ニュースレター 2018年12月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

国土交通省による住宅省エネ基準適合義務化の撤回を受けて

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

これまで国交省がロードマップを作成し、欧米と比べて立ち遅れた水準の日本の省エネ基準を、2020年までに義務化すると声高々に言ってきましたが、ここにきて結局、見送り(というか撤廃?)の方針を発表しました。

https://nkbp.jp/2Qoy8sk

戸建て住宅を省エネ基準に適応させるための追加コストが1住戸当たり87万円かかり、光熱費の低減でこれを回収するには35年を有するという試算が同省から示されたと言います。

しかしこの87万円には現在ほとんど使用されていない、単板ガラスのアルミサッシを複合サッシに置き換える際のコストまで含まれていると言われ、追加コストが不必要にかさ上げされているようです。それらを補正すると、20年で回収できるコストになるという意見が現在有識者から上がっています。

反対意見ばかり吸い上げ、歪んだ物差しで物事を判断。これでは行政側が一番義務化に後ろ向きだと言われても仕方がありませんね。Google検索で、「○○〇 批判」と入力して検索すれば、○○〇の批判が沢山出てくるのと同じで、批判的な意見を集めるのはそれほど難しいことではありません。今回もそのような恣意的な情報収集が否めません。

 

パッシブハウスという全く次元の違うところで日々実務に向かい合っているパッシブハウス・ジャパンのメンバーにとって、この周回遅れの義務基準が存在するか否かは、一見余り関係のない話に見受けられますが、最低レベル以下の新築住宅が、日本市場から消えてなくなることは、ある一定の割合の実務者が場合によっては失業→転職を強いられるにせよ、この機に始めて省エネを意識する実務者が現れる、この機に建材メーカーが最低レベルの商品(例えばアルミサッシ?!)の製造を中止する等、全体の省エネ性能の底上げには何らかの形で貢献するのではと考えておりました。

勿論、国交省内部の方々の倫理観、そして男気に期待していたところもあります。役人として、約束は守るべきですから。

これまで最低レベルの規制を敷かぬまま、ZEHファミリー(種類が多すぎて良く分からないのでひと塊にしておきます)にはバンバンと補助金を付ける。この国交省のやり方が私にはまったく気に食わないのです。

国民の暮らしの安全、快適性は担保されぬまま、チープな躯体に設備がてんこ盛り。補助金はそのまま太陽光パネル業界に流れ込むかのようです。歪んだ物差しは補助金スキームでもまかり通っており、申請時に国交省が義務付けているWEB算定プログラムに関しては、計算結果がおかしいという意見がこれまで多く寄せられています。

例えば、太陽熱温水器を採用しても、節水シャワー水栓とエネルギー削減率が同じっておかしくないですか?という意見。また、夏の日射遮蔽のために外付けブラインドを付けたら、冬の暖房エネルギーが増えるんですがどうしたら良いですか?という相談もありました。一体何なんでしょう。このお粗末な物差しは!

 

国交省の資料には一般ユーザーの約95%が、住宅購入時に省エネ性能を検討したいと考えているという統計があり、元々ハウスメーカーや大手賃貸ビルダーからの義務化に対する反発は特になかったとのことで、今回の義務化断念の主な理由はなんと、中小工務店、およびデザイン性を優先させたい建築家が否定的なことだそうです。

エネパス協会の今泉さんによると、

否定派は大きく分けると下記のようなグループに分類されるとのことです。勿論、国交省の言い分が正しければの話ですが・・。
1.省エネに無関心な約4割の中小工務店
2.伝統工法では新参者の断熱に適用したくない建築家or工務店
3.デザイン性に偏重した建築家

私は上記のような方々はそもそも家づくりの資格が無いのでは?と思いますが、皆さんどう思いますか?!

そして一番厄介なのが伝統工法という隠れ蓑です。法隆寺や桂離宮を断熱改修しろとは誰も言っていません。そう、本物の伝統工法なら容認せざるを得ないかもしれません。

しかし問題は“なんちゃって伝統工法”です。木材の機械乾燥など言語道断ですが、ベタ基礎や布基礎を打ったもの、アルミサッシを使っているものも伝統工法ではない、という考えには多くの方に共感して頂けるでしょう。でも私は、上記の条件をクリアしてもエアコンやら石油ファンヒーター等で化石燃料を消費する家も伝統工法から除外するべきだと考えます。なぜなら、伝統工法による躯体の仕様と、現代の設備仕様の組み合わせこそが地球環境にとって害だからです!!

 

これから日本もどんどん寒くなりますが、皆さんの住宅性能も光熱費も残念ながらピンキリ。実は同じ地域の中でも皆、異なる寒さの度合いを体感しているのですね。そろそろエンゲル係数ならぬ、各家庭の光熱費の占める割合を、豊かさの基準にしても良いのかも知れませんね・・。

 

 

 

 

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

高断熱リフォームの導火線に火が付き始めたかもしれません。

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾 和也

 

つい先日リフォーム業者さんを中心とした講演を依頼されました。

リフォーム業者さんは読んでいる媒体、つきあう社長仲間も新築の世界とは大きく異なるということがよくわかりました。そういうことから、新築とは異なり「はじめて聞いてものすごく刺激を受けました。やります!!」という感じの社長さんたちがたくさんいらっしゃいました。

不動産業界と建築業界、住宅業界と一般建築業界、新築業界とリフォーム業界・・・いずれも一般の方から見れば同じように見える業界かもしれませんが、微妙な違いのようで決定的に違う業界ですね。

思えば新築における高断熱化の波は15年前など皆無に等しいものがありました。10年くらい前から徐々に火がつきはじめ、ようやく今があるという感じでしょうか。高断熱リフォームに当てはめて考えてみると新築高断熱化の15年前から10年前の状況にあるという感じを受けています。ただ、新築のほうが十分に盛り上がって来ていること。パリ協定をはじめ世論が省エネに向いて来ていること、高断熱リフォームしか今後の業界に大きな市場が残されていないという現実を考えるとここから先の進歩は新築がたどってきたスピードより早くなる可能性を秘めているように思います。

しかし。。。いつも言うようにリフォームにおける高断熱化は新築の高断熱化よりはるかに難しいものがあります。

新築がレシピどおりに買い出しから料理を作ることに似ているのに対し、リフォームは冷蔵庫の残り物からレシピ無しで料理を作ることに似ています。レシピ通りの料理もまともに作れない人が残り物から美味く作れないことは言うまでもありません。

ということで、リフォーム業界の方はこのままいくと高断熱に強い新築業者に業界を徐々に奪われていく可能性が高いということも考えて今から早急に対策していかなければならないと思います。逆にいうと、新築業者にとってはまたとない巨大市場が待ち受けているとも言えそうです。