ニュースレター 2017年5月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

第21回国際パッシブハウス・カンファレンス in Viennaを終えて

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

4月27日~30日の4日間で、オーストリアのウィーンで開催された第21回国際パッシブハウス・カンファレンスに参加して参りましたので、今回のメルマガで少しご報告させて頂きます。

世界から集まる参加者

参加者は例年通り1000人を超え、またもや中国から200人越えの参加がありました。また建国150周年のカナダからも80人程の参加があり、27日の冷房&除湿ワークショップには、温暖なオーストラリアやニュージーランド、メキシコ、ギリシャ等からの参加が目立ちました。

今年のメーカーブースは合計75社程、その他ウィーン市やオーストリアの行政のブースも含めると、合計90近いブースとなりました。メーカーブースの傾向として、年々換気装置のバリエーションが増えていることに加え、窓周りに施工するための圧縮強度の高い発泡系断熱材やリサイクル建材なども種類が増えています。

会場となったメッセ・ウィーンでは複数の展示会が同時進行していました。

会場となったメッセ・ウィーンでは複数の展示会が同時進行していました。

昨年に引き続き、アイスブロック・チャレンジも開催中。左が断熱厚80mmの家、右が450mmのパッシブハウス。中に入った250キロの氷は、5月28日の時点で何キロになるでしょうか? 一番数値が近かった人には素敵なプレゼントが! そしてなんと昨年の優勝者は日本からの参加者でした!

昨年に引き続き、アイスブロック・チャレンジも開催中。左が断熱厚80mmの家、右が450mmのパッシブハウス。中に入った250キロの氷は、5月28日の時点で何キロになるでしょうか? 一番数値が近かった人には素敵なプレゼントが!
そしてなんと昨年の優勝者は日本からの参加者でした!

メーカーブースではパッシブハウスに限らず、 高性能住宅に必要な建材が沢山紹介されています。 毎年基礎の永久型枠や換気装置のバリエーションが豊富です。

メーカーブースではパッシブハウスに限らず、
高性能住宅に必要な建材が沢山紹介されています。
毎年基礎の永久型枠や換気装置のバリエーションが豊富です。

パッシブハウスPlus認定を取得した学生寮・超ローコスト集合住宅

最終日のオプショナルツアーは、複数の視察ルートが用意される中、私は公共交通を使って集合住宅の事例を廻る回るツアーに参加しました。

複数の視察ルートを調整するのは困難を極めるため、例年ツアー当日まで詳細が明かされない事が多い中、今回は絵本“みんなでパッシブハウスをたてよう!”の著者でもある女性建築家が手掛けた、オーストリア初のパッシブハウスPlus認定を取得した学生寮“GreenHouse”だけでなく、私が大好きなオーストリアの設計事務所、バウムシュレーガー・エバレ(baumschlager-eberle, URL: http://www.baumschlager-eberle.com/)の元所員さんが設計された超ローコスト集合住宅を見学する事が出来た事はとても幸運でした。

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オプショナルツアーでは超ローコスト集合住宅を見学。 ダークグレーに塗られたスチールのエレメントは室内から手動で動かすことが出来、常にファサードの表情が変わります。勿論、日射遮蔽や遮光の役目も。一方、真っ白な中廊下は6階の天窓から光が差し込む神秘的で明るい空間でした。

オプショナルツアーでは超ローコスト集合住宅を見学。
ダークグレーに塗られたスチールのエレメントは室内から手動で動かすことが出来、常にファサードの表情が変わります。勿論、日射遮蔽や遮光の役目も。一方、真っ白な中廊下は6階の天窓から光が差し込む神秘的で明るい空間でした。

ウィーンでは早くから低所得者向けの集合住宅が完備され、福祉も充実している街として知られているそうですが、行政から補助金を受ける学生寮などがパッシブハウス性能を狙う際にも厳しい予算制限があるそうで、建築家は苦労を強いられます。

バウムシュレーガー・エバレは元々集合住宅を得意とする設計事務所で、その彫刻的な外観とは対照的に、開放感のある共用部のデザインが私は大好きなのですが、今回見学した集合住宅も、最上階の天窓から差し込む柔らかい光に包まれた内部廊下は、“廊下“というよりも“路地“というにふさわしいとても開放的な場所でした。

GreenHouseのウェブサイトより。学生寮とはいえ、フィットネス、サウナ、音楽室、学習室、ランドリールーム、パーティルーム、自転車置き場なども全て使用できて家賃は月額274ユーロ~421ユーロ。しかもこの家賃には暖房費を含む光熱費、インターネットやテレビ回線、クリーニングサービスまで含まれているというから驚きです!

