ニュースレター 2018年1月号コラム

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度ニュースレターを発行しております。

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

新年あけましておめでとうございます。

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

2018年の年明けは、各地で積雪も多く、冬らしいスタートとなりましたね。
しかし今年はラニーニャ現象と呼ばれる、エルニーニョとは逆の現象が起こるとのことで、日本列島では冬は寒く、夏が猛暑となる可能性が高いとの事ですから、余り快適な1年にはならないような嫌な予感がいたします。地球の平均気温の上昇は、昨年の3月の時点で2度以上を記録したとの報告があります。今後世界各地でますます異常気象が増えることが予想されますので、大変気が重いところです。

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温暖化のスピードには全く追いついていませんが、パッシブハウス・ジャパンは昨年度、第二回パッシブハウス・アジアカンファレンスを東京にて無事に主催する事が出来、パッシブハウスをキーワードとしたアジア圏での連携がスタートした記念すべき年となりました。今後も引き続き、ドイツを初めとするヨーロッパの環境先進国を手本に、アジアの仲間と連携を強め、グローバルな省エネ運動に貢献していきたいと思います。特に中国政府はパッシブハウスのプロジェクトに補助金を出すなど、具体的な政策に乗り出しているため、今後の展開には期待したいところです。

さて、昨年末にドイツのボンで開催されたCOP23では、日本政府は相変わらず温暖化対策に後ろ向きな先進国であるという事で、今回も不名誉な化石賞を受賞した事は、ネットのニュースでしか取り上げられませんでしたね。また、建築部門に関しては、実はパッシブハウスにも注目が集まっていたそうです。COP23の枠組みの中で開催された、グリーンソリューションアワード(Green Solution Award) 2017では、ボン市内にあるパッシブハウス仕様の学生寮と、ドバイのMohammed Bin Rashid Space Center (MBRSC)という二つのパッシブハウスプロジェクトがノミネートされ、ヨーロッパが目指している地球の平均気温2度上昇の阻止(実際には失敗が報告されていますが・・)と、住環境の改善が達成される模範プロジェクトとして表彰されました。丁度、COP23の開催期間は、ドイツ語圏を中心に毎年開催されている国際パッシブハウス・オープンデーの開催期間と重なったため、COP23のワーキンググループの一つであるGlobal Alliance for Building and Construction (GABC)のメンバーが、市内のパッシブハウス仕様の学生寮を実際に視察したそうです。

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ところで私が昨年度、理事に就任させて頂きました国連環境計画日本協会の本部である、United Nations Environment Programme (UNEP) がまとめたエミッションズ・ギャップ・レポート(The Emissions Gap Report) 2016(添付画像は表紙)の中では、“パッシブハウスが気候変動を阻止するための省エネのターゲットを見据えたエネルギー効率を有する技術”として明記されているのはご存知でしょうか?“エミッションズ・ギャップ”の意味するものは、これまで目標としていたCO2削減量から大きくかけ離れている現状のCO2排出量とのギャップの事であり、これを埋めるために建築、産業、交通のそれぞれの分野でのストラテジーが紹介されており、パッシブハウスに関しては“最もアンビシャスであるが、多くの国でポピュラーなものとなっている”と報告されています。2010年の時点で1,000万㎡だったパッシブハウスの建築面積は、2016年の時点で4,600万㎡にまで達したとのPHIの報告も引用されています(下記黄色の部分)。このように、国連機関のレポートにも登場するに至ったパッシブハウスですが、パッシブハウス誕生から間もない今から20年前には、ドイツ国内でも嘲笑の的になった事さえありました。この事から、皆さんが今、どんなに素晴らしい構想を打ち立てても、賛同者を見つけるまでに少し時間を要する事がお分かりいただけると思います。でも是非皆さん自身の信念を信じ、貫いて行く事を諦めないで頂きたいですし、PHJはそんな皆さんのサポートが出来ればと願っています。

