ニュースレター 2017年8月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

パッシブハウス隣国事情 -韓国編-

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

パッシブハウス・アジア・カンファレンス開催まであと2週間となりました。沢山の関係者の皆様の告知活動のお蔭で、現在300名を超えるお申し込みを頂いております。流石に北海道からのお申し込みは少ないようですが(笑)、北は東北、南は沖縄、そして台湾、オーストラリアからもお申し込みがあり、本当にありがたい事です。

先日はソウル市からの後援も頂きまして、韓国政府を初めとする行政のパッシブハウス推進の意気込みを強く感じました。実は私自身、先月にソウルを訪問いたしまして、来年の第三回パッシブハウス・アジア・カンファレンスの主催者との意見交換をして参りましたが、韓国における建築の省エネ化、そしてパッシブハウス事情を垣間見ることが出来ましたので、その内容を少しだけご紹介したいと思います。

冬は-20℃にもなるソウルのパッシブハウス

こちらはソウル市内にあるゼロエネ&パッシブハウスのソーシャルハウジング(行政が提供する低所得者向け住宅)。なんと、PHPPで温熱計算がされており、ヒートブリッジを徹底的に排除したRC造でした。

大小の集合住宅および戸建てモデルが提案されており、戸建てモデルの外断熱厚は300mm。ソウルの冬は厳しく、ドイツ並みの断熱強化が必要です。

パッシブハウスを水準にした外皮設計に加え、太陽光発電の搭載でゼロエネを狙うというもので、日本のZEHに比べ、そもそもの冷暖房エネルギー消費量が少ないため、ゼロエネ化のために必要な太陽光パネルの量も現実的に見受けられました。

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開口部は、韓国のサッシメーカー4社による高性能樹脂窓が採用されていました。冬はー20度にも達するソウルの厳しい冬にはやはりトリプルガラスが必須です。一方、ソウル周辺以外の地域は比較的温暖で、高性能なペアガラスを南面に配置することで十分パッシブハウス性能を担保出来る地域があることは、日本と状況が少し似ています

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こちらはRC造のプロジェクトならどこででも目にするショック社のイソコルブ。RC造でバルコニーを熱橋にしないためには必要な部材ですが、輸入品は高価なので、こちらも現在韓国メーカーが国産で開発中とのことです。

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熱交換換気装置も韓国製。外気温が低いソウルではディフロスターが必須です。

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今月にも竣工するという実棟はこれから入居者募集となりますが、先行して敷地内に戸建てのモデル棟が建てられ(下記写真)、断熱工法の施工性の検証などが行われました。モデル棟は今後、体験宿泊棟としてオペレーションを行うとの事です。下記の公式ウェブサイトでは街区全体のCGなどが紹介されていますので、かなりの規模であることがわかります。
http://www.zedtown.kr/en

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韓国は元々木造文化で、オンドルという薪を使った床暖房システムが伝統的ですね。現在はコンクリートの建築が多いようですが、集合住宅であっても皆さん床暖房を好みます。パッシブハウスを建てても、床暖房から脱却できない場合が多いそうで、なかなか設備がスリムにならないという事を、韓国のパッシブハウス推進団体の方が呟いておりました。

現在の韓国大統領は脱原発を掲げており、国内で最初の原発が停止しました。そして初めて、核のゴミの問題が国民に明るみになり、国内では今、省エネへの意識が高まっているとのことです。伝統的なオンドルという輻射による全館暖房が当たり前だった国で、これからパッシブハウス流の冷暖房方式がどのように進化していくのか、韓国のこれからの動向が楽しみです。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

「家具」「外構」「インスタグラム」がキーワード

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

今年もPHJではエコハウスアワード、建築知識ではエコハウス大賞の審査員をやらせていただきます。その際、他の著名建築家、もしくはメディアの方の講評を聞くことが非常に勉強になります。

南側に庭があること

著名建築家であればあるほど絶対的に重視するのが「庭とのつながり」です。別に審査のために家を設計するわけではありません。ただ、建築家にとっては何らかの賞を一度でも取ることは建築家人生を歩んでいく上で大きな勲章となることは間違いありません。

また、実際に、日本人が「良い家だな」と心底感じる家はたいてい家と庭のつながりが絶妙に設計されている住宅でもあります。

この点においてもう少し深掘りすると、これまでの住宅作家は方位に関係なく、庭とのつながりが美しくできていればOKという感じがありました。しかし、パッシブデザインと兼ねて考えるのであれば「南側」の庭であることが理想的です。

もうひとつ加えるならカーテン等を閉めずに庭も日射も取り込める設計にしていることも重要です。この際よくありがちなL字型、コの字型で南に庭を作ると、自分の建物自身が窓に影を作ることになってしまいます。建物ほどは高くはないけれど、目線は気にしなくても良い高めの塀をどう使っていくか?そのあたりが今思案を重ねているポイントです。

家具代を残しておく

次に家具です。前回のアワードの講評時にもありましたが「家具と人が入ってない建築写真なんてありえない」と言われた方がいらっしゃいました。竣工写真はどうしても引越し前に撮ってしまうことが多いので、分かってはいながらも実現できていないことが多い自分にも刺さる言葉でした。

家具に関しては設置されていればなんでもいいのかといえばそうではありません。せっかく良い設計がなされていてもセンスのない安物家具が置かれていると空間が一瞬で壊されてしまいます。ということは、設計時点、もしくは契約時点で主要な家具代は残しておくだけのコストコントロールと説得技術が必須になってくることが分かります。

「急に今までと違うことを言うじゃないか?」と不思議に思う方も多いかと思います。私自身は前々からそう思ってきましたが、最近これを書かざるを得ないと思い始めたのがインスタグラムの爆発的な普及です。

フェイスブックからインスタグラムへ、内観写真より外観写真

松尾設計室の集客の大半はグーグルと既存客OB様からの紹介です。情報発信についてはフェイスブックも活躍してくれています。ところがネットマーケティングに極めて詳しい知人によると「フェイスブックはおっさんの自慢大会、若い女性ほどインスタグラムに移行している」とのことでした。

さらに言うと「内観写真よりも外観写真、内観写真であれば生活感のある写真が明確に好まれる傾向にある」とのことでした。ということは家具、外構はお施主様の満足度を上げることはもちろんですが、住宅業者が今後の集客をしていく上でも超重要ポイントであることがわかると思います。そうでなくても高断熱をやっている方々は基本性能の部分で予算を使い切ってしまいがちです。そこで満足、もしくは言い訳が成立しがちでした。

しかし、多くの実務者が高断熱に取り組み始めた今だからこそ、改めてこのあたりがきちんと出来ているかどうかが、今後の大きな分かれ目になってくると考えています。かくいう私も日常のバタバタに追われてまだインスタグラムにはまともに取り組めておりませんが・・・


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