ニュースレター 2017年11月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

40年前の最先端から学ぶこと

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

少しずつ寒い日が多くなって参りました。交通事故の死者数が年間4000人なのに、ヒートショックで年間2万人死亡する国ニッポン。自殺者数は3万人を超えると推定され・・・この国の本当の敵は、幸せの実感が持てない社会構造であって、隣国のロケット攻撃では無いと私は断言したいところですが、先ほどテレビのニュースを見ていたら、日本人の15歳から39歳までの57万人が引きこもりと想定されるという、とんでもない調査結果が紹介されていました。もちろんこの中に自殺予備軍が居るのでしょう。いずれにせよ、国難があるとすれば、それは私達自身の心の持ちようである、そう確信する今日この頃です。家の温熱環境が改善すれば、喜びも増え、体調も改善し、人生のいろいろな事が上手く回り始める人たちを多く見させて頂きました。家づくりやエネルギー問題への取り組みを通じて、若者が将来に希望を持てる社会へと少しずつ変化していく事を願って止みません。

さて、ここ数年は軽井沢でのパッシブハウス建設に関するご相談を大変多く頂きますので、軽井沢の別荘建築というものを改めて学ぼうかと思い立ち、先日脇田美術館に隣接するアトリエ山荘の年に1度の一般公開に参加いたしました。アトリエ山荘は、ドイツに学んだ画家の脇田和のアトリエ兼住居として吉村順三の設計により1970年に完成した別荘で、内部の家具や脇田氏の画材道具も含め、ほぼオリジナルの状態で保存されています。吉村氏らしい絶妙な天井高さや、庭の向こうの木立を眺めるために丁寧に計算された窓のプロポーションなどを、実際に体感出来たことは感動的でしたが、当日はなかなかの冷え込みでしたので、どうしても温熱環境の方が気になってしまい(笑)。

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ピロティの上に横長に配置された居住スペースと画家のアトリエは、南に大きな開口部を持ち、単板ガラスの木製建具が2重に設けられたいわゆるボックス・ウィンドウ方式で、それ自体は40年前のドイツと同じような“パッシブデザイン“に見受けられました。それでもピロティという地熱の恩恵を一切受けないコンクリート構造を軽井沢で採用する事のデメリットは大きく、アトリエ山荘では、なんと全館床暖房が採用されています。1Fのボイラー室で80℃の温風が作られ、それが送風機で2F床のデッキスラブの中に送られます。その温風は居室の北側に設けられたベンチの背もたれの上から吹き出し、勾配天井に沿ってぐるりと室内を循環し、南側の開口部の上にあるチャンバーボックスから吸い出される方式でした。

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内観写真で見た方も多いと思いますが、リビングには暖炉も配置されておりますが、主にこの床暖房システムのお蔭で、冬もとても暖かかったそうなのです。ただし、一晩で灯油を18リットル消費したとのこと!!
40年前の日本の住宅にしては、すこぶる先進的な設備設計かと思いますが、私はここに、“化石燃料を湯水のように使ってでも快適性を犠牲にしない”ドイツの40年前までの家づくりの末裔を見た気がしたのです。フェラーリは飾っておくだけなら許される、とは私の口癖ですが、このアトリエ山荘もそれに当たります。燃費の悪い芸術作品は、是非とも状態良く飾って頂き、年に一度訪れる人々を感動させて頂ければと思います。そして私達は先人同様、その時代の最先端技術をデザインに落とし込まなくてはいけない事を、メッセージとして多くの人に受け取って欲しいと思います。

年に一度と言えば、今年も国際パッシブハウス・オープンデーが11月に開催されます。
こちらは飾り物ではありませんが、連続運転中の正真正銘の低燃費、エコハウスの見学の絶好のチャンスです。人気の物件は既に定員に達しておりますが、私も今年は鎌倉パッシブハウスと茅ヶ崎パッシブハウスで皆さんをお迎えする予定です。

下記は国際パッシブハウスデーのウェブサイト上の世界地図。世界中のパッシブハウスのオーナーがこの年に一度の一般公開イベントに協力してくださっています。今年はカザフスタンやチリからも物件参加がありますね!
https://passivehouse-international.org/index.php?page_id=262

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パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

たった1台のエアコンでこんなにも涼しくなる!

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

未だ夏の通風論者が多いことにがっかりしました。

FBにて散々書いたのをこの場でもまとめておきたいと思います。少なくとも省エネ住宅もしくは高性能住宅を唄う団体、企業が「夏の通風」を唄うのはもうすぐ終わる2017年でできれば終わりにしたいからです。
 
なぜ夏の通風が駄目なのか?
・外部の高温多湿な空気を入れてしまうことになり、暑さによる不快感はもちろんのこと、ダニとカビにとってもっとも居心地が良い状態を作り出してしまう←これが一番の理由!

・日射遮蔽がきちんとできている高性能住宅においては冷房をオンオフ繰り返すよりも24時間連続運転の方が、冷房費が安くあがり省エネにもなる。これはオンにした瞬間の負荷が大きすぎることが連続運転よりも不利側に働くからです。さらに太陽光発電が設置されている住宅だと暑い時間帯ほど発電で相殺してくれるのでほぼ全く負担にならない。もっと重ねていうと、そもそも冷房に使われているエネルギーは平均家庭で全エネルギーの2%程度でしかない。

このあたりまでは言い尽くされた感があるのでおさらいでした。ここからはもう少し踏み込んで考えてみたいと思います。

暖かさや涼しさを感じるには6要素が関係しています。
室温、放射温度、湿度、風速、着衣量、活動量です。このうち建物の側に関係するのは前の4つの項目です。夏に関しては壁や天井の放射温度がヒジョーーーに大きなポイントになります。なぜなら大半の住宅が断熱性能が弱すぎるので外壁、窓や屋根の外側表面の熱さが内側表面にまで伝導してくるからです。これによる強烈な暑さを残りの3項目が協力してかき消すしかない!!これが大半の住宅における実態です。

室温、湿度、風速・・・この3項目のうちエアコンが得意なのは室温を下げることと風速をあげることで、湿度を下げることは苦手です。そこで低断熱住宅では「強烈に温度を下げた強風」にて壁、屋根、窓からの輻射熱の暑さを中和しています。この「強烈に温度を下げた強風」こそが「エアコンは不快だ!!大嫌いだ!!」というトラウマを日本中に生み出した張本人であると断言できます。

日射を遮蔽した高断熱住宅においてはそもそも壁や屋根、窓の内側表面温度が全然暑くないので輻射熱を中和する必要がほとんどありません。よって冷房をつけるといっても「少し涼しいくらいの温度を弱風」で、しかも遠いところで1台だけ稼働しているだけでも十分家全体が春や秋のような「何も感じない」空間にすることが可能です。しかしながら、ほとんどの方はそんな体験を一度も経験したことがないので到底信じることができません。
人間の思い込みというものは「インパクト」×「回数」でできています。これを取り払うには今まで積み重ねてきた「インパクト」×「回数」を上回る経験をさせてあげなければいくら理屈で説明したところで腹に落ちてくれることはありません。

このメルマガを読まれている皆さんが一人でも多くの方に「たった1台のエアコンでこんなにも涼しくなるんですよ!!」という体験をさせてあげることでこの集団洗脳状態のようなものを少しでも解くきっかけになればと思っています。


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