パッシブハウス・ジャパン 設立にあたり

代表理事・森みわ

昨年日本に戻ってからの第一作目が鎌倉パッシブハウスであったことで、
私のことをただの断熱マニアだと思っている方も多いようです。

私がこれまでの10年間、ヨーロッパで何をやっていたかと言うと、
実は設計競技で勝ち取ったものばかり建てる設計事務所で、
ひたすら建築のデザインをやってきました。
商業施設も県庁舎も、高層マンションもありましたが、
ガラスとコンクリートで固められがちなこれらの建築に、
少しでも温かみと風合いをとの思いで、
木をファサードや内装に積極的に取り入れる工夫を続けてきました。

いつしか私は木という素材に恋焦がれるようになって、
木の家を作ることが私の夢となりました。

一方で、デザイン性が重要視されるプロジェクトにおいて、
その省エネ性能を問わないなどという事は、EUではもう許されません。
おのずと
『自分のデザインと求められる省エネ性能を同時に達成するためのノウハウ』
を学ぶようになったのです。

省エネに関するノウハウは、独学ではなく
建築物理コンサルタントと呼ばれる
ドイツのプロ集団が関わる実際のプロジェクトを通じて学びました。
日本の大学では
建築デザインと省エネが切り離されて議論されていたようにも思え、
当時教えてもらえなかった未知なる学問を、
私はむさぼるようにこのプロ集団から学びました。

日本古来の通風や南向きの大きな窓、庇などが
如何に省エネ効果を発揮するかを再確認すると同時に、
私たち現代の設計者にすっかり欠如している、
断熱気密に関する知識を本格的に学ぶことが出来ました。
断熱気密の重要性を世界が認識し始めたのは、ほんの二十数年前のこと。
新しい学問といっても間違いではないでしょう。

パッシブハウスもエネルギーパスもそうですが、
省エネ性能を数値で評価する、という風潮自体、
私にとって本望ではありません。
昔の棟梁は、構造計算などせずに目検討で柱の太さを決めていたように、
庇の深さもその土地の条件にあわせて決めていたに違いありません。
しかし、現代の設計者にはそのような感覚が
失われてしまったような気がします。
この『失われた省エネデザインの感覚を、いち早く取り戻したい』
という一心で、私は今パッシブハウスの評価ツールPHPPを用いて
建築設計をやっているのです。
何度かごりごりと計算をしているうちに、
デザイナーとしてやって良いこと悪いことが分かってきたり、
気象データと建物の形を見ただけで
必要な断熱性能がなんとなくわかってきたりする訳です。

省エネの観点からはやってはいけない事も、別の観点から見て
どうしてもやるべき時、それはやってしまえば良いのです。
大切なのは、
確信犯である事を認識して、どこかでつじつまを合わせることです。
そういうフレキシブルなアプローチで、
『デザインと省エネの両立を設計者自身がやってのけること』、
これが建築の合理性、ひいては経済性を高め、
最終的に自分たちの思い描くデザインが、
クライアントを満足させるというWin-Winを作りだす、
それが私の確信です。

最後になりましたが、
決して断熱マニアの集団ではない、パッシブハウス・ジャパンは、
これからのあるべき省エネ建築について
皆さんと情報交換をしてゆきたいと願っておりますので、
どうぞよろしくお願いします。


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