ニュースレター 2017年9月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

第二回パッシブハウス・アジア・カンファレンスを終えて

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

怒涛の8月が終わりました。鈴虫が大合唱する鎌倉の夜はもうすっかり秋の風情です。

さて、去る9月25日に東大の伊藤謝恩ホールで開催されました、第二回パッシブハウス・アジア・カンファレンスはお陰様で大盛況の内に終わりました。

今回のカンファレンスの主旨にご賛同頂き、経済産業省、国交省、そしてソウル市からも後援を頂いた事は主催者として大変光栄な事で、お陰様で当日は、アジアのパッシブハウス情勢を垣間見ようと、360名を超える方にご来場いただき、その中には70名を超える海外からの聴講者、そして大手ハウスメーカーからも複数の参加がありました。

パッシブハウス研究所の副所長である、ユルゲン・シュニーダース博士は初来日を果たし、カンファレンス前後には国内の先進的な事例を時間の許す限り視察し、国内の建材メーカー、特に設備メーカーとの打合せも複数こなして頂きました。

パッシブハウスはトップランナー、国の義務基準はボトムライン

パッシブハウス研究所のユルゲン・シュニーダース博士による基調講演は、夏の快適ゾーンの定義や地域ごとの冷房・除湿手段に関する提案でした。

パッシブハウス研究所のユルゲン・シュニーダース博士による基調講演は、夏の快適ゾーンの定義や地域ごとの冷房・除湿手段に関する提案でした。

躯体の性能向上をどこまでやるか?という議論は日本だけでなく、現在ドイツでも続いていますが、以前メルマガでも書きました通り、ヨーロッパではパッシブハウス、即ち年間暖房負荷15kWh/m2に否定的な人でも、年間暖房負荷30kWh/m2aに異論のある専門家はもはやいない、もしくは表に出てこないと言っても過言では無いでしょう。

私は、決して日本中の全ての住宅がパッシブハウスになる日を夢見ている訳では無く、ただ住宅の省エネに関して余りにも無頓着な(もしくは時代錯誤な)日本において、全体の早急な底上げのためには、パッシブハウスのような極めて性能の高い住宅が、住宅市場の一定レベルを占めるべきであると思っています。

これらの住宅をトップランナーと呼び、一方で国の義務基準をボトムラインと呼びましょう。そのそれぞれに役割がありますから、例えば義務基準を定める立場の人々が、トップランナー性能を牽制する事は本末転倒です。パッシブハウスを“やり過ぎだ、あんなもの必要ない“と正々堂々と言えるのは、それ以下の性能(ボトムライン+α)の性能の住宅で商売を続けたい実務者(工務店、設計者)だけなのです。

一方で、トップランナーの人々が、どうしてパッシブハウスを義務化しないの?と問いかけるのも正直ナンセンスだと思っています。万が一本当にそのような事が起こった暁には、トップランナーの”差別化”が機能しなくなる訳ですから、その先を見越して準備している実務者のみが出来る発言なのかもしれませんが。

幸せの定義とは?豊かさとは?

基調講演の後は、北京、青島、上海、韓国、そして台湾からのゲストスピーカーが自国での取り組みや気候特性、そしてパッシブハウスの事例についての報告を行いました。

基調講演の後は、北京、青島、上海、韓国、そして台湾からのゲストスピーカーが自国での取り組みや気候特性、そしてパッシブハウスの事例についての報告を行いました。

さて、今回のカンファレンスを通じて、浮き彫りになったと私が感じる事があります。

それはやはり、エネルギー計算の際に前提となる“必要な快適性“に関する認識の個人差です。日本の家は、冬にヒートショックで死なない家、夏に熱中症で搬送されない家、その辺りが室温の条件として設定されているのに対し、欧米では温度ムラや不快な気流の無い、そして騒音レベルの低い、上質な居住空間が求められています。

確かに欧米人は家の中でも比較的オシャレに気を使い、静かに本を読んだり談話をしたり、音楽を聞いたりという時間が多いように見受けられます。一方の日本人は、テレビがついている時間が長く、男性が家事に費やす時間は先進国でワースト1位、夫婦の会話も少ない、そんな家庭が多いように感じます。

今回のカンファレンスでは、新しい価値観、特に“幸せの定義“も見つけていかなくては、とプログラムの冒頭挨拶に書かせて頂いた通り、日本人にとっての”豊かさ”の見直しも必要になってくると感じております。また“豊かさ“と言えば、日々の暮らしの安全もその重要な要素であると思いますが、今回の様な国際カンファレンスをきっかけに、隣国のプロフェッショナル達との顔の見えるコミュニケーションを活性化させることは、軍事衝突を選ばない私達日本人ひとりひとりが主体的に貢献できる平和運動そのものでは無いでしょうか?

