第15回国際パッシブハウス・カンファレンス・レポート

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5月27日から29日までオーストリアのインスブルクで開催された第15回国際パッシブハウスカンファレンスに参加してまいりました。今回は世界50か国からの参加者が集まり、ますますパッシブハウスの国際化が進んでいる様子が伺えました。ところがオープニングのファイスト博士のプレゼンテーションの2枚目のスライドは福島第一原発3号機の爆発で現れた巨大なきのこ雲。周囲の参加者の目が一斉にこちらに集まるではないですか。もしかすると今私たち日本人は、国際社会から津波という自然災害の被害者としてではなく、原発事故という人災の加害者として見られているのかもしれない、と感じた悲しい瞬間でした。

今回のカンファレンスでは各国のパッシブハウス・プロジェクトが紹介され、併設の展示場では更に進化を遂げたパッシブハウス向けの建材や工法を見ることが出来ました。特に、プサイ値(ヒートブリッジ係数)をゼロにするためのディテーリングの提案が目立ちました。実はパッシブハウス設計ではヒートブリッジを数値化する必要がありますが、その計算には費用が発生するケースも多く、設計に通常以上の時間とお金を要することもあります。ヨーロッパのエネルギーコンサルタント達は、一般的にヒートブリッジを完全に回避するようなディテーリングのアドバイスをすることが多いのですが、コストや意匠、そして温熱性能のバランスを図らなければいけない建築家の間では、頻度の少ないディテールにおいてはコストや意匠性重視でヒートブリッジのリスクを負い、解析によってその安全性を証明した上で、プサイ値による減点を正直にPHPPに入力する、というのが一般的なやりかたです。

プサイ値は、その部位からの熱の逃げを、その周囲の断熱性能を元に相対的に評価した尺度ですので、乏しい断熱性能の日本の家では無視することが出来ました(家全体が巨大なヒートブリッジでしたので)。外壁や屋根等の断熱性能がパッシブハウス達成のためにじりじりと上がり始めた今、プサイ値をいかにゼロに持ち込むかがヨーロッパの建材開発者や設計者の腕の見せ所となった訳です。

他にも印象的だったのは、世界中から集まる設計者達が、自国の木造建築の高層化を競い合っていました。ヨーロッパの木造建築は既に10階建てを超えています。集合住宅においても、防火のコンサルタントが入り、火災を想定した木造住宅の安全性が厳しく要求されています。

また、ドイツ環境財団(DBU)の補助金を受けている“世界5都市におけるパッシブハウス”という研究の中間発表も行われ、エカテリンブルク、上海、東京、ラスベガス、ドバイという全く異なる気候風土の5都市におけるパッシブハウス設計のアプローチが発表されました。東京向けのパッシブハウスのプロトタイプ提案に対しては、これまでパッシブハウス・ジャパンが助言を行ってきており、鉄骨3階建ての1階が一部駐車場、隣家までの距離2メートルという設定で、ユニットバスあり、和室ありのなかなかリアリティーのある設計となっております。

ヨーロッパよりもさらに年間平均気温が下がる地域においては、年間暖房負荷の基準を引き上げる提案があった一方、ヨーロッパよりも年間平均気温が高い地域においては、冷暖房負荷それぞれ現状の年間15kWh以下のままとするとの方針発表となりました。

閉会式ではアメリカの環境問題におけるシンクタンクのロッキーマウンテン研究所を創立したエイモリー・ロビンス氏にパッシブハウス・パイオニアアワードが送られました。同氏の著書は以前PHJのメールマガジンで松尾理事が絶賛していましたが、同氏が1983年にコロラド州に完成させたグリーンハウスには、パッシブハウスの概念に通じる要素が詰まっています。エイモリー・ロビンス氏はまさにファイスト氏も認める、パッシブハウスの生みの親の一人であるという訳です。

来年の第16回国際パッシブハウスカンファレンスの開催地はドイツ・ハノーヴァーに決定いたしました。今回は震災の影響で視察ツアーをやむなく中止いたしましたが、来年はご要望があればまた企画する予定です。

国際パッシブハウス・アソシエーションiPHAのウェブサイトでは、ニコニコフレームへの募金の呼びかけが続いています。今回のカンファレンスで私も自ら東北支援への協力を訴える機会をいただきまして、参加者よりさまざまな支援のオファーをいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

代表理事 森みわ

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第4回省エネ建築診断士セミナーの受付開始

第4回省エネ建築診断士セミナーの受け付けが6月1日から開始になりました。

7月21日(木)・22日(金)の2日間、東京北青山の東京芸術学舎外苑キャンパスにおきまして、一般社会人向け講座「東京芸術学舎2011夏期講座」の中の1プログラムとして行われます。

お申し込み先は東京芸術学舎になります。
お申し込み方法等、詳しくはこちらのHPをご覧ください。

日本エネルギースター協会のセミナーのご案内

6月21日(火)午後3時より、一般社団法人日本エネルギースター協会が「省エネ概論&住宅省エネ政策」のセミナーを開催いたします。

米国での省エネ基準を作っているRESNETという民間団体と米国のPASSIVE HOUSE INSTITUTEが、今年の2月に省エネ住宅に関する基準についてパートナシップを締結。RESNETの基準をクリアした省エネ住宅はエネルギースターというラベリングを受けることが出来ます。

21日のセミナーに関しては、日本エネルギースター協会のHPをご覧ください。