクロバティックさ

島原 『リノベーション住宅推進協議会』で、毎年『リノベーション・オブ・ザ・イヤー』というコンテストを開催しています。そういったこともあり、今回のアワードでも、リノベーション部門を担当させていただくことになりました。

 私からは技術的な面の解説というよりも、リノベーションの面白さを考えていきたいと思います。

HOME'S総研所長 / 一般社団法人リノベーション住宅推進協議会設立発起人の島原万丈さん

HOME’S総研所長 / 一般社団法人リノベーション住宅推進協議会設立発起人の島原万丈さん

島原 リノベーションならではの楽しみ方は、既存の建物の制約条件をどうクリアしていくかということですよね。その方法は、とてもアクロバティックで、これこそがリノベーションの面白さだと思っています。

 大町タウンハウスの優れているところはいろいろありますが、特に賃貸であることに注目です。1500万円の費用を負担する代わりに家賃を下げてもらい、10年間の定期借家ののち、現状復帰せずに返します、と。こんなにもアクロバティックな方法は、聞いたことがない。住宅の手に入れ方すら “リノベーション” されているわけです。

 ということで、さっそく森さんに伺いたいのが、賃貸でやろうと思った理由です。

お金持ちじゃない自分がパッシブハウスに住むためには?

s1050PEA1614_6

 ありがとうございます。私は鎌倉パッシブハウスを皮切りに、日本で高性能な家を立て始めたのですが、すぐに坪単価の壁にぶち当たりました。

 だいたい70~80万くらいになってしまうんですね。パッシブハウス・ジャパン理事の松尾さんにも『森さんの建てる家は庶民には買えない』とよく言われてしまうのですが(笑)、それなら、庶民である私が、どうしたら高性能な家に住むことができるだろうと考えました。

 ローンはいくら組めるか分からない。別の賃貸に引っ越しても性能は似たり寄ったり。でも、激寒の賃貸で家族間でインフルエンザがグルグルまわるような状態にももう耐えられない。ドイツ育ちの夫には「こんな暮らしは人権侵害だ」とか言われるし。だから、高性能な家に住む新築以外の方法を求めたのが、今回のプロジェクトなんです。私は、とにかく良いものしか作りたくない(笑)。新築を諦めたとしても、リノベーションならこんな選択肢がある、ということを自ら発信しようと思いました。

パッシブハウス・ジャパンの代表理事でもある森

パッシブハウス・ジャパンの代表理事でもある森

 まずは、大家さんの説得からスタートです。私がやろうとしていることで、どんなふうに物件が変わるのかをきちんと説明しました。私はこの家にこのぐらいのお金を投資するけど、それは絶対に価値になるものであること。キッチンカウンターが大理石になる、というような、次に住む人にとって価値になるかわからないものではないこと。説得の末、大家さんが理解してくれて、実際にプロジェクトを進めていくことになりました。

s1050PEA1614_3

島原 なるほど。実際のリノベーションに関しても、変形した建物ですし、コンクリート仕様ですし、ご苦労が多かったのでは?

 そうですね。でも、そのとき既に2年間も住んでいましたから、この家の問題点に関してはいろいろわかっていました。この家に越してきて冬が来たとたん、生まれて初めて喘息症状が出た息子ですが、どこの部屋で症状が一番酷くなるかとかいう事が明らかになるにつれ、自分の建築物理学の知識を持って色々な事を予測出来る様になったり。それ以外にも本当にいろいろな事がありましたから、それこそ命がけで実験していたわけです。それでも実際に工事に踏み切って内装を撤去した時には、やっぱりね、という状況が8割で、マジか?!みたいな想定外の状況が2割くらいあった気がします。

 実はうちの窓は、奈良県十津川村の杉を集成材にして、ドイツのサッシ屋さんに高性能な窓にしてもらいました。杉は断熱性能が高いので、同じ窓枠の断面でもヨーロッパで流通している窓よりも性能が上がったと、サッシ屋さんが喜びました。十津川村の森林組合の方々は、こんな所で杉の長所が活かされるなんて思いもしなかったと誇らしげでした。この窓を目にした多くの専門家の方々が、国内で今後、同等の窓を製造するために各方面に働きかけてくださいました。

 雪の降る寒い日、薪ストーブを使わないで家の中でチーズフォンデュをしていたら、室温が24度位になってオーバーヒートしたり、息子の友達が薪ストーブで作る焼き芋用のサツマイモを持って遊びに来たり、微笑ましいエピソードが沢山出来た我が家です(借り物ですけど)。

s1050PEA1614_2

 開口部は大きいし、ユニークなデザインゆえの制約も多かったですが、新築じゃ思いつかなかったようなウルトラCを生み出せたという点で、このプロジェクトにはすごく感謝しているんです。とにかくお金が無かったことが幸いしてか、この小さな改修プロジェクトを通じて、日本中にストックとして残っている無断熱RC造の集合住宅の省エネ改修に関して、私なりのストラテジーが確立されたような気がします。

今の自分は”日本一快適でエコな賃貸生活をしている!”と自負していますが、近い将来これが当たり前になってしまい、自慢のネタにならなくなるとしたら、それは喜ばしいことだと思います。何よりも大家さんが『次に住む人は私だから』って言ってくれているのもうれしいですね。ちゃんと伝えれば、分かっていただけるんです。

施工の高橋建築 高橋さんと一緒に記念撮影

施工の高橋建築 高橋さんと一緒に記念撮影

賃貸をリノベーションして、高性能にする。こういった選択肢の広がりが、人と家の関係を良好にしていきます。お金持ちでなくてもパッシブハウスに住める未来への一歩は始まっていますね。

意匠賞 奥州パッシブハウス

建築はもっと自由になれる。パッシブハウスならではのデザインとは?

