ニュースレター 2019年7月号コラム

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パッシブハウス・ジャパン理事 松尾和也

「今」しか見ずに家を設計する人が多すぎる問題

パッシブハウス・ジャパン理事 松尾 和也

エネルギーの観点で見てもそうですが、プランニング、隣家の状況、生活スタイルの変化、耐久性、外観、家族構成すべてにおいてそのように感じることが多いです。たいていのお施主様が家を購入するのは初めての経験という場合が多いです。その場合、車や家電製品の購入と同じように今の問題解決、今の欲求に準じて検討することがほとんどです。これはこれで仕方ないと思います。素人かつ初めての経験ということで。。。しかしながら、住宅の設計をする人間はプロであり、住宅設計は生涯に一回どころかベテランほど数多くの、そして年数が経過したらどう変化していくかも見てきたという経験をお持ちです。にも関わらず、大半の実務者がお施主様の言いなりもしくは今のはやりだけに追従し、はやりの衣服と同じ感覚で「今」この瞬間への最適化に邁進しているように見受けられます。

日射の観点で言うと、南側隣地の建物が高く、近くなっても日射が確保できるようにするという最低限の配慮すらなされていないことが多いです。プランニングで言うとだいたい子供が5歳くらいまでで建築される方が多いですが、そこから大学入学、もしくは卒業までの17年間の最適化にすべてをささげるような設計が多いのは周知の事実です。私で設計人生22年目になりますが初期のころに設計した住宅ではすでに子供部屋が空き部屋になってくる現象が起こり始めています。子供数が少ない家はいいですが、多い家に関してはこの変化にどのように追従しておくのか?無駄の少ない家づくりを考える上(省エネ、経済性)では必須検討項目です。

それ以上に言えるのがデザインや設備へのこだわりです。設備の種類にもよりますが、キッチンもユニットバスも住宅寿命に比べればかなり短いものです。そこに必要以上の金額を投入しても一定年数で交換されてしまうという意識を持っている方が少ないように思います。デザインに関しては建設時はたいていの方が30代半ばくらいです。その年代のころにはピッタリあっているデザインでもやがてだれもが70代、80代、私たちが高齢化する時代には90代になっても介護施設に入らずに自宅で暮らせる時代が来るように思います。そうなったとき、またデザインの流行、傾向が変わったときにも浮かず、古びず、家族と乖離しないようなデザインになっているでしょうか?これは私もできているかどうかは40年ほど経ってみないとなんとも言えません。しかし、ヒントは40年前の住宅にあるように思います。40年前の住宅で今でも手を入れて住み続けようと思える住宅が今の日本にどれほどあるでしょう。個人的には極めて少ないと感じています。これに関して建築家の堀部安嗣さんが上手に解説されています「日本人が毎日フレンチを食べるのはしんどいですよね?たまにだと美味しいけれど。。でも卵かけご飯、みそ汁だったら毎日食べられますよね。これが日本人のDNAというものじゃないかと思うんです」これをはじめて聞いたときすとんと腹に落ちました。既製品比率を下げる。フェイク品を使わず、本物の素材をそのまま使う。。。少なくともこの二つは時代を経ても飽きない住宅になるうえで絶対重要だと確信していました。しかし、堀部さんのおっしゃるこの「日本人のDNA」という概念も数十年という時代経過を超えるためには必要な要素ではないかと思います。皆さんが今設計しておられる住宅はそれだけの時代変化を超えて魅力を持続できそうでしょうか?また自分が設計をし始めたころの住宅は今でも愛着が感じられる住宅であり続けているでしょうか?これを機に一度見つめ直していただく機会となれば幸いです。

 

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もっと遠くへ球を投げたい。

パッシブハウス・ジャパン理事  竹内  昌義

先日、森さんと村上敦さんと、図解エコハウスの改訂版のための鼎談を行いました。気候枠組条約で演説をしたスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリが始めた“FRIDAY FOR FUTURE(未来のための金曜日)”の話を聞きました。気候変動に対する大人たちの遅い、あるいは消極的な態度に業を煮やした若者たちの行動です。金曜日に学生が、気候変動に対するデモ参加するというのは、教育関係者だけではなく社会の問題として捉えられ、大人たちは行動せざるを得なくなっています。EUの選挙では、緑の党がメルケル率いるキリスト教民主同盟に逼迫する勢いであること。村上さん自身も、今までもっとちゃんと温暖化に対して行動できなかったかと反省しているとおっしゃってました。もう、大人子供は関係ないでしょうね。翻って日本、参議院選挙の真っ最中ですが、地球温暖化に対する報道もほとんどされてません。グレタのことを知っている人も多くはありません。最近のエネルギー白書も、まだ原発にこだわっていてダメダメです。本当にこのまま日本はダメになってしまうのではないかという勢いです。授業でもこの話をしますが、学生は同年代の人のメッセージに素直に耳を傾けます。そしてどうやったら地球温暖化を止めるか、一瞬だけでも考えてくれます。色々な質問が来ますが、だいたいワンパターンです。「エコハウスはいいのはわかるけど、高いのではないか。」「なんでこれが広まらないのか。」「冬に有効なのはわかるが、夏はどうなのか。」なるほど、そりゃそうだよなとも思う部分はありますが、岩手県の紫波町のオガールタウンでは分譲が完了し、57件の48kWh/㎡の暖房負荷の住宅が全て地元工務店の手によって建てられようとしています。日本のレベルからしたら、温熱性能はかなり高いですが、ヨーロッパでは当たり前のことです。先日行ったアジアカンファレンスでびっくりしたのは中国のパッシブハウスの伸びです。極端ですが、2020年までの間に今の20倍にすると言っていました。世界の変化の凄さ、本当に速いです。一方で、建築というものが持っている性格上、どんなに速くても最初の構想から、竣工までざくっと1年くらいはかかってしまいます。だから、建築をやろうとするときは思ったより、遠くに球を投げないといけないなあと思います。1年経っても、古びないコンセプトを建てようと思っています。当然、難しいのです。無理かなと思うのですが、出来上がってみるともっとできなかったかなと思ってしまいます。 私ごとですが、山形のデベロッパーと一緒に19件のエコハウス(UA値0.26くらい)を建てています。また、黒部のホテル“黒部アクア”も来月頭に再オープンします。次回のメルマガでは、これらの報告をしたいと思います。

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