ニュースレター 2016年9月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

『あたらしい家づくりの教科書』発売です。

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

ちょっと面白い本ができました。先日発売された『あたらしい家づくりの教科書』です。PHJのチームワークによって新しく作成されたデータ集「UA値 全国マップ」も掲載されており、必見です。

主婦に向けた本。本質的なのに分かりやすい

新建ハウジングでおなじみの新建新聞社からの出版で、企画は最近樹脂窓に力を入れているYKK AP。編集はPHJのウェブサイトをデザインしている暮らしかた冒険家。執筆しているメンバーは、私やPHJの松尾和也を含む、住宅と温熱環境、省エネ等のテーマで講演会も頻繁に行う実務者の面々ですが、何しろ今回は30~40代の主婦層をターゲットにした本にしたいという事でしたので、出来るだけマニアックな内容を排除して、“受け入れやすい”デザインに徹しているところがミソです。

特設サイトはこちら
http://newecohouse.net/

実務者にしか向けられていなかったメッセージを
普通の人に届ける

私的にツボにハマったのが、岩前先生の統計的に言えば「いってらっしゃい、気をつけて」ではなくて「おかえりなさい、気をつけて」が正しい、という一文、そして今泉さんの「さようなら、石油王が儲かる家」。これまでは実務者向けの専門誌に乗ることが多かったこれらのメッセージは、一旦住宅展示場に足を運んでしまった人には絶対に届かなかったんですね。

でも日本人が石油王に貢ぎながらもヒートショックで倒れるような惨めな余生を送らないで済むように、でも少しでも多くの人に私たちのメッセージを届けないといけない。「よし、家を建てるぞ!」という人達も勿論この本のターゲットですが、ある日ふと、「これからの自分たちの住まい、どうしようかな?」「なんで私の家こんなに暑くて寒いのかな?」と漠然と思った人たちに見つけてもらえる本にしたいという、著者全員の想いが叶ったとしたらとても光栄ですし、編集にご尽力された皆さんには心から感謝申し上げます。

PHJのチームワークの結晶「UA値 全国マップ」

実は今回の著書の中で、私と松尾さんの執筆担当部分以外にも、PHJのチームワークが結集したコラムがあります。コラム2の「UA値 全国マップ」は、今回の書籍のために新しく作成されたデータで、燃費ナビアドバイザーの夏見諭氏が全国12都市の気象データから、年間暖房負荷が30kWh/㎡aになるような外皮スペックを逆算、北陸支部サブリーダーの高森英充氏に国交省の基準に従ったUA値換算をして頂きました。

この数値は一見驚異的にも見えますが、パッシブハウス基準の求める15kWh/㎡aの2倍の暖房エネルギーを許容する家。この温熱性能を”過剰だ“と考える政治家は欧米には恐らく一人も居ないでしょう。

そんな訳で、皆さんの身近におられる方に、是非お勧めしてみてください。
お近くの図書館での申し込みも大歓迎です!

amazonはこちら
https://www.amazon.co.jp/dp/4865270590

新建新聞社のオンラインショップでも購入できます。
https://www.shinken-store.com/html/products/detail.php?product_id=307

次回のメルマガ投稿は9月下旬に青島で開催される“パッシブハウス・アジアカンファレンス”の報告を予定しています。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

海の近くは夏涼しく冬暖かい理由を詳細に分析してみました。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

先日、facebookに海から5mの自宅が、冬たった1kmほど離れたところよりも2℃以上外気温が高く、夏も同じく3℃近く低いということを書きました。そこから気になって、もう少し詳細に調べてみると、面白い結果が浮かび上がってきました。

冬の海は熱源、夏の海は冷熱源

以下わかったことをまとめてみます。(横須賀の海水温データが取れたので横須賀での比較です)

・海水は1日の温度変化が0.2℃くらいしかない。それに比べて外気温は1月で8℃、8月で7℃くらいの変化がある。海水の方がはるかに温度が一定している。

・1月に関しては最高気温よりも海水温の方が約1℃高い値で一定していることが多い。最低気温と比較すると約8℃も高くなっている。
 →これは朝方の寒い時間帯ほど海の近くが有利であるということになります。

・8月に関しては1日のうち約7割の時間が気温よりも海水温の方が低くなっている。特に一番暑い時間帯においては5℃近く海水温の方が低くなっている。
 →これは暑い時間帯程、海際が涼しくなることになります。

・1年を通じて見た場合、1月の海水平均温度は1月の平均最高気温を上回っている。
 →すなわち、冬は海は熱源であると言えそうです。北海道で外気温がマイナス20℃でも海が凍っていないことを見ても明らかです。実際先日行ったばかりの函館は海に囲まれていることもあり、なんと3地域となっています。

・1年を通じて見た場合、8月の海水平均温度はほぼ平均気温と同じくらいになっています。先にも書きましたが、昼間は冷熱源ということになります。

熱や景観のメリット、錆や自然災害などのデメリット

以上が詳細に分かったことですが、海に近ければ近いほど、海に触れる空気を媒体にして熱のやりとりが行われるのはもちろんですが、極めて海に近い場合は海水と地面が触れ合うことによる熱のやりとりも相当量あることが想像できます。

この熱を上手く利用できればいいのですが、如何せん海水です。ほとんどの機械がすぐにダメになってしまいそうな気がします。機械的に熱を取ろうとするよりも立地からくるマイルドな外気温の恩恵を受けるぐらいにしておくほうがいいのかもしれません。

錆との戦い、津波のリスク等のデメリットもありますが、熱、景観の観点から見た場合に海の近くというのはメリットも多いと思います。