ニュースレター 2017年7月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

夏の話をしませんか?

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

今年も7月到来という事で、各地で蒸し暑い日が多くなってきましたね。

外の気温は受け入れる以外ありませんが、室内では少しでも快適に過ごしたい、でもエネルギーは余り使いたくない。そんな皆さんの悩みは夏も冬も共通なのではないでしょうか?

夏の省エネに関しては、風通しを良くするとエアコン要らずのエコハウスになる、エアコンはこまめに切って窓を開けよう、土間のある家はひんやりする、などなど、いろんな説がありますが、実際取り組んでみると、上手く行ったり行かなかったりという事があるでしょう。

いや、上手くいかない人の方が確実に多いのではないでしょうか?!

エアコンを各部屋に付けて毎日の蒸し暑さを凌いでいる人にとって、上記のようなエコハウスはとても現実離れしていませんか?上手く行く場合を詳しく調べてみると、それは大抵、建物周辺の微気候が好条件であったりする事が判ります。風の通り道に立っているような立地、建物の周りに緑が多い立地、西日や朝日が入りづらい方位の立地などがそれです。

もし、日本中の人がそのような立地で家を建てることが出来たら、日本中は今と全く異なる風景になっていたし、そもそも環境問題など取るに足らない話かもしれない程、それは非現実的なことのはずです。

ここで皆さんへの提言その①:
現状の都市の密度を無視したパッシブデザインの話はとりあえず無しにしませんか?!

私は10年のヨーロッパ滞在の中で、パッシブデザインを学び、実務経験を積ませて頂きましたが、夏の省エネに関しては、徒然草の吉田兼好的な夏を旨とした家から学ぶことは多いと今でも思います。但し吉田兼好の家に潜む問題として一つ、冬を捨てたということです。

土間がある家はひんやりするというのもその一つです。“土間を設けて地熱の恩恵を受け、夏は涼しく冬は暖かく“というと何だかエコなアピールに聞こえますが、もし地下1メートルのところにある地熱が夏に15度で、冬に10℃だったとします。夏は確かに冷却効果がありますが、冬は20度の室内空気が10℃の土間に触れて同じく冷却効果があります。暖かくはありません。

ここで皆さんへの提言その②:
冬を捨てたパッシブデザインの話はとりあえず無しにしませんか?!

上記の土間に関して考えますと、例えば夏に27℃の室内空気が15度の土間に触れることで局所的に相対湿度が上がり、カビ臭くなったりします。

従来の布基礎では土壌の湿気に対する透湿抵抗も地熱に対する熱抵抗も無く、無断熱のベタ基礎には透湿抵抗はありますが熱抵抗は相変わらず無い、という状況ですから、伝統的な独立基礎から脱却してからの日本の床下は多かれ少なかれ衛生状況が悪く、常にかび臭かった訳ですが、近年増え始めている基礎外断熱などの工法に切り替わっていくと、全く条件が異なっていきます。外皮(屋根、壁、窓、床)に熱抵抗(断熱性能)もしくは透湿抵抗(気密性能)があるか否かで、局所的な結露やカビ発生の状況がまるで変わるという事を、実務者でもなかなかイメージしにくいようです。

ここで皆さんへの提言その③:
外皮性能を棚に上げたパッシブデザインの話はとりあえず無しにしませんか?!

さて、皆さんと上記の3つの大前提を共有出来たところで、省エネ住宅の夏の対策、即ち機械的な冷房・除湿手法を極力使わない方法、そして機械的な冷房・除湿を出来るだけスマートに使いこなす方法について、皆さんと、そしてアジアのエキスパート達と意見交換する場として、8月24日~26日のパッシブハウス・アジア・カンファレンスを企画いたしました。