先日開催された第一回目のエコハウス・アワードにて意匠賞に選ばれた「奥州パッシブハウス」。施主は工藤建設㈱。燃費計算を担当した花澤淳さん、設計を担当した菊地建さん、審査員である竹内昌義さんに奥州パッシブハウスのポイントを伺いました。

パッシブハウスだからこそできる空間づくりとは何か。あらためて考えるきっかけになるのではないでしょうか?

1

竹内 この意匠賞というは、つまりデザイン賞ですが、今回のエコハウス・アワードでは、「パッシブハウスにおけるデザインってなんだろう?」ということを考えて、選考しました。パッシブハウスだからこそ作れる空間とは、どんな空間だろうか。庇(ひさし)や、バルコニーをきれいに収めるということは技術的な観点のひとつだと思いますが、僕がとても魅力だなと思っているのは、ワンルーム、つまり、空間がひとつになることで生まれる自由です。

3

奥州パッシブハウスの平面図

奥州パッシブハウスの平面図

菊地 高性能な家に関しては、そもそも個室をつくる必要性が薄れてきていると思います。

竹内 そうですね。ワンルームとはつまり、空間が遮断されることなく連なり、大きな部屋になれること。それにより生まれる自由があります。
例えば各部屋のエアコンがいらなくなりますよね。室外機が何台も並んでいるのは少し格好わるいけど、1台なら隠すことも可能です。逆に言うと、エアコン1台で足りるようにするには、パッシブハウスを目指していくことになります。

建築家 竹内昌義さん

今回の審査員であり、建築家の竹内昌義さん

菊地 各部屋に1台ずつストーブを置いて温まるというのが、東北地方の家の常識です。でも、奥州パッシブハウスは、薪ストーブ1つで建物全体を温めることができます。例えエネルギーの供給がストップしたとしても、薪のストックがあれば暖かさを維持できますから、災害時にも強いのです。

写真左にあるのが、奥州パッシブハウスに導入されている薪ストーブ。この1台で家全体があたたまる。

写真左にあるのが、奥州パッシブハウスに導入されている薪ストーブ。この1台で家全体があたたまる。

個室ってなんだろう?意味を問いなおす時代

竹内 そうですよね。極端なことを言えば、玄関すら分けなくていいと思います。視線のコントロールは必要ですが、玄関をメインの空間に持ってくることもパッシブハウスなら可能です。それくらい自由になります。
 奥州パッシブハウスは、正方形の建物の真ん中に階段があって、そこを起点にグルグルと空間を回ることができるようになっています。この空間の流れがすごくいいなと思って、意匠賞とさせていただいたんです。他の物件も優れたものはありましたが、やはり個室を作りたくなってしまう。でも「個室ってなんだろう?」と考える時期に来ているのではないかと思います。夫婦の寝室は個室にしないと困ることもあるだろうけど(笑)、湿度環境を保つには、お風呂だって空間に対して開(ひら)けているほうがいい。

6

菊地 そうですね。ただ、私たちは、パッシブハウスを建てた実績がなかったので、地域の工務店さんや、設備の方など、みんなで一緒になって、あぁでもない、こうでもないと言いながら四苦八苦でした。

花澤 建物の燃費をシミュレーションする「建もの燃費ナビ」の使い方にも苦労しました。
当初、岩手県南の一関市(4地域(旧Ⅲ地域))の気象データで暖房負荷を計算していたのですが、それでパッシブハウス基準である15kWh/㎡・年をクリアしても(14kWh/㎡・年)、奥州市(3地域(旧Ⅱ地域))に適用すると暖房負荷が2倍近くまで(27kWh/㎡・年)まで上がってしまったということがあったのです。(※奥州パッシブハウスは年間暖房負荷15kWh/㎡・年ではなく最大暖房負荷10W/㎡でパッシブハウス基準をクリアしています)
改めて寒冷地での暖房負荷低減が大変であることを認識しました。

授賞式に参加いただいた、施工担当の花澤淳さん

授賞式に参加いただいた、施工担当の花澤淳さん

竹内 大変ですよね。でも、そういったみんなで行う試行錯誤がよいのだと思います。デザインがいくら優れていても、施工技術が高い工務店さんがいなければうまくいきません。設計者さん、工務店さん、設備屋さん、それぞれが、それぞれのいいところを学び合えることが大切なのかなと思います。関係者がイーブンにパッシブハウスについて考えていく環境が理想ですよね。