パネルディスカッションでは青島エコパークの施工過程の報告の後、夏の快適性や各国の高性能建材の普及状況などに関して意見交換が行われました。

パネルディスカッションでは青島エコパークの施工過程の報告の後、夏の快適性や各国の高性能建材の普及状況などに関して意見交換が行われました。

下記に今回ゲストスピーカーとして来日してくださった皆さんから、帰国前に頂いた
コメントを少しご紹介いたします。

中国国内の3つのパッシブハウス団体を平等に招待してくれたことにとても感謝している。(青島 Yu Zhengjie)

韓国の二つの団体が来年に向けて連携出来る素晴らしいチャンスだ。今後は定期的に集まって、来年以降の準備をしていきたい。(韓国 Cho Yoon-Boum)

素晴らしい内容だった。日本でのPHJのこれまでの貢献は凄いと感じた。今日の君はとにかく少し休みなさい!(北京 Yu Zhen)

来日は二回目だが、本当に有意義な滞在だった。日本のパッシブハウス運動はPHJが単独で引っ張っている事が判った。日本には台湾と気候が近い沖縄がある。是非情報交換を続けたい。(台湾 Shih- Chieh Yeh)

日本ではゼロエネルギー住宅のベースとなる外皮のスペックがかなり低いように見受けられるが、これは再生可能エネルギーの産業を後押しするために意図的にしていることなのか?木造住宅の施工レベルが非常に高いと感じるし、優秀な設備メーカーも多く、羨ましいかぎりだ。(上海 Xu Zhiyong) 

PHJの日本語の発表内容は、そんなに簡単では無く、むしろ比較的難しい題材であったにも関わらず、自分は同時通訳でほぼ理解出来たようだ。これまで複数の国際カンファレンスに参加してきたが、今回はかなりレベルの高い通訳だったと思う。また、今の日本が木造文化を大事にしている事を知り、その高い施工レベルにとても感動した。(青島 Sven Ring)

何とも完璧にオーガナイズされたカンファレンスだった。
ホテルのエアコンは音がうるさいので、夜は止めることにした。すると寝ている間に布団を剥いでしまい、今度は寒くて目が覚めた。そこで布団の中身を出して、カバーだけで寝る様にしたら快適になった。しかし日本でこんなに連日美味しいものを食べられるのは問題だ(ドイツ Juergen Schnieders)

パッシブハウスだと民間でもこんな事出来るのか、スゲエな!(来賓:南雄三さん)

最後は来年の第三回パッシブハウス・アジア・カンファレンスを韓国で主催して下さる2団体(IPAZEBとPHIKO)に挨拶を頂き、無事閉会となりました。

最後は来年の第三回パッシブハウス・アジア・カンファレンスを韓国で主催して下さる2団体(IPAZEBとPHIKO)に挨拶を頂き、無事閉会となりました。

メインフォーラム当日はアンケートも回収させて頂きましたが、今後のPHJの活動の方針を決める上でも是非参考にさせて頂きたく、カンファレンスにお越し頂いた皆さんの率直な感想をPHJ事務局までお寄せ頂けますと光栄です。

また、メインフォーラム開催中の会場内は午前中が室温24℃、お昼休憩後からコーヒーブレイクまでが26℃、その後閉会までが25℃となっておりました。更に偶然にも、25℃の時点で絶対湿度12g/kgが実測されています。これを受けまして、皆様の体感について、当日着用していた服装の情報と併せて追加アンケートを取らせて頂きますので、こちらもご協力の程宜しくお願いいたします。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

夏の睡眠時の冷房運転における快適性について

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

夏に入る前、自宅の寝室のエアコンが壊れたので日立の再熱除湿機能がついているエアコンを購入しました。このエアコンは湿度も調整できる機能がついているので毎晩設定温度を色々と調整しながら自分、及び家族の快適性を観察して色んなことが実感から分かりました。

温度は高めに、湿度を低めに

まず当たり前ですが、寝ているときの冷風は極めて不快であるということ。冷風が弱ければ弱いほど、直接当たらないほど快適です。これはPMVで計算してみてもよくわかります。たった0.1m/sという微差においてもPMVの結果は大きく変わります。ほとんどの方が壁掛けエアコンでフラップを水平に近くして冷房運転していると思います。それは正解なのですが、温度が低いと重いので結局それは下降気流という形で気流を感じてしまいます。

このとき役に立つのが比較的高温かつしっかり除湿された運転でした。温度は高めに設定して湿度を低めにしてやる・・・これはエアコンにとっても省エネの観点でも非常に厳しい運転方法です。でも人間にとってはこれが一番快適であることは間違いありませんでした。

日射遮蔽・断熱をした上での小屋裏エアコン

次にもうひとつ、この夏引渡した住宅の見学会の際、小屋裏エアコン稼働時の熱画像を撮影しました。天井の半分が小屋裏エアコン室、もう半分は普通の屋根裏という部屋でしたが、小屋裏エアコンのある天井だけ真っ青になっていました。これはいわゆる天井輻射冷房となっていることを表します。これであれば、気流は通常のエアコンのような400~600㎥/hという強い冷気でなくてもわずか100㎥~200㎥でも冷気が下りてくれば十分に冷やすことが可能です。

その際の温度もエアコン吹き出し口が15℃前後であることが多いのに対し、小屋裏から吹き出してくる冷気の温度はたかだか24℃前後です。これだけ温度が高く、かつ風量が少ないと普通は冷えません。しかしながら、日射遮蔽と断熱がきちんとなされ、天井輻射冷房も加味するとこれできっちり快適になります。

この感覚は「涼しい」というよりも「何も感じない春や秋のような感じ」というほうがしっくりきます。この状態であれば、それなりに室温が下がっても冷房嫌いの奥様から不満の声があがることはほとんどないですし、暑がりの子供から「暑い」と言われることもほとんどなくなります。

「不眠」に関する本が立て続けに発売され、ベストセラーするような時代です。睡眠が深く快適に得られるのであれば、そこに価値を見出す人はたくさんいるということです。


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