先日、8月25日(金)のメインフォーラムの全登壇者のプロフィールが明かされましたが、もちろん一番の注目は独パッシブハウス研究所より初来日のユルゲン・シュニーダース(Juergen Schnieders)博士の基調講演です。蒸し暑い夏を知らない博士が、ひたすら理詰めで追及した夏の快適ゾーンは、一体どこにあるのでしょうか?彼のノウハウの集大成であるPHPP(Passive House Planning Package)の夏のロジックも今回紐解いて頂きます。パッシブハウスクラスの躯体性能を前提に夏の涼の取り方のヒントを教えて頂きます。私の発表の中では、高性能住宅ならではの冷房・除湿の方法を、幾つかの国内事例を用いて紹介させて頂きます。もしも発表された物件を実際に体感してみたい方がいらっしゃいましたら、後日フォローアップの見学ツアーを企画したいと思いますので、当日のアンケートシートにその旨ご記入ください。また、フォーラム最後のパネルディスカッションでは、アンチ・パッシブハウスの前先生、松尾和也理事?も乱入します。大混乱が予想されますが、どんな意見も受け入れるのがPHJ式ですので、お楽しみに・・。

最後に、7月14日(金)が先行割引申し込みの締め切りとなっておりますので、
皆さんお早めにお申し込みください!

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

実務者でもエアコンの実効COPを事前予測

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

手前味噌で恐縮ですが、7月21日に私個人の単著としては初の書籍である「ホントはやすいエコハウス」という本が日経BP社から発売されます。既に予約は可能となっております。その本の中でも書き下ろし部分にて詳細を書いたので、詳細はそちらを読んでいただければと思うのですが、概要だけご紹介したいと思います。

ホームズ君の省エネ診断を使ってみた

今まで実効COPというのは「だいたい7がけだろう」「外気温が低いほど暖房COPは下がる」程度の知識しか知り得なかったというのが実際のところでした。その結果、かなりの上級者であっても余裕率を大きく見込んで理想的な容量よりもかなり大きなエアコンを選ばざるを得ませんでした。しかしながら、ホームズ君の省エネ診断というソフトが出たことによってこの部分が事前にそれなりの精度で予測できるようになってきました。

年間を通しての実効COPだけではありません。暖房期間、冷房期間を通して実際にどのくらいの暖房負荷の時間が何時間ずつあったのか?その負荷の瞬間の実効COPはいくらであったのかということの累積データもグラフとして提示されます。ある瞬間の実効COPを一つ計算するだけでも方程式を20個くらい解く必要があります。実効COPは外気温、室温の変動によって左右されるのでこのソフトでは1時間置きに計算しています。すなわち膨大な量の計算を行っていることになります。にも関わらず、計算結果はたった1分ほどで出てきます。他の同様のソフトでは30分以上かかったりしていたことを考えると隔世の感があります。

前置きはそれくらいにして結論から言うと、連続運転している場合は私が想像していたよりもさらに小さな機器でも良さそうだということが明らかになりました。もう少し詳しくまとめてみたのが下記になります。

・暖房連続運転の場合、最も効率が良い運転方法は確実にメーカーの畳数表示の1/5以下のところにある。そこから先はその地域の寒冷度合、断熱性等によって大きく変わるので各自確認されたい

・冷房に関しては実効COPが9を超える瞬間もある。しかしながら、一番多いのは最低負荷で稼働する場合であった。

・夏の上限湿度も設定できるが、60%と入れるだけでも強烈に冷房負荷が跳ね上がってしまう

・条件を揃えてやると、建もの燃費ナビとほぼおなじ計算結果が出る。実際の建物の過去の実測データとも近い結果が出る。

・部分間欠冷暖房の計算もできるが、その場合、立ち上がりの瞬間の負荷が大きいため連続運転の時に比べると大きな機種でないと容量不足の瞬間がある。とはいえ、メーカーの畳数表示に比べればはるかに小さい。

・冷房、暖房をそれぞれ一台のエアコンで賄おうとすると、寒冷地以外においては冷房の最大負荷の方が大きくなってしまうことがほとんどである。冷房の最大負荷がエアコンの冷房最大能力の範囲内にギリギリ収まるような容量選定にすると、年中容量不足が起こることがない反面、パッシブハウス・レベルの建物を除き、冷房よりはるかに大きなエネルギーを食らう暖房に関してはかなり大きめの機種を選んでしまうことになってしまう。そう考えると、少なくとも冷房用のエアコンと暖房用のエアコンは分けて考えたほうが合理的であるといえる。

他にもいろいろあるのですが、ざっくりまとめるとこんなところだと思います。さわればさわるほど、今まで勘でしかなかったところが明らかになっていくので触っていて本当に楽しく勉強になるソフトだと思います。