GreenHouseのウェブサイトより。学生寮とはいえ、フィットネス、サウナ、音楽室、学習室、ランドリールーム、パーティルーム、自転車置き場なども全て使用できて家賃は月額274ユーロ~421ユーロ。しかもこの家賃には暖房費を含む光熱費、インターネットやテレビ回線、クリーニングサービスまで含まれているというから驚きです!

さて、今回の私の主な渡航目的は、冷房&除湿ワークショップでの発表でしたが、4月の時点で東京都新宿区の東長寺・文由閣がパッシブハウス研究所より、Low Energy Buildingの認定を受けたため、急遽カンファレンスのプログラムの中で認定授与式が執り行われることになりました。

しかしとても急な展開だったため、東長寺の住職のカンファレンス参加が叶わず、私が代わりに認定状を受け取ることになりました。

ここで最後に、認定状授与の際に、博士が会場の皆さんに向けたスピーチを、
私なりに和訳してご紹介いたします。

東長寺のLow Energy Building認定授与は閉館後に貸し切られたウィーン自然史博物館(1889年完成)内で行われました。

東長寺のLow Energy Building認定授与は閉館後に貸し切られたウィーン自然史博物館(1889年完成)内で行われました。

東長寺・文由閣は免震鉄骨造ということもあり、とても難易度の高いプロジェクトでしたが、こうして認定を頂けたことを私自身が一番安堵しているかもしれません。今後の大型建築での取り組みに先駆け、とても多くの事を学ばせて頂きました。

東長寺・文由閣は免震鉄骨造ということもあり、とても難易度の高いプロジェクトでしたが、こうして認定を頂けたことを私自身が一番安堵しているかもしれません。今後の大型建築での取り組みに先駆け、とても多くの事を学ばせて頂きました。

分断する道ではなく、統一していく道を探していくということ。

世界中の人々が、方向性と内なる平和を探し求めています。そこに手を差し伸べるのが宗教であり、世界中の宗教の一番の根底にあるものは何時でも、徹底した、人間的な信念であります。その信念は人々の幸福であり、人々の共生であることは勿論のこと、他者への敬意、そして、死者への慰めの意であります。

ドイツのテュービンゲンにあるグローバル・エシック・インスティテュート(Global Ethic Institute)は宗教の統一の原理を、更に繋ぎ合わせていく活動を行っていますが、この度、教会やモスクに加えて、決意に満ちた仏教のお寺が、この地球を救うための持続可能な解を示してくれたことを、私達はとても嬉しく思います。多くの人達がこれに続き、そして私達は平和な未来への道をきっと見出すことでしょう。

私は以前、東京で東長寺の敷地を訪れる機会に恵まれ、僧侶達に親切に迎えて頂きました。東長寺自身と(設計事務所の)マニフィールドがこのお寺を超省エネ建築として設計し、キーアーキテクツがコンサルタントとしてプロジェクトに寄り添い、そのクオリティを保障してくれました。

アメリカの著名な天文学者、カール・エドワード・セーガン(Carl Edward Sagan)は言いました。“より親切に互いを思いやり、この色褪せた碧い点(地球)を大事にしよう。これがたった一つ、私達の知る故郷なのだから”と。

このプロジェクトに携われたことを、心から光栄に思います。
ヴォルフガング・ファイスト

2018年は3月9日―10日でミュンヘンにて開催されることが発表されました!

2018年は3月9日―10日でミュンヘンにて開催されることが発表されました!

