ニュースレター 2017年10月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

カリフォルニアのアヒルを殺せ!?

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

10月6-8日はカリフォルニア州のオークランドで開催されたNAPHNのカンファレンスに参加して参りました。

NAPHNはNorth American Passive House Networkの略称で、パッシブハウス・カナダ、パッシブハウス・ニューヨーク、パッシブハウス・カリフォルニアの3つの団体が交代で開催する年に1度のカンファレンスです。

今回のカンファレンスの副題は”Passive + Renewable”

今回のカンファレンスの副題は”Passive + Renewable”

今回のオークランド開催では基調講演者として国連のSustainable Energy Divisionより、スコット・フォスター(Scott Foster)氏が登壇。本来2050年までに温暖化を2度以下に食い止めようという目標を掲げていたにも関わらず、今年の3月の時点で既に2度の上昇が認められ、2050年までに4度上昇するのか、それとも6度上昇するのか、という厳しい現実と向かい合わなければならないことを強調されました。国連として、世界中で広がるパッシブハウスの運動を全面的に支援するとの言葉が印象的でした。
(カンファレンスの全プログラムはこちらのウェブサイトをご覧ください)

10月のサンフランシスコは日中の気温が30℃に達する事も。

10月のサンフランシスコは日中の気温が30℃に達する事も。

パッシブハウスの推進、およびケミカルもしくはサーマルバッテリーの各家庭での導入がキモ

さて、“Passive + Renewables(パッシブと再生可能エネルギー)”という副題で開催された今回のカンファレンスでは、蓄電池関連のセッションも設けられ、高性能住宅と蓄電技術のマッチングの具体的な議論がありました。

コストパフォーマンスを突き詰めると、ケミカルバッテリー(蓄電池)よりもサーマルバッテリー(貯湯タンク)の方が注目されるべき、という意見もあり、給湯や暖房需要を賄うために日中の太陽光発電でヒートポンプ(もちろんCOPは3.0を超えることが条件ですが)を動かし、サーマルバッテリー(貯湯タンク)に熱を貯める事例紹介がありました。

カリフォルニアでは太陽光発電の普及に伴い、夕刻から太陽光の出力が落ち、宅内等での電力消費需要が一気に上がる、“Duck Curve(ダックカーブ)“という現象が発生しています(下図)。

カリフォルニア州の“ダックカーブ“。このアヒルを殺す、または潰せるかが省エネの鍵を握る。

カリフォルニア州の“ダックカーブ“。このアヒルを殺す、または潰せるかが省エネの鍵を握る。

カーブの形がアヒルに似ている事から、このような呼び名となりましたが、太陽光発電が普及すればするほど、このアヒル現象は大きくなり、余剰電力の価格が下落するというリスクが起こります。この問題を解決し、なおかつカリフォルニア州が掲げる2020年のCO2削減目標を達成するには、建物の暖房負荷の削減、即ちパッシブハウスの推進、およびケミカルもしくはサーマルバッテリーの各家庭での導入が必須ということになるのですね。

2025年にはパッシブハウスの義務化を目指すバンクーバー、2030年までに最低でも40%のエネルギーの削減を目指すニューヨーク

今回のカンファレンスではカナダのバンクーバー市、アメリカのニューヨーク市から、行政の政策担当者が参加、各都市での行政レベルでの取り組みの紹介がありました。

両都市はパッシブハウスを推進する政策を打ち出している事で知られており、バンクーバー市は3年前まではパッシブハウスとは無縁だったそうですが、2025年には義務化を目指しているとのこと。同市でパッシブハウスの認定を取得するプロジェクトは、容積率や建物高さの緩和が認められ、デベロッパーには有り難いインセンティブとなっています。

現在は木造6階建ての集合住宅の計画がこの容積緩和を利用して進行中との事でした。(こちらは同市のウェブサイト。パッシブハウスに関する情報が掲載されています。)

一方ニューヨーク市でも、2050年までに最低でも80%のエネルギーを削減するという意味の80×50を批准、そのためには2030年までに最低でも40%のエネルギーを削減する40×30を目標に掲げています。

その結果、ASHRAE 90.1の定める建築における省エネ基準ではもう間に合わないという事が明らかとなり、独自基準を作成しており、出来るだけ早くパッシブハウスレベルまで独自基準を引き上げることが目標になっているとの事でした。(ASHRAE:アメリカ暖房冷凍空調学会)

シリコンバレー初のパッシブハウスは、3月~10月にオフグリッド運転が可能

シリコンバレー初のパッシブハウスは2009年に竣工した。

シリコンバレー初のパッシブハウスは2009年に竣工した。

2x8工法による木造二階建て住宅の平面図。

2x8工法による木造二階建て住宅の平面図。

最終日の視察ツアーでは、Palo Altoの住宅街にあるパッシブハウス事例を見学しました。シリコンバレー初と言われているパッシブハウスは、2x8工法で建てられた木造2階建て住宅。7kWの太陽光発電を有するこの家のオーナー曰く、15kWhのパワーウォール(テスラ製住宅向け蓄電池)が手に入れば、3月~10月にオフグリッド運転が可能との事です。

