ニュースレター 2018年5月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

ほんの少しの他利のために・・・

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

ここ最近の中国や韓国での省エネに向かった大きな舵切の動向と、それに賛同するオピニオンリーダー達の生の声に注目してみると、自分達だけが豊かになるのはいけない、地球規模で考えなくては、次世代の権利を守らなくては、といった意見がごく自然に出てくることを実感します。それに対して日本の“なんちゃって“省エネ運動。この問題の根底は、やはり市民の利己的な価値観なのかな、と痛感しています。特に、子供達に当たり前のように教えてきている倫理的なルールが、大人になると一気に無価値化されてしまう、日本で生活をしていると、そんな危機感が募ります。

困っている人がいたら手を差し伸べなさい、助けてもらった感謝の気持ちを伝えなさい、そんな事を私達は子供達に対して無意識に教えているはずですが、残念ながら、大人同士では最近このモラルが崩壊しつつある事を感じます。例えば電車の中での席の譲り合い。私は毎日電車で通勤している訳ではありませんので、逆にラッシュアワー以外の時間で電車を利用する事が多く、当然ながらお年寄りや体が不自由な人、妊婦さんなどに出くわす確率も高いのかもしれません。そのような人達が乗車してきても、見てみぬ振りをして頑なに席に座り続ける10代~50代の人達は、“こっちだって疲れてるんですから!“と言わんばかりの剣幕です。もちろん中にはそっと目をつむってしまう人も。目をつむってしまう人には多少の罪悪感があるとしても、怖い顔で座り続ける人の心理はどのようなものかと私なりに考えてみました。お年寄りに席を譲った結果、本来座り続けていられたはずの自分が不必要に疲労してしまい、その日の業績に影響してしまうのは勘弁してほしい。または疲労を補うために余分にカロリーを摂取してしまってはお金がかかってしまう。大げさですが、そのような潜在意識では無いかと想像出来ます。まさか、自分は特権階級なので、社会的弱者に手を差し伸べる義務など無いというような思想の日本人は居ないはずですから・・。

これと同じような感覚で説明できる、私達大人の利己的な行動があります。環境に配慮しようと、飲み終わったペットボトルのラベルをはがしたりアルミ缶を潰したりすることに、朝の貴重な数分を費やしたり、ほんの少し単価が高いリサイクルトイレットペーパーを選択したりする事に、躊躇するという様なことです。私達大人が、ほんの少しの“他利”のために、ほんの少しも行動出来ない理由は、こっちだって疲れてるんですから、こっちだって(金銭的に)カツカツなんですから!という感覚(どちらかというと被害者意識)に集約されると考えられます。この市民感覚を無条件に肯定してしまった状態で、行政が政策を打ち出したり、企業が経営方針を決めたりしている限り、この国の省エネ化が予定通りのスピードで進む事もないでしょう。

そして更に、個人では当たり前のように理解できる倫理的なルールが、企業間になると一気に無価値化されてしまう、日本で仕事をしていると、そんな危機感が募ります。環境配慮という、ほんの少しの他利のために割ける予算はほんの少しも無く、最大限の利益を上げることが求められる日本の大半の企業においては、例えば投資する本人にお財布メリットが出せないと省エネ提案が受け入れられないと、本気で思いこんでいる営業マンも多いようですね。不動産であっても地球環境であっても、子世代、孫世代への資産の継承という発想が無いため、そのための投資の意味が理解できない、そういった市民感覚に異を唱えること無く、御用聞きになり下がっている企業の営業マンが、日本中にはびこります。

日本の企業の更なる問題として、最大限の利益を上げるためにはライバルを陥れる事も厭わないスタンスがあります。そのために根拠の無い悪い噂を流すといった、ネガティブキャンペーンも繰り広げられます。訴訟を嫌う日本人の気質を上手く利用しているようにも思えますし、違法で無ければ何をやっても良いという風潮も(こちらは政界も含めて)見受けられます。デマを流してはいけない、他人の陰口は言ってはいけない、子供達には常日頃から伝えている事なのですが・・・。