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今年もPHJは1月18日に広島開催のPHJ中国支部の勉強会及び省エネ建築診断士セミナーを皮切りに、全国で情報発信をして参りたいと思います。3月2日には東京にて8周年記念大会、省エネ建築診断士セミナーは5月の名古屋、9月の東京、翌1月の熊本と続いてまいります。そして、第三回パッシブハウス・アジアカンファレンスは8月31日~9月1日に、韓国のソウルで開催が決定しました。韓国のパッシブハウス事例を実際に見ることが出来る貴重な機会ですので、詳細は今後のPHJメールマガジンでお知らせいたします。

最後に皆さんに少し残念なご報告です。毎年恒例のユニセフへの年賀状募金ですが、アジアカンファレンス主催初挑戦の余波もあり、お恥ずかしながらPHJの資金が年末に向けてショートしてしまい、現在5、000人を超えるメールマガジン購読者の皆様への年賀状経費分の50万円のユニセフへの募金が叶いませんでした。企業の規模に関わらず、活動資金の1%でも、人道支援や環境保全のために使う事を皆で目指すことが出来れば、世界はもっと良くなるのではという思いがございます。今年は昨年の反省も踏まえ、より良い運営を心がけて参りたく、引き続き、パッシブハウス・ジャパンをどうぞよろしくお願いいたします。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

人は痛み(不快さ)が強い順に意識が向いてしまう。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

 この14年ほどの間に松尾設計室の建物もどんどん進化してきました。その中で得た経験則を一言で表すと表題のようになります。まずは単純に高断熱化をすすめるところから始まる工務店が一番多いと思います。そうすると一般的な住宅に比べると非常に暖かく快適な住宅になります。ところがそれが実現できたあと、新たな課題が出てきます。「足元がもう少し暖かければいいのに」「温度ムラがもっと少なければいいのに」「寝ているときに特に空気の乾燥を感じる」といったことです。これらは冬のことですが、夏に関しても「夏も家全体涼しければいいのに」という意見も当然出てきます。
 これを人体に例えて考えるとよく理解できると思います。例えば「強烈な頭痛」と「並の腹痛」と「軽い歯の痛み」が同時進行している場合、意識はほぼ「強烈な頭痛」に集中すると思います。そして何としてでもそれを解消しようとします。そこで「強烈な頭痛」が解消すると次は「並の腹痛」が非常に気になり始めます。そこで次はその解消にとりかかります。同様に「並の腹痛」が解消すると「軽い歯の痛み」が気になりはじめ、それもなんとかしたいと思うようになる。。。これが人間という生き物の生理現象であると思います。おそらくこのような仕組みになったのは最も命を脅かす項目から順に解決していかないと生きながらえる事自体が難しかったからであると推測しています。寒さや暑さについても痛覚と同要の傾向が見られます。冬は最も寒く感じる足元を、夏は最も暑く感じる頭部を快適にしてあげないと、全然評価が上がりません。
 今、住宅業界では原価で100万円を切りながら一種換気と併用するタイプの全館空調が各社から続々と出てきています。最低レベルの工務店ではこれから高断熱化に取り組みますが、トップランナーの世界ではこれが現実です。その際、まだ解消しきれていない問題が残っています。かなり高断熱化したとしても1台のエアコンで全館空調すると1階床と2階天井レベルで2℃くらいの温度差が夏冬とも生じること。冬の乾燥問題には全く未対応であること、そして、梅雨時期のしっかりとした除湿能力、数年後に発生するエアコン本体内部のカビに対するメンテナンスに関してもほぼ全社未対応であることなどがあげられます。今から10年後にはおそらく全館冷暖房というのは新築においては当たり前化していくと個人的には予想しています。そうなった場合、最後の「軽い歯の痛み」に該当する項目はこのようなことだと思っています。そこを解消する手法もこれから色々と出てくると思いますが、まだまだ発展途上といえるでしょう。


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