ニュースレター 2020年1月号コラム

パッシブハウス・ジャパンでは月に一度のニュースレターを発行しております。

理事によるコラム他、セミナー開催や建もの燃費ナビ関連のお知らせ等を毎月お届けいたします。

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

 

~ Come On! 目を覚まそう! ~

パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ

 

新年あけましておめでとうございます。

いつもPHJメールマガジンに目を通してくださり、誠にありがとうございます。

さて、年明け早々、胸が潰れてしまいそうなニュースが沢山飛び込んできた2020年の幕開けです。気候変動によってオーストラリアの大規模森林火災のような不可逆的な生態系の破壊が起きる現実、そして中東では戦争状態という異常な心理状況の下、罪の無い人が沢山犠牲になる現実も見せつけられました。果たして日本は、東京オリンピックという重荷を抱えて、この一年間に既存のシステムの枠を超えて“一歩前進”出来るのかどうか、正直不安を感じています。またこの悲惨な状況の中で、個人として一体何から手を付けたら良いか判らないという声を多くいただきます。そこで今年最初のPHJメルマガでは、私が年末年始に読んでいた「ファクター5」の著者でもあられるヴァイツゼッカー(Weizsaecker)博士の共著、「Come On!(目を覚まそう!)」の内容の一部をご紹介したいと思います。

ローマクラブによるレポート、「Come On!」は2017年出版。2019年末に日本語訳版「ComeOn! 目を覚まそう!~環境危機を迎えた『人新世』をどう生きるか?」が発売となりました。

 

昨年9月に中国で開催された、国際パッシブハウス・カンファレンスの基調講演でもヴァイツゼッカー博士が訴えていた事ですが、人口密度の低かった「空っぽ(empty)の社会」の時代に確立された経済成長のシステムが、地球上が人で溢れかえった現在の「一杯(full)の社会」でそのまま継承されていることの限界に関する指摘がありました。驚く事に、実に地球上の脊椎動物の重量の97%は人間とその家畜なのだそうで、残りの3%の動物が、私達が動物園で目にするような、いわゆる野生動物だという事を知ってしまうと、どれほど人間による地球上の生態系への影響が大きいか、皆さんも少しイメージして頂けるでしょうか?

下記は過去250年に24項目において、地球上の総量がどのように変化しているかを視覚化しているグラフです。これを見る限り、ローマクラブが1972年に発表した、「成長の限界」の予測は概ね的を得ており、地球がプラネタリー・バウンダリー(惑星の限界)を超えようとしているという説に説得力を感じます。特に過去50年間に地球上では劇的な変化が起きており、これによって人間社会で暴力的な紛争が起きることは容易に想像できると言われています。紛争状態においてはSDGsのどの目標も達成する事は出来ないのは言うまでもありません・・。

 

世界人口、GDP、一次エネルギー使用量、水使用量、都市人口、CO2、メタン濃度、熱帯雨林消失などを含む24項目において、過去250年に地球上の総量がどのように変化しているかを視覚化(2015年にIGBPとストックホルム・レジリエンス・センターのコラボにより作成)。

 

とはいえ、例えば照明器具で例えると、18世紀のロウソクから現代のLEDに進化する過程で、そのエネルギー効率は1億倍に達しており、日々誕生する革新的な技術とそのコストダウンのスピードを持ってすれば、この危機的な状況を乗り越えられるのではないか、と楽観視する人も多いかもしれません。パッシブハウスもファクター5(効率5倍)と言われており、この20年で既に技術として確立されている事は皆さんにもご理解頂けている筈です。しかし問題解決は実際にはそれほど容易い話では無く、例えば既に石炭火力や原子力発電に大規模な投資をしている既得権益者による妨害や、短期的な収益を最重要視する金融の力が障壁となり、持続可能な社会システムへの転換はままならず、どちらかと言うとSDGsの掲げる「だれも置き去りにしない社会」とは真逆の方向に転落しつつあるように見受けられます。

国連のような国際機関の関与が及ばない無法地帯で少数の巨大な企業によって牛耳られている経済システムは大きな問題を抱えており、政府が土地や水といった資源を企業と取引して売り払ってしまう事態も世界中で進行しています。富は一極集中するばかりで、今や世界で最も富める8人が、世界人口の貧しい側半数を合わせた人々の富と同じだけの富を保有しているというショッキングな状態となりました。そしてその結果、70億の世界人口のうち、20億人は体重過多か肥満、3億人は糖尿病、一方で10億人は飢餓や栄養失調に苦しんでいるのが実態です。物質的に豊かになっても、幸福感を得られないばかりか、その膨大なエネルギー消費とゴミの排出により、地球の汚染者となり果てるのが現在の社会システムが作り上げた、“豊かさの定義”とも言えそうです。

 

2007年に日本で誕生した“Table for Two” は、先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが、時間と空間を越え食事を分かち合うというコンセプトで活動中。その取り組みは海外にも広がっています。

 

建築の省エネというと、数千万円の買い物が出来る一部の人達の話に成り下がってしまいますが、衣食住にまつわる価値観全般の見直しが迫られており、住に挑む前にまず衣食を含むライフスタイルの見直しを、Table for Twoさながら、Life for Twoの心構えでチャレンジして頂けないでしょうか?

今年はパッシブハウス・ジャパンが10周年を迎える記念すべき年です。これまで沢山の方々にサポート頂き、今日まで地道な活動を続けてこられたことに感謝しつつ、一方ではこの10年で成し遂げられた事の少なさに落胆する気持ちも否めませんが、希望を捨てずにまた引き続き進んで参りますので、今後ともご支援の程、どうぞ宜しくお願いいたします。今月から各地でPHJ支部勉強会が始まっておりますが、4月24日(金)のPHJエコハウスアワード2020の授賞式は、一般の方も聴講及び投票頂けますので、皆様のご来場をお待ちしております。

 

昨年のPHJエコハウスアワード2019の2次審査の様子。会場の皆さんによる投票は、各プレゼンボードにシールを貼るユニークな方式を取っています。

 

 

 

 

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