給湯や暖房をヒートポンプで賄っている住宅であるため、通年のオフグリッド化は難しいようですが、蓄電池を持たない現在でもオーナーは売電にあまり興味が無いのか、全面道路に自費で電気自動車の充電ステーションを設け、無料でクリーンエネルギーを提供しているとのこと。2009年の竣工以来、年間2000人の見学者が訪れるという事で、他の都市と同様、地域で第一棟目のパッシブハウスを建てるオーナーはかなりの情報発信に貢献していました。

全面道路に設けられた無料の充電ステーション。電気代はオーナー負担。

全面道路に設けられた無料の充電ステーション。電気代はオーナー負担。

最後に、今回私が一番驚いたのは、NAPHNのカンファレンスのメインスポンサーが、ダイキン、三菱、そしてSonnenというドイツの蓄電池メーカー(www.sonnenbatterie.de)の3社であったこと。ダイキンはルームエアコンを展示の目玉商品としていましたが、三菱はルームエアコンに加えて第一種熱交換換気に組み込んだ給気冷暖房のユニットを展示していたのが印象的でした。

スポンサー3社のうちの2社が日本のヒートポンプメーカーとは驚きである。

スポンサー3社のうちの2社が日本のヒートポンプメーカーとは驚きである。

カリフォルニアの夏はそれほど湿度がありませんが、内陸に行くと蒸し暑い地域も多いとのことで、パッシブハウスの夏の除湿の手法に関しては大きな関心が集まっていました。北米には様々な気候が混在していますが、寒冷なカナダと温暖なカリフォルニアの挟み撃ちに大都市ニューヨークが加わり、行政や日本の大手メーカーをも巻き込んで着実にパッシブハウス化が浸透している、今回はそんな印象を確かに感じた視察でした。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

いろんな地域の工務店を見て回って思うこと

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

おそらく全国の工務店さんにたくさんお会いしているという点では新建ハウジングの三浦社長をのぞけば、一番お会いしているほうだと思っています。

そんな中で最近、いろんな意味でそのエリアならではの独自進化を遂げている工務店さんをいくつか見たのでその特徴、及び、なぜそのような進化を成し遂げたのかということを書いてみたいと思います。なお、この分析を見れば、自分のエリアと自社の関係においても見えてくるものがあるかもしれません。

人口も競合他社も少ないエリアで高断熱を売りにできるA社

まずは、A社。緯度的にはそれほど高緯度ではないのですが、局地的にかなり冷え込みが激しい地域。

人口が少なく、競合他社も少ない状況。土地の値段も当然安い。この状況においてA社はそこまで設計力、デザインセンスを磨かなくてもそもそも競合が少ない。また冷え込みが激しいということを住民もよく理解しているので地域で一番高断熱ということだけでまだ十分売っていくことができています。

全国的に見ると、高断熱だけを売りにしている工務店が軒並みダウンしている現状からするとまだこういうエリアでは従来のやりかたが十分通用しています。また土地の値段が安く競合が少ないということからも思い切った高断熱化をやっても総額で施主様がついてこれる。またちょっとした価格差で競合他社に負けることがほとんどないというのもA社の特徴といえそうです。

低断熱仕様だが、地域の圧倒的ブランドであるB社

次にB社、温暖地と言われるエリアでかなり僻地ではありますが、2位の工務店の棟数を3倍以上ひきはなす圧倒的地元トップ企業。

「外断熱」と謳ってはいるが外壁はネオマフォーム20mm、屋根は40mmという昨今まれに見る低断熱仕様、それでも会社の雰囲気、社員の雰囲気といったいわゆる社風は非常に良く、圧倒的ブランド価値があることからもコンスタントに売れている。市場がそれほど大きくなく、かつかなりの僻地なので大手やフランチャイズの進出もほとんどない。

このような理由が複合的に重なった結果、今の時代においても極めて珍しいレベルの低断熱で生き残っている。今までいろんな工務店を見てきましたが、B社の棟数でこういう工務店さんはB社以外見たことがありません。

どんな地域なら顧客が家を建てやすいか / ライバルが少ないか

一般的に都会に行くほど収入も土地代も高くなります。しかしながら、そのエリアによって一般的に分譲されている土地の平均的な面積が若干異なります。また求められる家の面積にも地域性があります。

あとは、名古屋や金沢のように見栄の部分にかなりお金をかける地域とそうでない地域、北陸のように二世帯が多い地域、その他そのエリアの特色というのが色々あると思います。

ただ全国的に言えるのは

○(土地+建物)費用の平均/世帯平均年収の数字がどの程度であるか?

○年間着工棟数/5棟以上の工務店数がどの程度であるか?

によってその地域が顧客側から見て家を書いやすい地域かどうか?業者側から見て激戦区かどうか?の目安になると思います。

すでに開業している方はこれをしったからといって支店を出す場所を検討している人でもない限りどうでもいいことかもしれません。しかしながらこれから独立開業を考えている方にとってはこれらの選択を間違えると人生の全てが変わってしまうほど大事な指標であると思います。


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