ニュースレター 2016年10月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

第一回パッシブハウス・アジア・カンファレンス@青島(チンタオ) レポート

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

中国の青島で開催された第一回パッシブハウス・アジア・カンファレンスでお披露目となった“パッシブハウス・テクノロジー体験センター“。省エネのアイデアだけでなく、デザインも高レベルなこの建築が、中国にどんな影響を及ぼすか楽しみです。

完成したばかりの“パッシブハウス・テクノロジー体験センター“

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去る9月22日、23日の二日間は、中国の青島市にあるSino-German Ecopark(中独エコパーク)にて開催されました、第一回パッシブハウス・アジア・カンファレンスに参加して参りました。実は今回のイベントの最大の目玉はカンファレンス会場の入った“パッシブハウス・テクノロジー体験センター“と称する建築物そのものであり、その出来立てホヤホヤが見たいというのが私の渡航の一番の動機だったかもしれません。

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中国という国は、資金力のあるデベロッパーや行政がドイツの省エネ建材メーカーを自国に誘致し、そのメーカーが後押しするドイツのベテラン建築家にデザインを依頼するという、力任せな巨大パッシブハウス建設プロジェクトがこれまでも幾度か浮上しましたが、正式にパッシブハウス認定に至った物件は今回の青島のエコパークが初なのではと思います。細々と木造戸建て住宅でコストパフォーマンスを競う日本のパッシブハウスの進化とは真逆な、国を挙げてのトップダウン方式なのです!!

ドイツの技術力も多分に使われたプロジェクト

今回は設計や施工に携わったプロジェクトチームの他、パッシブハウス研究所からはファイスト博士が招待され、日本からは私がゲストスピーカーとしてご招待頂きましたので、PHJのメンバー数名で渡航して参りました。

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パッシブハウス・テクノロジー体験センターの設計は、今年5月に東京の東長寺で講演されたLudwig Rongen氏、設備設計もドイツで行われ、地熱ヒートポンプや太陽光発電、除湿用に再熱の回路を組み込んだ熱交換換気システムなどが採用されています。計測機器全般はドイツのシーメンス製。トリプルガラスを組み込んだアルミクラッドの木製サッシは中国国内の工場で製造されました。気密測定士もドイツから送り込まれるという、ゼロからのスタートでした。

当日のプログラムについて

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初日は定礎式やこれから始まる新しいプロジェクトの調印式、プレスインタビュー、認定状授与式などセレモニー的な内容の後、主に海外からのゲストとエコパーク関係者による基調講演が行われ、私は日本の2020年の義務基準とパッシブハウス基準の差に関するお話や、茨城パッシブハウスでの給気冷房の取り組みに関する報告などを行いました。

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2日目は4つの部屋に分かれて分科会的なセッションが開催されましたが、同時通訳の設備が無かったため、中国語の発表は残念ながら理解不能。おかげで沢山の人とホワイエでお喋りをする機会を作ることが出来ました。

省エネのアイデア × 美しさ

もともと石が多く採掘された土地に建つ、エコパークのランドマーク的な存在という意味合いで、石ころのようないびつな形の建物がRongen氏によってデザインされ、石の中からシャープな光が放たれる夜景は美しいものでした。“とても美しいデザインだよ。良い仕事をしてくれたね!”とファイスト博士が絶賛すると、ドイツ人の建築家チームは冗談顔で答えました。“もともとのアイディアは君のものだけどね、誰かが美しくラッピングしないとさ!“ 実はこれ、「どんなに省エネのアイディアが優れていても、美しく無かったら決して社会に受け入れられはしないのさ」という彼らの主張を込めているんですね。いろんな意味で、このひとつの石ころ=ドイツ語でein Stein(アインシュタイン)が中国に及ぼす影響が楽しみですね。

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石ころの正体は地上5階、地下2階のRC造。建物には200人程収容できるカンファレンスホールの他、エコパークの事務所機能や建材の展示スペース等がありますが、4階には体験宿泊用の部屋が10部屋以上あり、ベッドやソファーなどが続々と運び込まれていました。準備が整うまでにもう少しかかりそうですが、次回お邪魔する際には是非利用してみたいと思いました。

第二回パッシブハウス・アジア・カンファレンス in Tokyo

実は今回の青島でのアジア・カンファレンスの開催宣言を受けて、もともとPHJで予定していた今年10月のジャパン・カンファレンスを急きょ延期し、来年の8月の25-26日に“蒸し暑い夏”をテーマにした“第二回パッシブハウス・アジア・カンファレンス in Tokyo”を開催する運びとなりました。こちらの内容につきましては、業界の第一線で活躍される皆さんの意見を伺いながら、今後詰めて参りたいと考えております。パッシブハウス研究所及び、青島エコパークからは既に東京開催の支援の意思表示をして頂いておりますが、国内の省エネ推進団体の皆様、そして国際的に事業展開をされている日本の省エネ関連企業様のサポートも絶賛募集中ですので、お気軽にお声掛けください!

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

ダイキンのダクト式のエアコンが流行の兆し

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

高断熱住宅が普及してきた今では、各居室に6畳用のエアコンを設置するのは容量が大きすぎます。そのため、注目を集めているのが、ダクト式のエアコンです。安価に設置が可能なようですが、注意も必要です。

6畳用エアコンは、最大能力でこたつ10台分もの暖房能力がある

昔からカタログに掲載はありました。正式には「アメニティビルトイン形」となっています。長らくモデルチェンジされていなかったのですが、2016年の4月からモデルチェンジされました。新住協を中心にこの機種を使う工務店が増え始めているようです。

最近講演でよく話しますが、今のエアコンの畳数表示は1964年すなわち今から52年前に制定されたまま一度も変わっていません。当時の木造無断熱平屋住宅、Q値に換算すると20という驚愕の数字がベースに容量設定がなされています。だから6畳用エアコンとはいえ定格で2500W(こたつ4台分)最大能力だと6000W(こたつ10台分)もの暖房能力を持っていたりします。しかしながらご存知のように2畳用エアコンといった商品は存在しません。その結果、高断熱住宅が普及してきた現在において、各居室に最小の6畳用というのでも圧倒的に容量が大きすぎるのです。(暖房から計算した場合、冷房の場合は暖房ほどではないが日射遮蔽をきちんと行っている住宅の場合はやはり大きい。日射遮蔽がきちんと出来ていない住宅だと結局畳数どおり必要なこともありうる)

そこで、私なんかは小屋裏に一台だけ冷房用のエアコンを設置して各部屋に分散したりといった工夫をしたり、床下エアコンとして暖気を各部屋に分散したりといったことをしたりするわけです。

ダクト式は非常に安く設置できるが、注意点もあり

 そういうことをしなくても素直にエアコン側で対応できるのがこのダクト式になります。聞いているところによると、1階天井設置で1台完結で済ませられるのであれば原価も非常に安く設置できるようです。

 この機種のカタログを見ると断熱マニアのPHJ会員であれば一種換気と連結させて・・・という期待が膨らむことと思います。しかし、それは技術的には非常に難しいものがあります。通常一種換気の風量は35坪くらいだと150㎥/h、それに対してエアコンは400㎥/hくらいあったりします。強引に直結すると、エアコン側は吸気不足、換気システム側は過剰な外気吸込みになってしまいます。これを解消するには何らかの仕組みが必要ですが、そういう仕組もちらほら出てきているようです。そういった場合を除いて、安易に直結するということはくれぐれもなさらないようにお気をつけ下さい。