ニュースレター 2018年4月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

ヘルマン・カウフマン来日決定

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

今年の鎌倉は、3月中に桜が散ってしまい、少し寂しい入学式を迎えましたが、連日寒暖の差がとても激しく、毎日身にまとうものを選ぶのが大変ですね。さて、今月のメルマガから、カレンダーウィークナンバー(CWN)なるものを入れてみることにしました。誰でも月が替わるとハッとして、「もう○○月なのですね!」という焦りの混じったようなリアクションをしますよね。そして毎年それが12回繰り返されて1年が文字通りあっという間に終わってしまいます。日本ではそれぞれの月に季節感があり、伝統的な祝い事もあって、それは素晴らしい区切りではありますが、仕事をする上では少し時間軸を見失ってしまう感があり、なんとなく時間を無駄にしているような気がしていた私は、もっと正確に時間軸を把握しようと、40歳を機にドイツのビジネスシーンで良く使われていた、カレンダーウィークナンバーを再び日常に導入する事にしました。1年間は52週からなり、今週は今年の15週目なので、CW15/52。もう15週か、と思いながらこの一週間の使い方を考えると、少し時間の捉え方が変わる気がしています。

さて、今月のメルマガの本題ですが、今年はイケダコーポレーションのBIGセミナーの企画のお蔭で、なんとオーストリアのフォアアルベルク州より、私が大好きな建築家、ヘルマン・カウフマン(Hermann Kaufmann)氏が来日します。6月5日(CWN23/52)の大阪を皮切りに、6日の福岡、8日の東京講演へと続きます。キーアーキテクツで2010年頃から主催していた年に1度の欧州省エネ建築視察ツアーでも何回か視察ルートに入ったカウフマン氏の建築は、パッシブハウスというキーワードを抑えつつも、そのシンプルなディテールの美しさで、何時も大変心地の良い空間体験をさせてもらいました。2012年に発売された私と竹内昌義さんの共著「図解エコハウス」の中でも、ヨーロッパ型パッシブハウスの最新作としてカウフマン氏設計のモーシャー(Morscher)邸を紹介していますが、フォアアルベルク州で伝統的な、無塗装の板貼り外壁仕上げを用いた現代的なデザインが彼の建築のトレードマークの一つかも知れません。シュヴァルツアッハ(Schwarzach)にある彼の設計事務所兼住宅を訪れた際は、内外装が合板表し仕上げという潔さに驚きましたが、当時坪47万円で建設されたという究極のローコストパッシブハウスで、建築家としての体を張ったチャレンジが至る所に感じられました。
Schwarzach-office
【カウフマン氏のオフィス外観】上階の外壁は合板表し仕上げ、1階はセメントボードを使用。手前に見えるステンレスの塔は熱交換換気装置の排気用。給気経路は敷地内に埋められたクールチューブから直接地下の設備室に取りこまれる。

ルーデッシュ村の村役場にも2回ほど足を運び、十津川村の村長や森林組合の皆さんをお連れした事もありました。彼の建築の素晴らしさと、ルーデッシュ村のエネルギー改革を含めた村おこしの取り組みは大きな注目を浴び、世界中から視察者が絶えないと言います。当時ガイドを勤めて下さった元村長のポール・アマン氏の言葉を紹介しましょう。「森林資源の豊富なこの地域では昔から林業が盛んであったが、いつしか灯油をエネルギーとして外部から買い取るようになり、住宅建設の際の木造離れも一気に加速した結果、白モミの木(英名:silver fir)の森は手入れされぬまま老化していった。老化した樹木の根には耐力が無く、雪崩の被害が多発するようになっていく。自然災害の多発に遭った地域の中には、人工的な雪崩止めをコンクリートで打てば良いという発想を持つ人々もいた。林業が成り立たなくなった村では過疎化が進み、人口が減少していく。このような状況に歯止めを打つべく、ルーデッシュ村は省エネ村役場建設プロジェクトによって村の経済の活性化を目指すことを決意、地元の森林資源を利用して建設することで、建物のカーボンフットプリントを最小限に留め、村の林業とそれにまつわる産業を活性化させるべきという結論に至った。村役場建設ではヨーロッパで一般的に使用されるOSBの代わりに、地元の白モミの木が斜め貼りされ、ロックウール断熱材の代わりにセルロースファイバーを採用、建物が100年後に解体されるようなケースを考え、外装や内装に使用されている木の仕上げは原則無塗装とし、最後は燃料となって木の寿命をまっとうするでしょう。」
ludesch村役場内観
【ルーデッシュ村役場内観】全天候型の屋外スペースから建物を眺める。ここではマーケットなど様々なイベントを想定。屋根の上には太陽光パネルが設けられ、日射遮蔽の機能も兼ねる。外壁は無塗装の白モミの木。耐久性を確保するために木材の含水率を抜き打ちで現場チェックし、品質管理を行った。

このような農村地域での環境政策の最先端を行く自治体とタックを組むカウフマン氏の、建築家としての信念と彼の生み出す建築空間を、是非日本の皆さんにも体感して頂けたらと思います。同氏にとってはかなりハードスケジュールとなりそうですが、東京講演には私も足を運ぼうと思っています。申し込みは下記のイケダコーポレーションHPより。
https://peraichi.com/landing_pages/view/bigseminar2018?mt=jyBaAHOaABw

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

結局は基本が重要

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

いろんな工務店さんと話をしていてつくづく思うことがあります。商品名や価格は知っていても熱環境、省エネの基本ができていないということです。たとえば熱伝導率と熱貫流率の違い、一次エネルギーと二次エネルギー、暖房負荷の違いなどなどあげればきりがありませんが、そういったことです。
 「そんなことできなくても応用(実務)が出来てりゃいいだろう」という心の声が聞こえて来そうですが、たしかに二流止まり(費用対効果も効果自体も悪い。同業他社よりコスト面でも負ける)でよければそれでも良いと思います。
しかし、一流(健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する)になりたいのであれば、基本は避けて通れません。
 スポーツに例えれば一番しっくり来ると思います。どのスポーツにおいても超一流の人でフォームもしくは基本となる型ができていない人は存在しません。そういう方は小さい頃からそのスポーツにきちんとした指導者のもとで取り組まれて来た方がほとんどだと思います。その結果、最初はフォームや型から入り、今ではどんなに体勢が乱れても最も効率の良いフォームで行えるようになっていると思います。
 私が熱環境に取り組み始めた20年ちょっと前には家の燃費計算ができるような実務者向けのソフトなど皆無に近い状況でした。ですから、当然基本から手計算でやることがそれなりにありました。当時は面倒でしたが、今となってはそれがあったからこそ、手に取るように理解が出来ています。若い人になればなるほど、便利なプログラムが組まれたソフトを使うところから熱環境に入っていきます。それはそれでとっつきやすいのですが、どこかの時点できっちり基本を勉強しないと、効率の悪い我流のフォームが続いていることになってしまいます。これをやっている人は自分がいかにお施主様と会社のお金とエネルギーを無駄にしているかに気づくことすらできません。これはそれぞれの見積もり項目の内容がわからないまま減額項目を決めているのと同じくらいバカバカしく危ないやりかただということを認識してほしいと思います。