相手のイメージダウンにつながるような情報を根拠も無いまま、または誇張して発信することを、簡潔に“印象操作”と呼ぶとしたら、日本の住宅業界では沢山の悪質な印象操作が見受けられます。ハウスメーカーによる地場工務店に対する印象操作も気がかりです。家を建てようと思い立った消費者が、まず住宅展示場に足を運ぶことを私が懸念しているのもこれが理由です。窓メーカーは樹脂、木製、アルミ製で熾烈な印象操作が繰り広げられています。私もこれに利用されないように日頃から気を付けてはいるのですが、巻き添えを食らわないようにするのはなかなか大変です。その他、防蟻メーカー間では、ホウ酸VSネオニコチノイド系での印象操作が目に付きます。みな受注を取るための差別化がエスカレートした結果、印象操作の域に入り、最終的には足の引っ張り合いのような状態になります。単純に良い家が建てたい消費者としては、情報収集の早い段階で人間不信に陥り、何を信じたら良いか分からない、結局どれも同じでしょ?という結論に至ってしまうケースも。

他社に負けたく無ければ、本気で良いものを作ることにエネルギーを集約させれば良いのにと私達は思いますが、そのために何をしたら良いかもわからず、印象操作で手っ取り早く受注を稼ごうとする輩は、根回しが周到なのでなかなか質が悪いものです。家を建てよう!と思い立ってから2年以内には入居したい、というような、かなり短期間での家づくりを望む人が多い中、残念ながら本物の業者、製品に関する知識を身に付けることが出来ないまま大きな買い物をしてしまう人が圧倒的な気がしています。

私達としては、出来れば高校の家庭科あたりから、住環境とエネルギーにまつわる授業を組み込んでもらい、ほんの少しの他利のための行動を、決して忘れない大人になった彼らが、何世代にもわたって幸せに暮らせる家を建てて欲しい、そんな事を思う今日この頃です。

 

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

自分で考える力とぶれない基準を持ってないと簡単に騙されてしまう。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

最近某サッシメーカーが樹脂窓を否定するためのネガティブキャンペーンを繰り広げているようです。聞いてみるとその内容が結構ひどいのです。集めた工務店さんの目の前でいい加減な固定方法のサッシを踏みつけてぐにゃっと曲がるところを見せつけて「こんなに弱いから駄目ですよ」みたいなことをしているとのこと。そのサッシメーカーも樹脂窓は発売しているのにそれはどう説明するつもりなのか?ということを含めて言いたいことはたくさんありますが、そのような説明をされて判断を下すのはあくまで設計者や工務店なのです。どの建材メーカーの営業マンもノルマをこなすのに必死です。そして本社から作る営業マニュアルをそのまま激推ししてきます。そこまでならまだマシなのですが、売るためにあることないこと伝えてくる悪質な営業マンも珍しくはありません。
工務店さんが多々ある建材を決定する要因をまとめてみると次のようになるかと思います。何と言っても掛け率が最重要課題、そしてカタログの出来栄えと、営業マンのレベルと相性、最近は少なくなったとは言え接待もひとつの要素であったと思われます。
建材には健康、快適性、経済性、耐久性といった非常に重要な項目に対して大きな影響を与える項目と、そうでもない項目があります。そうでもない項目に関しては上記のような基準で決めてもお施主様、そして工務店自身が被害を被ることは少ないと思います。しかし、重要な項目に関しては上記のような基準で決めるとまずはお施主様、そしてクレームや事故が発生すれば工務店自身にも災いがふりかかってきます。この事実を建材の決定権者はよく理解されていないことが多いと思います。最初の窓の事例ではいつも言っているようにお施主様の健康、快適性、経済性を一番大きく左右する建材と言えます。「どんなことはあってもそこは曲げない!」というぶれない基準があれば「適当に施工したときの踏みつけによって起こる歪み」などで意志がゆらぐなどということは絶対にありえません。この仕事を誰からお金を頂いて誰のために建てるのか?まずはここが確立していないこと。次に、適切な建材を選定するために必要な基礎知識、計算能力、論文等客観的資料の調べ方という最低限必要な能力をみにつけていないこと。こういう残念な現状があるからこそ、冒頭のような非常に悪質なネガティブキャンペーンがまかり通ってしまうということを肝に銘じていただきたいと思ったのであえて今回のメルマガ原稿に書きました。


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