花澤 私たちも、地域一丸となって、パッシブハウスの普及にチカラを入れていきたいなと思います。

7

いかがでしたでしょうか。パッシブハウスを目指すことは、家の燃費の向上だけでなく、間取りの自由、ひいては住まい方の自由をもたらすという話、目からウロコでした。次回のアワードではどんな自由な発想のデザインが登場するのか、いまから楽しみですね。

エコハウス大賞 新潟信濃町の家

ないものは作り、高性能な家を建てる。第一回目エコハウス・アワード大賞は「新潟信濃町の家」

栄えある第一回目のエコハウス・アワードの大賞は「新潟信濃町の家」に決定しました。受賞作品発表後、設計を担当した西方設計の西方里見さん、西方響子さんと、PHJ代表理事 森、PHJ理事 松尾と4人で公開対談を行いました。

パッシブハウスの生みの親、ファイスト博士にも通じる、ないものは作ってでも高性能な家を建てるという情熱は、大賞にふさわしいということを誰もが実感したのではないでしょうか。

ないものは作る。窓でさえも。

松尾 この度はエコハウス大賞、おめでとうございます。さっそく作品について話していきたいのですが、ぼくは常々、断熱と防犯は、お金をかけようと思えばいくらでもかけられる分野だと思っています。ですから、だいじなのはコストパフォーマンスであると。西方さんは、例えば、断熱性がすごく高いのに、日射取得率も高いという、相反する性能を両立させる窓を、コストを相当おさえながら実現している。これをヨーロッパからの輸入サッシに頼ったりすると壁一面で300万円ぐらいかかると思います。しかし、今回は80万円で実現させた。この辺りが本当にすごいなと思っていて。なおかつ見た目のデザインもすごくよい。こういったバランスですよね。

s1050PEA1621_5 2

西方里見 松尾さんがね、最初に出てきた時に「ニヤッ」としたんですよ。でも、大賞は最後で、なかなか呼ばれないから本当に心臓に悪い(笑)。あらためてありがとうございます。この「新潟信濃町の家」は、「オーガニックスタジオ新潟」と、われわれ「西方設計」とのコラボで何かおもしろいことができないかということで居酒屋で生まれたアイデアです。ホームページに「施工はオーガニックスタジオ新潟、設計は西方設計、このコラボの家がほしい人はこの指とまれ!」と冗談半分で書き込んだら、ありがたいことにその3週間後、建ててほしいという方から連絡がありました。

s10500304-394

西方設計の西方里見さん

 私がすばらしいなと思ったのは「ないものは作る」という西方設計さんの発想です。今回の物件に関しても、必要な窓を作ってしまおうなんて、何年かかるか分からない壮大なプロジェクト。失礼ながら「どうなっちゃうんだろう」なんて思いもありながら、ずっと気になっていたんですが、形になって、建物全体とも調和していて、もちろん省エネ性能は高い。

s1050PEA1621_5

西方響子 これまでのノウハウはうちにもあるんですが、今回は、初めてやることも多くて。図面も何度も書き直しました。

s10500304-395

西方設計の西方響子さん

 そうですよね。ドイツのパッシブハウスの生みの親、ドイツのウォルフガング・ファイスト博士は、当時パッシブハウスをやろうと思った時に適した窓がなくて、しょうがないから自分で考えて作ったそうです。日本の工務店さんでは「メーカーさんにこういうものを作ってもらおう」というのは出てきにくい発想なのかなと思います。でも「こういうものがほしいんだ!」っていうのをメーカーさんに伝えて、それで実際にできたものを見て、メーカーさんが心動かされることもあります。
 ないものは作っていく覚悟で、理想的な建物にしていくというのは、本当にすばらしい取り組みだといつも思っています。大賞にふさわしい作品です。

松尾 私もそう思います。床下エアコンの使い方は、これまでの経験から少しずつ改善されてきた結果ですよね。

s1050PEA1621_6

西方里見 エアコンで温風を人に当てるのではなく、床下を温めて、床の温度を24℃くらいにする。室温が21℃でも、床下の温度を2~3℃あげるということで、非常に気持ちのいい温輻射になります。逆に夏は何もしないで、床の表面温度は25℃くらい。2階にはファンで風を送ります。

 防火雨戸も、すごくいいですよね。私もまねしたいと思っています(笑)。

赤い雨戸が言及されている防火雨戸

写真の赤い雨戸が防火雨戸

西方里見 ここは準防火地域なので、2階の窓は延焼ラインに引っかかってしまう。鋼鈑を巻き込んだ防火雨戸にして仕様規定をクリアしています。これによって非常に安く費用をおさえ、デザインのアクセントにもなっています。

 それでは、最後に、これから高性能な家造りに挑戦しようとしている設計者に何かアドバイスをいただけますか?

s10500304-396

西方里見 もうすでに、意識が変わってきている設計者がたくさんいます。そういう人が一定以上になれば、常識が変わる。寒い家というのは変な家なんだということが、当たり前になるはずです。次から次へと若い世代が出てきているから、私も頑張っていかないと(笑)。

左からPHJ理事 松尾和也、西方設計 西方里見、西方設計 西方響子、PHJ代表理事 森みわ