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

日本の電気の一次エネルギー換算係数はかなり改善されている。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

日本には10の地域大手電力会社があります。その全てに配布される社内報「住まいと電化」の記事を依頼されました。こんな機会はめったに無いと思い、各電力会社の一次エネルギー換算係数(PEF)を集められる限りのデータを元に計算してみました。

日本の計算方式・IEAの計算方式

まず予備知識として今の日本の一次エネルギー換算係数は2003年の火力発電のみの平均効率から計算されています。既に14年も前のデータですし、かつ原子力はもちろんのこと、水力発電も太陽光発電も含まれていません。

この計算方法は火力平均と呼ばれるのですが、それに対して従来電気側は全電源平均という原発の効率が100%に近いようなデータを出したがる傾向にありました。

しかし、国際エネルギー機関であるIEAでは原発の発電効率は33%と定めています。(石炭は41.4%、ガスは47.6%、石油が39%なので原発は火力よりも効率が悪いとされています)逆に、水力、太陽光、風力は100%とすることになっています。

全国平均は2.24

この国際的な法則に則って入手しうる最新データである2015年のデータで計算したのが次の結果です。私はこの方式が今のところ理想に近いと考えています。その理由は原発を過大評価していない上に、新エネを最大評価しているからです。また従来の火力平均を採用する限り、いくら新エネが増えたところで電気が適正な評価をされることがない。その結果、最適な省エネを効率よく行うことができないからです。

ここから結果に移ります。全国平均ですが2.24という結果となります。これは水力、ガスコンバインドサイクル、太陽光発電が大幅に増え、石炭が減ったことが効いています。これだけでも従来の2.71という数字よりも2割近く良い結果になっています。

次に皆さんが最も気になる各電力会社別の係数を発表します。参考までに同時に各電力会社別の発電量あたりのCO2発生量(毎年発表されている)も記します。

IEA方式PEF(計算値) CO2発生量(公表値)
北海道電力 2.18 0.676kgCO2/kWh
東北電力 2.14 0.559 kgCO2/kWh
東京電力 2.32 0.491 kgCO2/kWh
中部電力 2.17 0.482 kgCO2/kWh
北陸電力 2.01 0.615 kgCO2/kWh
関西電力 2.23 0.496 kgCO2/kWh
中国電力 2.35 0.700 kgCO2/kWh
四国電力 2.20 0.669 kgCO2/kWh
九州電力 2.22 0.528 kgCO2/kWh
沖縄電力 2.65 0.799 kgCO2/kWh
加重平均 2.24 0.531 kgCO2/kWh

数字を見れば沖縄は良くないが…

これを見るとIEA方式で最も良い結果は北陸電力、逆に悪いのは沖縄電力という結果になります。ただ北陸地域は全国でも有数の一世帯あたりの利用エネルギーが多い地域です。

しかし、沖縄はヒートポンプの効率は全国で一番すぐれている上、そもそも一次エネルギー使用量が全国一少ないこともあります。よって世帯当たりで見ると単純に沖縄が悪いということにはなりません。

CO2発生量で見ると最も良いのが中部電力、悪いのは沖縄電力という結果になります。この2つの結果はだいたい似ているのですが、多少の違いがあります。この大きな理由がIEA方式とCO2から考えた場合の水力発電と新エネの考え方の相違です。

IEAでは両方共効率100%と同等に扱うのですが、CO2から考えると、非常に少ないのは間違いないのですが、新エネのほうが水力発電よりも3.5倍のCO2を発生するとされていること。また、現在はほとんど原発が再稼働していませんが、今後再稼働が進むとした場合、IEA方式では悪化します。逆にCO2で考えると良くなるという結果になります。

エコジョーズよりもエコキュートの方が省エネ

新築住宅において電気を食うのは給湯と暖房です。両方共ヒートポンプを使うことがほとんどなのですが、ヒートポンプは寒冷地ほど実効効率が悪化し、逆に温暖地ほど良い結果が出ます。8つの暖房度日区分と10電力会社を組み合わせた場合に、実際にガスとどちらが省エネになるのかという計算までやってみました。

結果はまた「住まいと電化8月号」を見ていただくとして、結論だけ申し上げると太陽熱温水器を組み合わせない限り、北海道においてもエコキュートの方がエコジョーズよりもIEA方式の一次エネルギーの観点では省エネであるということが分かりました。もちろん太陽熱温水器を併用する場合のガス給湯器はどの組み合わせにおいてもエコキュートよりも省エネとなります。しかしながら、そうしない新築住宅の方が圧倒的に多いのも事実です。そのあたりは冷静に考える必要があると思った次第です。